第一章 「旅立ち」 第四十五話 「四人の前世」
「天眼 風をみる」
第一章 旅立ち
第四十五話 四人の前世
道願「過去世において、長男は、玄海殿、次男が龍気殿、三男が長政殿、
そして、末っ子でありながら、長女のお鈴ちゃんである。
田畑を耕し、山で狩りをし、川で魚を獲り、つつましく、
平和に暮らしておった。
もちろん、前世においてのそれぞれの名前は違うが、
その辺は、いいであろう・・。
四人は、仲の良い兄弟での、早くに父、母を亡くした四人は、
玄海殿が親代わりとなって、末っ子のお鈴ちゃんを皆が、
守るようにして可愛がっておったのじゃ、
お鈴ちゃんはの、すぐ上の長政殿が好きでの・・、
いつも、長政殿の後をついて回っておった。
そんな時、村に野武士の集団が襲ってきて、
四人は、ほぼ同時に殺されてしまうのじゃ・・・。
その四人を殺した張本人が、今の長政殿の父、
貞朝と家督を継いだ次男の長棟じゃ!
正確には、その生まれ変わりと言う事じゃが、
過去世において、何らかの「縁」があると、
現世において、「繋がり」を持って、生まれ変わる事がある・・・、
それが、「良い縁」でも「悪い縁」でもの・・・、」
長政「・・・なるほどの・・・、 しかし、道願殿、もし、
過去世でそのような事があったにせよ、わしは、父や兄に
復習しようとは、思わぬが・・、」
道願「うむ、長政殿は、そのつもりであろうが、
長棟は、いかがなものかの・・・。
長政殿、本当は気がついておるのであろう・・、長棟の「殺気」を・・・。」
長政「・・・うむ・・・、 道願殿との間で、隠し事は意味が無いの・・・、
いかにも、この「本堂」で舞を披露していた時、
兄の長棟は、わしに何度も切りかかっておった・・。
それは、嫉妬、妬み、怒り、そして殺意の刃であった・・・。」
道願「過去世において、起きた事は、この現世においても、
繰り返し行われる事が往々にしてあるのじゃ、
それが、先程言うた「宿業」(しゅくごう)じゃ・・・。
今のままでは、この現世でも、同じように
そなたら、四人は、 生まれ変わった、「貞朝」と「長棟」に
再び殺されてしまう・・。
その悪業をここで断ち切り、「浄化」せねばならぬ・・・。
そのための「修行」となるのじゃ・・。
もし、仮に長政殿が、その手で父や兄を殺したとしたら、
その業は、来世で、負の「繋がり」を、
もってしまうじゃろう・・、
それでは、いつまでたっても、同じことの繰り返しとなる。
じゃが、今の所、長棟の殺意は、長政殿だけに向けられている、
明日から旅立つ長政殿にとっては、ある意味、好都合なのかも知れぬ、
もちろん、道中で長棟が放った「刺客」に襲われんとも、
限らんがの・・・、
先程、お鈴ちゃんが言うておった、三回ある危険とは、
その事なのかも知れぬ・・・、
その事、十分気をつけなされ・・・、」
長政「ご心配、痛み入ります・・、 じゃが、先程 道願殿は、
わしにも修行せよと、言っておられたが、
わしは、このまま 旅立てばいいのであるか?」
道願「うむ、長政殿は、そのまま、旅立つのが、一番じゃと、わしは思う、
何故なら、長政殿は、ここでの修行は、まだ早いからじゃ・・・、」
長政「まだ、早いとは、どのような理由からですかな。」
道願「うむ、この四人の中で、一番、素質があるのは、長政殿じゃ、
なにせ、ほとんど、「ヨギの行」(修行)をせずとも、
「風読み」の技を会得しておる、
「風読み」は、あの仏像、「釈迦牟尼仏」(しゃかむにぶつ)の
白毫に位置している六番目の「目」
(アージュナー・チャクラ)の開眼を意味しておる、
まだ、完全に「開眼」している訳ではないが、
その兆しが「風読み」じゃ・・・。
じゃが、長政殿は、まだまだ、「徳」を積んでおらぬ、
そして、その心の奥底には、「阿修羅」のごとく、
激しい「気質」を持ち合わせておる。
「徳」とは、「功徳」・善行じゃ、つまり、良い行いである。
長政殿の理想は確かに高い、これから先、
長政殿の考え方・生き方・信念は、理想の国を造るのに
不可欠なものじゃ・・、
じゃが、人として、まだまだ、若く、実際の「徳」は、
積んでいないのが、現状じゃ・・、
そして、その奥底に潜む「阿修羅の心」を制御出来ておらぬ・・・、
今は、その長政殿の「精神力」で押さえ込んでおるだけに過ぎぬ・・、
「菩薩の心」と「阿修羅の心」・・・、この両方が自然に
「調和」されていなければ、本格的な、「ヨギの行」(修行)は、
かえって長政殿を苦しめ、「力」が強いだけに、
最悪、「死」ぬ事になるやも知れぬ・・・。
自分で自分の精神を喰う事になるのじゃ・・・。
じゃから、これからの「旅」で長政殿が、どれだけの「徳」を積み、
その精神を鍛えるか・・・、 そこにかかっておる・・・。」
長政「なるほど・・・、道願殿は、総てがわかっておられるようじゃ・・・




