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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第一章 「旅立ち」 第三十話 「お菊の葛藤」





「天眼 風をよむ」


 第一章 旅立ち


   第三十話  お菊の葛藤






    お菊は、部屋の襖を開けた。  真っ先に目に飛び込んできたのが、部屋全体を覆っている


蚊帳であった。



   蚊帳の中には、布団が二組並んで敷いてある。 



  長利は、一方の布団の中で、寝息を立てて、熟睡している。



  次に目に付いたのが、木の枝の皮を剥き、丁寧に磨き上げられ、漆を塗り、自然の形を残したままの、



  着物掛けである。



  おそらく、玄海の手作りであろう。 長利の着物も其処に掛けられている。



   お菊は、帯を解き、身につけていた着物を、その着物掛けにかけ、白い



襦袢じゅばん一枚になって、蚊帳の中に素早く入った。



   薄く、黒い蚊帳の中は、心地よい圧迫感と安心感がある。 まるで、この中だけが、


別の空間の中に居るように感じられた。



  お菊は、長利の顔をのぞいた。  やっぱり、幼さが残る顔である。



  


お菊(元服するといっても、まだ十六ですものね・・・、 呑み慣れないお酒で、


    よく眠っているわ・・・。


    私が、もっと早く旦那と一緒になっていたら、長利様ぐらいの子が居ても


    おかしくないわね・・・。


     あ~ぁ、子供が居たら、もっと、別な人生になっていたかも・・・。


    それにしても、よく眠っているわ・・、 完全に油断している寝顔ね・・。)



    確かに、長利は油断していた。 呑み慣れない酒を多めに呑み、


    いつもの冴えが無くなっていた。


 正覚寺で寝る時は、いつもこの部屋で寝ているのだが、 敷かれている二組の布団も、


いつものように龍気が寝るのだろうと、半ば、習慣となっていた感覚が先にでて、


お菊の存在を忘れ、ふんどし一枚になり、寝入ってしまったのである。


    そこで、長利は、寝返りをうった。 薄い布団を抱くようにして、お菊に背を


    向けるように動いたのだ。



お菊(あら! 大変! 長利様は、褌、一丁なのね、)


   広い肩幅と引き締まった腰まわり、そして、中央によれた褌が、くぼみのある尻を


   あらわにさせている。


    お菊は、見てはいけないと思いつつも、その引き締まった体から、目が離せなくなった。


    お菊の鼓動は、少しずつ早くなってきた。 そして、心の中に押さえ込んでいた、


  ある感情が少しずつ表に出てくるのを感じていた・・・。



お菊、(いけないわ、こんな感情を、長利様に抱いては・・・。)



    そう、思いつつも、鼓動は、確実に早くなる・・・。 


    その時、ふいに、長利がまた寝返りをうった。


    今度は、仰向けになったのである。 長利の前の膨らみが上を向いた形になる。


    しかも、長利の男根は、酒のせいか、若さのせいか、おそらく両方であろう、


    見事に隆起していたのである。



お菊(す、すごい! 大きい!)



    お菊は、前の亭主の物しか知らなかった。「男の物」の基準が前の亭主なのである。


   長利の男根は、薄い褌越しに見ても、お菊の基準を覆す物であった。



お菊(え! 嘘でしょう!  こんなに大きいなんて・・・、)



   もはや、お菊の視線は、その一点に固定されてしまっている、と、同時に、


  自分の体の中心から、湧き上がる女のさがが沸々と湧き上がる・・・。



お菊(・・・・、い、今なら、簡単に長利様とひとつになれる・・・。 


この薄い布切れを横にずらして、上に乗るだけで・・。


    で、でも、これは、明らかに、私の欲望だけを満たそうとする行為・・・、


   長利様の意思はどこにもないわ・・、 それでも、いいの?  )


    お菊は、心の中で、自問自答を繰り返していた。 


お菊の体は、自然な反応を示している。でも心は、長利の将来の事を考えている。



お菊(恐らく、長利様は、「女」をしらないでしょうね・・、もし、こんな形で、こんな私が、


初めての女となれば、きっと、お怒りになるわ・・・、いえ、長利様は、きっと、


こんな私を軽蔑するでしょうね・・・、


  ダメダメ!  長利様には、 きっと、お似合いの女性が現れるはず、


私が「手」をつけてしまうなんて・・・、でも、もし、長利様が、それでもいいと・・・、


「私」が初めての女でもいいと、おっしゃってくれたら・・・、 


   私は・・、いえ、それは、私の身勝手だわ、で、でも・・・、)


    お菊は、狂おしい程の間、体と心の葛藤を繰り返し、結局、長利の「手」を握りながら、


    自らの心と体を慰めながら、小さな達成感と大きな後悔の中、眠りについた。



    

     


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