第二章 「胎動」 第九話 「小鉄のご飯」
「天眼 風をみる」
第二章 胎動
第九話 「小鉄のご飯」
龍気は、いつの間にか、長政の屋敷まで来ていた。
龍気の中には、ひとつの考えがあった。
しかし、それは、お菊とお鈴の両方の意見を聞かねば、
先に進まぬものである・・・。
龍気が、長政の屋敷に着いたのを、一番先に気がついたのは、
やはり小鉄であった。
龍気が屋敷の門までくると、小鉄が走り寄ってきた、
その後でお菊さんも慌てた様子で駆けてくる。
お菊「あ、龍気様でしたか、小鉄が急に走り出したので、
慌ててしまいました。」
龍気「おや、小鉄を見つけてしまいましたか、」
お菊「えぇ~、ずっと寝ていたので、今日は、早めに目が覚めてしまい、
裏庭の掃き掃除をしようと思ったら、小鉄がいましたので、
今、お話し、していました。 龍気様、これを見てくださいな」
そう言うと、お菊は、小魚の頭を小鉄の鼻先にやると、
小鉄は、「パクリ」と口に入れ、美味しそうに食んだ。
龍気「これは、驚いた! 小鉄が、わし以外の者から「餌」を貰い、
食べるとわ・・・。」
お菊「そうなんですよ、小鉄は、龍気様からしか、「ご飯」を食べないと
聞いていましたのですが、何だか、お腹が空いていそうなので、
試しに昨日の残りをあげたら、食べたのですよ、
私、嬉しくって、」
龍気「・・・お菊さん、ちょっと、お話があるのですが、中で、よいですかな?」
お菊「えぇ~、では、お茶でも淹れますので、先に座敷に行ってて、
くださいな」
そう言うと、お菊は勝っ手場に向かった。
龍気「小鉄よ、そなたも、お菊さんが、好きなのじゃな・・・。」
龍気は、そう言うと、小鉄の頭と、喉の辺りを「ワサワサ」と撫でた、
小鉄も嬉しそうに、尻尾で地面をはたいている・・・。
龍気が座敷で待っていると、お菊がお茶を持って入ってきた。
お菊「どうぞ、龍気様」
龍気「うむ、ありがとう」
お菊「お話とは、何ですの?」
龍気「うむ、色々と考えたのじゃが、今回のように、お菊さんが一人で、
長政殿の屋敷に居るのは、危険ではないかと、思ってな・・・、
今回は、長政殿から頂いた犬笛で小鉄を呼び、事なきを得たが、
これが、火急の時、 例えばじゃが、いつぞやの時のように、
「命」の危険にさらされた時には、
小鉄一匹では、守りきれん、少なくとも、後一人は、
ここに居なければならぬ、 そこでじゃ、「お鈴」をここに住まわせ、
一緒に暮らすと言うのは、どうかの?
お鈴は、あれで、中々腕が立つ、なにせ、わしの娘で、
忍者の里でも、厳しい修行をしてきた・・・。
特に、「苦無」(棒手裏剣)と小太刀の腕は、目を見張るものがある。
お鈴が、そなたを守っている間、小鉄を呼べば、すぐにわしが、
駆けつける。
このような算段じゃが、問題は、しっての通り、お鈴は、
傍に居る者の「心」を読んでしまう
ま~、長政殿と同じ技じゃが・・・、
お鈴の場合は、「常」にわかってしまうと言う事じゃ・・・。
その事に、まず、お菊さんが耐えられるかどうか、
また、逆にお鈴がどう思うかじゃ・・・、
この事は、まだ、お鈴には話しておらぬ、
つい先程、考えついたものじゃからの・・・・。
まずは、お菊さんが、どう考えるかじゃが・・・、 どうじゃの?」
お菊「龍気様、・・・・ありがとうございます・・・。
そこまで、私の事を、お考えになってくれたのですね
えぇ~、もちろん、私は、大丈夫です。
お鈴ちゃんとは、この前の長政様の元服の時に、遭っていますし、
一緒に「握り飯」を配ってくれました。
とても、可愛くて、素直で気立ての良い子です。
見ていてわかります。
私が、「握り飯」を配っているのを見て、真っ先に手伝ってくれたのは、
お鈴ちゃんです。
それが、きっかけで、他の忍びの方達も、手伝ってくれました。
私の身を守るとか、別として、お鈴ちゃんとなら、
一緒に住んでみたいと思います。」
龍気「そうか、わかった、では、早速「報せる」ので、暫し、待たれよ」
そう言うと、龍気は、小鉄を呼び、紙に忍者文字で「サラサラ」と
筆を走らせると、小鉄の首輪に付いている、
竹筒にそれを入れ、人差し指を立て、「お鈴・お鈴」・・・、「行け」と、
小鉄に命じた。
小鉄は、脱兎のごとく、お鈴が居る匂いに向かって走りだした。
龍気「先程、お菊さんは、小鉄に「餌」を与えて、おりましたな・・・・。」
お菊「はい! もう、嬉しくって! 小鉄に「ご飯」をあげながら、
この前のお礼をしていたのですよ」
龍気「小鉄が、わし以外の者から、「餌」をもらい、
それを食べるのを見たのは、久しぶりでござった・・・。」
お菊「あら、そうなのですか・・・、」
龍気「うむ、わしも見ていて、うれしゅうござった・・・・。」
お菊は、何故か、それ以上の詮索をしない方が
良いように感じていた・・・・。




