第一章 「旅立ち」 第二十六話 「玄海 心の旅立ち」
「天眼 風をみる」 第一章 旅立ち
第二十六話 玄海 心の旅立ち
玄海「さすが、龍気じゃ・・・、わしが悩んでいる時にその答えをはっきりと
示してくれる・・。 龍気よ、判っておったのであろう、わしが「揺れて」
おったのを・・・、長い付き合いじゃからな・・・。」
龍気「うむ、ここ何日か、お主の態度が変わっておったからの・・・。」
玄海「やはり、そうか・・、 長利が「旅立つ」と聞いてからの、あやつも頑張って
おるの~と、思った時に、では「わし」は、今、何をしておるのじゃ、と考えたのじゃ、
毎日のように「酒」をあおり、自堕落な生活をして、心を誤魔化してきたが、
「わし」にも「理想」がある。 長利のように壮大なものでは無いが、少しでも、
民・百姓を助けたいと思っておる。
先程も言ったように、わしは、自分の「欲」の事しか、考えられなんだ・・、
結局、自分の心に負けておったのじゃな・・、
じゃが、「今」、決意したぞ! 龍気の言うとおり、わしに出来る事をするぞ!
まずは、「酒」を止める! 「女遊び」もじゃ! 体力だけはまだまだ、
自信があるからの、畑を耕し、出来るだけ、百姓どもに分け与えよう。
決めたぞ! 今日が「呑み納め」じゃ!
それから、学問も学びたい、わしは、どうやって生きていかねばならぬのか、
その「生き方」を探したい。 龍気よ手伝ってくれるか?」
龍気「もちろんじゃ、玄海よ、よく言った。 今日は、玄海の新たな心の旅立ちでもあるの、
そうでございますな、お館様・・・。」
長利「気づいておったか、龍気よ」
そう言いながら、長利が襖を開けて入ってきた。
長利「何やら、深刻そうな話をしておったので、入る機会を逃しての、
悪いとはおもぅたが、襖の外で聞いておった。
玄海よ、いくつになっても人は成長するものじゃと思う、じゃが、歳を重ねると、
なかなか、自分の考えを変える事は難しい。
今まで生きてきた経験と意地があるからの、じゃが、変わる事は出来るはずじゃ、
お主が変わろうと思った事は「尊い」事と、わしは思うぞ、
さて、今日は、二人の新たな旅立ちの祝いじゃ、
玄海よ、注いでくれぬかな、わしも注ごうぞ、「呑み納め」じゃからの・・・、ははははは、」
玄海「うむ、ある意味、ここまで見守ってくれた、「友」に改めて「乾杯」じゃ! 礼をいうぞ・・・。」
お菊「何だか、男の人って、いいですね・・・、 そうだ! 玄海様、私に何かお手伝い出来る事
があったら、言ってくださいね。 私に出来る事は、何でもいたしますから」
玄海「それは、ありがたいがお菊殿が、周りにいたのでは、気が散っていかんな~、ははははは、」
長利「そうじゃな、修行の妨げになるやもしれんぞ、はははは、」
先程までの、重い雰囲気が一変して、和やかな宴の場に変わった、
長利の旅立ちの影響が、玄海の心の成長を促す事になろうとは、長利自身も
驚く反面、とても、嬉しいと感じていた。
長利「そうじゃ、もうひとつ龍気に聞いておきたい事があったのじゃが、」
龍気「何でございましょう、お館様、」
長利「うむ、先日、話しておった、人足集めの事じゃが、どうする気じゃ」
龍気「その事なれば、すでに手を打っております。 お館様に全国に散らばっている
「草忍」を呼び戻せと、言われた際、 草忍達に「書状」を書きました、
その中で、信濃で良い働き口があるとアチコチで「噂」して帰って来いと
指示しております。 「口伝の術」と申しまして、人の噂の早さは、想像以上で
ございますからな」
長利「なるほど、「口伝の術」か、そこでじゃな、 集まって来た者を、選別して欲しいのじゃ、
龍気「選別でございますか? 」
長利「そうじゃ、 人の「力」、「能力」には、得て不得手がある。 頭の切れる者も居れば、
腕力の強い者もおる。 もちろん両方を持ち合わせておる者もいよう。
じゃが、もっとも重要なのは「その者の心根」じゃ、たとえ両方を持ち合わせていない者でも
その「心根」がよければ、考えもよらぬ新たな「力」を発揮するやも知れぬ、
一番、厄介な者は、両方を持ち合わせておるが、その「心根」の悪いものじゃ、
「力」もあり、「頭」も切れる者で、「心根」の悪い者は、必ず、自分が上に立とうとする
そうなれば、人の「和」が崩れる、「和」が崩れれば、やらねばならぬ仕事に悪い影響がでる。
龍気「なるほど、 しかし、お館様、体つきや、話の内容で、「力」と「頭」は、判りますが、
「心根」となると、拙者では、判りかねます。 「心根」は、ある程度の付き合いを経て
わかってくるものです。
長利「うむ、そこで働いてもらいたいのが、「忍びの里」の更に奥に住んでいる、
あの「特別な者達」じゃ」
龍気「あの「人の心を読み取る事が出来る力」を持った者達ですか!」
長利「いかにも、やり方は、こうじゃ、まず、わが屋敷を使えばよいが、屋敷の一番奥の部屋に、
あの「特別な者達」を潜ませ、襖を閉め、隣の部屋で、その者の「心根」を探るのじゃ、
龍気は、それとなく、色々な質問をせよ、それに関して、 龍気が聞いた答えと、
襖の後ろに居る者が聞いた心の声が違っていれば、要注意じゃ。
全国から来る者の中には、色んな者がおる。
中には、他所から来る「忍び」も居るかも知れん。 そうなれば、我が領地で
行っている「技」の総てが、 他の国に洩れる事となる、それでは、意味が無い。
「技」は秘密であるから「力」がある。 人足の中に、そのような者が
いては、困るのじゃ。
それに、わしは、あの者達にも、「生きる希望」を与えたいのじゃ、
「人の考え」が、無造作に自分の心に入ってくる苦しみは、よくわかる。
わしにも、同じような経験があるからの・・・、 じゃが、今のまま、人里離れた場所で
ひっそりと暮らしているのが良いわけがない!
自分の「能力」が世の中の役に立つと、思ってくれれば、それは、
「生きる希望」となる。
そして、その中には、普通の暮らしが出来る者も出てくるかもしれぬ、
どうであろう、出来そうな者が居るであろうか」
龍気「そうでございますな、確実に一人は、おります。 我が娘にてございます・・・。」
長利「そうであったな・・、そなたの娘も、あの力を持っておったのじゃな・・・、」
龍気「わかりました、明日にでも、「心の村」(心を読む人たちの村)に行ってまいりましょう、
皆にお館様のお気持ちを話し聞いてまいります」
長利「うむ、よろしく、たのむ。 じゃが、決して無理にとは言わん、そう、伝えてくれ・・・。」
龍気「は! かしこまりました」
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