第二章 「胎動」 第二話 「ヨギの呼吸法」
「天眼 風をみる」
第二章 胎動
第二話 「ヨギの呼吸法」
道願「次は、呼吸法なのじゃが、暫し待たれよ。」
道願がそう言うと、奥の座敷に引っ込み
暫くして手桶と手拭いを
二つずつ持って、帰ってきた。
道願「この手桶には、人肌に温めた塩水が入っておる、
お二人とも、こちらに参られよ、」
道願の後に二人が付いて行くと、本堂の外、
庭先に面した縁側である。
道願「一度、手本をお見せするゆえ、見ていて下され、」
そう言うと、その手桶の塩水を「鼻」から吸い込み、
口から吐き出した。
庭先に水の後が残る。
苦しむ様子もなく普通である。
傍ら見ていると、
ただ、口をゆすいでいるだけのように見える。
道願「これは、「鼻」の通りを良くする為に行うものじゃ、
さ~、やってみなされ・・・。」
これには、さすがの二人も、ちょっと、たじろいだ。
普通、鼻に水が入ると、あの独特の感覚になるものである、
それがわかっているだけに、たじろいだのである
意を決して、二人が手桶の塩水を「鼻」からすすると、
案の定、二人とも 「げぼ、げぼ」とむせてしまった
道願「慌てなくともよい。 ゆっくりと鼻からすすると、一度、
鼻の奥上に塩水が行くが、自然と喉の上から、
降りてくるのじゃ、それをただ吐き出すだけでよい、
さ、もう一度じゃな」
二人とも、一度、呼吸を整えてから、覚悟して、
もう一度、鼻から塩水を
吸い込んだ、今度は、多少むせそうになったが、
確かに、喉の奥の上の方から塩水が降りてくる、
それを、庭先に吐き捨てる事が出来た。
始めは、塩水と鼻水が入り混じったような、粘質な水であったのが、
何度か続けるうちに、透明なただの塩水となってきた。
道願「うむ、それぐらいで良い、初めてにしては、上出来じゃ、
後は、前かがみになると、余分な塩水が
鼻からす~っと垂れてくるので、手拭いで拭いてお終いじゃ」
言われた通り、二人が前かがみになると、自然と鼻から
透明な塩水が、ポタポタと垂れてきた。
それを、手拭いで拭くと、 両方の鼻の穴から、鼻の奥にすっ~と、
空気が入ってくるのが、わかる。
「鼻が詰まっている」という意識は、無かった二人ではあるが、
この「行」を行った後の爽快感は、病み付きになりそうである。
道願「どうじゃな、鼻の通りは良くなったかの?」
玄海「これは、感激じゃの、鼻の奥の奥まで、す~~っといたしました」
龍気「確かに違いがある、 簡単な事じゃが、これほどの効果があるとは、
思いもしませんでした」
道願「うむ、水は人肌で、塩の塩梅もあまり入れ過ぎない方がよい。
「ヨギの呼吸」は、鼻から吸うのが基本じゃからの、
「気」を取り込む入り口は、綺麗な方が良いのじゃ、
また、鼻の奥は、頭の中に通じておる、
頭の奥の「ある場所」に鼻から入る、「気」を呼吸として、
触れさせる事で、その「ある場所」の動きを活性させ、
眉間の所にある、「アージュナー・チャクラ」を「開眼」させるのじゃ、
「チャクラの開眼」は、まだまだ先の話じゃが、
覚えておいても損ではない。
では、先程の場所で、同じように座ってもらうかの、
次は、呼吸の仕方じゃ・・・。
「ヨギの呼吸」には、いくつかあるのじゃが、始めに言った通り、
わしの独自の呼吸法を教えよう。
まず、右手の中指と人差し指を額に当てる、そして、
親指で右の鼻を、薬指で左の鼻を押さえるようにする。
両方一度に押さえたのでは、呼吸にならぬからの、まずは、
親指で、右の鼻を抑え、左の鼻で、息を静かに吸い込む、
吸い込んだ時に、「腹」が膨れるような感じじゃ、また、吸い込んだ時に
尻の穴を「きゅと」閉める、「腹」に空気が一杯になったら、
今度は「胸」に入れるようにする、上半身全体が空気で満たされる
感じじゃな、「胸」も一杯までになったら、そこで、呼吸を止め、
出来るだけ、我慢したら、今度は、「口」から、糸を吐くように、
静かにゆっくりと吐き出す、
吐き出す時は、尻の穴を緩めるのじゃ、胸の空気から吐き、
次に腹の空気を吐ききる感じじゃ、何度かそれを繰り返したら、
今度は、薬指で左の鼻を押さえ、 同じような呼吸を繰り返す・・・。
右の鼻と左の鼻で、同じ回数繰り返したら、最後は、
両方の鼻で同じ呼吸を繰り返す・・・。 どうじゃ、できそうかの?」
龍気の方は、ぎこちないが、何とかやれそうであるが、
玄海の方は、どうも、「尻の穴」を閉める間合いが掴めず
にいるようだ。
道願「ま~、慌てる事はない、慣れてくれば、自然と合ってくるものよ。
この呼吸が自然に出来るように成って来たら、次の段階じゃの・・・。
暫くは、この呼吸に慣れる事じゃ・・・。
最初に、言っておくが、この呼吸法をしていると、精力が付いてくる、
ただ、付くだけなら良いのじゃが、問題は、その精を放ってはいかん!
それが、力の源となるからじゃ、 辛い時もあるじゃろうが
そこを、我慢するのが、最初の試練になるであろう・・・・。
ま~、「明」の国では、「房中術」と言って、男女の「まぐあい」で
お互いの「気」を高める方法もあるが、これは、諸刃の剣じゃの・・・。」
道願の修行は、まだまだ、続きそうである。
いつの間にか、夜が明けていた・・・。




