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「天眼 風をみる」   作者: 魔法使い
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第一章 「旅立ち」 第二十七話 「正覚寺にて・・・過去帳」



「天眼 風をみる」


 第一章 旅立ち


  第二十七話 正覚寺にて・・過去帳



   長利と龍気が話をしている間に、玄海が奥から、何やら台帳を持ってきた。



玄海「長利よ、これを見てくれぬか・・、」



   長利が、それを受け取り、中身を見ると、その中には、


大日向村おびなたむら佐吉サキチ・・その子  ハル・・・」



 などと、この寺に埋葬されている「仏さん」の名前が書かれている。



長利「これは、過去帳じゃな・・、」


玄海「うむ、いかにも・・、わしが何故、「金」も貰わずに、「仏さん」を裏の墓地に


埋めるのかは、話しておらなんだと思うが、 正直に申せば、初めは、


自分の身内を探す為じゃった。  


    わが子を捨てるぐらいじゃ、生活に余裕などあるまい。  


もし、そんな家で「仏さん」が出た場合、葬式の金など、あるはずもないであろう・・。


    そうかと言って、その辺に投げ埋める事も出来まい・・、 


そこで、「この寺に「仏さん」を持ってくれば、金は払わず、丁寧に埋葬してくれる」 


  そんな噂を聞けば、金の無い村人は、こぞってここに、「仏さん」を持って来る


と考えたのじゃ・・・。   


    わしは、その時に、必ずどこの村の何と言う名前か、もしくは、


「通り名」を聞くようにしていた。 


    それが、この「過去帳」じゃ・・・。   


    いずれ、わしとよく似た「男」(玄海の兄弟の意味)が、その「おっと~」か


「おっか~」の仏さんを持って来るかも知れん・・・。


   そんな時が来て、わしは初めて、「父と母」に逢えるのかも知れんの・・・。 


    いや、急に悪かったな、お主が旅立つ前に、どうしても、この事を言って


おきたかったものでな・・。」


長利「そうであったか・・・、 」


玄海「じゃがな、最近は、この過去帳を書くことが、わしの、仕事であるように、感じておる。  


    「人」である以上、必ず、父、母が居るはずじゃ、「木の股」から生まれる者


などおらぬからの・・、


    自分達の過去にどのような、「ご先祖様」が居たのか、それを知り、自分の「子」に


それを伝える事、


    これは、大切なことじゃ、 「今」を生きていると言う事は、


その「父・母・またその上の父・母」と、面々と受け継がれている血脈、


絆じゃと思う。  或いは、何か「霊的」な「想い」かも知れん。



    今のわしには、上手く、言う事が出来んが、その受け継がれている証が


この「過去帳」であり、これを後世に残す役目が、わしの仕事であり、


生きがいになってきておる・・・。


長利「うむ、よく判るぞ、その気持ち・・、 そうじゃ、玄海。 


 今のうちに、わしの「名」も空いている場所に書いておいてくれぬか、 


 そして、これから、わしの子孫がどう生きたか、何らかの「形」で


    残しておきたい・・。 頼めるか」


玄海「もちろんじゃ、 お主の「名」は、特別な「過去帳」を造るつもりじゃ、 


じゃが、「名」は「小笠原 長利」で良いのか? 


 「元服」するとなれば、本来は「名」も変えるのが、決まりじゃぞ・・・。」


長利「そうじゃな・・・、前々から考えておったが、わしは、この村、


大日向村おびなたむらが好きじゃ、


    周りを山に囲まれておるが、夕刻になれば、夕日がその山間の色を


刻々と変えていく・・、特に秋の紅葉の季節にでもなれば、よりいっそう


「艶やか」(あでやか)になる。


   天気の良い夜などは、「星」が手に届きそうじゃ。


    朝になれば、霧が山あいから流れ込んでくる、そして、「山」は様々な恵みを


我らに与えてくれる。


    辛いことも、悲しいことも、「山」や「夕日」や「星」を見ているだけで、癒してくれる・・。


   わしは、この地、大日向村おびなたむらからその名を借り、


    「名」は、「大日方 長政」(おびなた ながまさ)と、いたそう。 


    明日から、わしの「名」は「大日方 長政」じゃ。



玄海「おお! この地、この村の「名」をそなたの名前とするのじゃな、 わかった。


   お主の「過去帳」は、「大日方 長政」を「祖」とし、一番初めに書くとしよう。   



龍気「大日方 長政」(おびなた ながまさ)でございますな、 よい「名」であります。


 「大日方」は「大日向村」から・・、 「長」は、小笠原家から受け継いだ「名」


 「政」は「祭りごと」(政治とかの意味)  


   まさしく、今の「お館様」に、ぴったりのお名前かと存じます。


お菊「長政ながまさと言う名は、そんな意味を含んでいるのですね、」


長利「うむ、いかにも龍気の言う通りじゃ、今宵は、「小笠原 長利」としての最後の夜じゃ、


    明日からは、「大日方 長政」として、振舞うゆえ、よろしくたのむ。」


龍気「は! かしこまりましてございます。」


お菊「はい、承知いたしました。」


玄海「うむ、相わかった・・・。」


長利「さて、だいぶ、夜も更けてきた、明日の事もあるので、わしは、この辺で先に寝かせてもらうぞ、


    皆は、まだまだ飲み足らんであろうから、ご随意にしてよいのでな、


    玄海、いつもの部屋でよいかの?」


玄海「おう!、布団も用意してあるので、ゆっくり休んでくれ。」


長利「うむ、では、お先に失礼する・・・。」



   そう言うと、長利はいつも寝ている部屋に引き下がっていった・・・。


    

   現在も、長野県 小川村などを中心に、「大日方」(おびなた)の姓を


   名のる家が多数存在している。


  全国に散らばって居る、「大日方」(おびなた)姓は、この「大日方 長政」を


   その「祖」とし、その子孫か、ゆかりのある者達である。

   



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