最終決戦
サエキがパトカーで連れて行かれたのはワカマツグループの大きな研究施設だった。アミダーZとダキニーtenがたくさんの整備員から揃ってメンテナンスを受けている。
サエキ「ワカマツ、ヌキナさんも?」
そこにはワカマツ、ヌキナと陰陽師姿の男達が揃っていた。その中には陰陽Sの姿もあった。
陰陽S「サエキ、アミダーZに乗って八柄の剣を召喚しろ。」
サエキ「え?今から?」
ワカマツ「クリカラブレイドの研究に使うんだってさ。」
サエキは訳もよくわからずアミダーZに乗せられた。
続いてワカマツとヌキナも乗り込んできた。
サエキ「臨兵闘者皆陣烈在前。八柄の剣!」
アミダーZの前に巨人刀、八柄の剣が現れる。ワカマツの操作でアミダーZが八柄の剣を握る。
ワカマツ「よし握った。」
ヌキナ「そーっと、そーっと。」
二人の操作で八柄の剣が地面に置かれた。
ワカマツ「よし!これでいい!」
サエキ「こんなことしてどうすんだよ?」
固定された八柄の剣に陰陽師達や研究員が群がった。
ヌキナ「次、次!」
ワカマツとヌキナは操作が終わるとすぐにアミダーZから降りた。
八柄の剣の横にフドーソンで使っていたクリカラソードらしきものが運ばれてきた。
サエキ『赤い唐草の紋様、まるでジョーモンブレイドだ。』
コックピットハッチから中を覗くワカマツがサエキに叫ぶ。
ワカマツ「何、ボーッとしてんだ!俺等に時間はねーぞ!」
コックピットの外から小さくヌキナの声もしてきた。
ヌキナ「早くしないと、助けられなくなっちゃう!」
サエキはその言葉にシャンとして、急いでコックピットから降りた。
サエキ「助ける!?誰を?!」
研究施設の外にまたせてある車に足早に歩くワカマツ達にサエキは並走する。
ワカマツ「機動隊員達だよ!」
ヌキナ「今ならまだ間に合うかもって陰陽師の人たちが言ってるの!」
試験前でテレビで例の中継を見てなかったサエキの頭にその画像の圧縮データと陰陽Sの声がする。
サエキの脳裏に機動隊員達が異次元に吸い込まれる場面やヴァスキの顔が浮かぶ。
陰陽S「異次元に飛ばされて、そこの飯をしばらく食べ続けると元の世界に戻れなくなる。このタイミングしかない。彼等を救出できるのはサエキ、天の沼矛を使える、お前だけだ。」
三人が車に乗り込む、運転手はフシミだった。
フシミ「悪いけど飛ばすわよ!ひよっこ達!」
ワカマツ「俺たちもう、ひよっこじゃありませんよ!」
ヌキナ「他力本願寺前までお願いしまぁす!」
サエキ「タクシーかよ……。」
フシミのかるセダンは急発進して研究施設を後にした。
他力本願寺では逃げようとしていたケンドーンをヴァスキが見つけて揉めていた。
ケンドーン「離せ、ヴァスキ!警察の次は奴らが来る!俺はナンマイダーなんかの相手をしたくない!」
ヴァスキ「逃げるなよ!2人で戦えば、何とかなるって!?」
ケンドーン「お前は奴らの恐ろしさを知らないんだ!たった3人で巨大な教団だったソッカーが潰しやがったんだぞ!?他力本願寺もおしまいだ!」
ヴァスキは俯いて、ケンドーンを離した。
ケンドーン「俺は死ぬのはごめんだ。どこかへ隠れないと……」
ヴァスキ「そうかよ、せっかく俺の居場所ができたと思ったのに、一緒に守ってくれないのかよ。」
ケンドーン「お前も早く、逃げたほうがいいぞ。」
ガオン!
ケンドーンの姿が空間ごと削り取られたようになくなった。
ヴァスキ「よかったな、ケンドーン。そこなら誰にも見つからない。」
ヴァスキは本尊の前で瞑想を始めた。
他力本願寺前に乱暴にフシミの運転する車が止まり、中からナンマイダー達が飛び出して、広いその敷地に入った。
陰陽S「止まれ。サエキ、ここで天の沼矛を出すんだ。」
サエキの頭にどこからともなく、陰陽Sの言葉が響いた。
サエキ「え?」『一体どこから?』
拝殿へと続く参道で急にサエキの足が止まる。
ワカマツ「どうしたんだよ?!」
サエキ「いや、ここでいいって。」
ヌキナ「そうか!機動隊員達が消えたのここだもんね!」
サエキはいつもの通り天の沼矛を呼び出す。
サエキ「キョーコ、手伝って。」
フシミ「ええ。」
ワカマツ&ヌキナ『名前読み?!』
ワカマツとヌキナのプラトニックな関係を余裕で飛び越えてたサエキとフシミだった。
サエキ&フシミ「「天地開闢!!時空割断斬り!!」」
二人が虚空を斬ると異次元へのポータルが開いた。
そこに存在しててはいけないであろう、サイケデリックな空間が揺らめく。
陰陽S「よし!座標は合ってる。コチラで扉を固定した。早く機動隊員達を助け出すんだ!」
サエキ『わかりました。』「行くぞみんな!機動隊員達が待ってる!」
サエキに続いてフシミも異次元ポータルに入っていった。
ヌキナ「ひぇー、あんなか、はいるの?」
ワカマツ「俺たちも行くぞ!」
ワカマツはヌキナの手を取ってポータルに飛び込んだ。
サイケデリックな色の中を進むと途方に暮れて、やつれた隊員たちがまとまっていた。これからどうするか思案していた最中だったようだ。そこへ、ナンマイダーが駆けつけてきたのを見て隊員たちは全員救助が来たと喜んだ。
機動隊員A「あんたら、どっから!?」
ワカマツ「外からだ!助けに来たぞ!」
サエキ「四天王!」サエキが呼ぶと、四天王達が勢いよくサエキの体から外に飛び出した。機動隊員達はその様子に腰を抜かした。
持国天「任された!」
増長天「みんな急げ!」
広目天が術で状況を機動隊員達の頭に吹き込んだ。
機動隊B「アイツがソッカーの怪人!」
機動隊員C「とにかく、今は早くここから出よう!」
多聞天「俺たちが誘導して皆を外に連れ出す!」
サエキ「頼んだ!」
異次元の外へ機動隊員達が走っていくのを見ていた4人の背後から、黒い何かが近づいてきた。
ヌキナ「!ぎゃー!でたー!?」
フシミ「餓鬼?!」
黒い瘴気を纏った、やせ細り、腹の出た、鬼。くぼんだその目はギラギラしていたソレはナンマイダー達に助けを求めた。
餓鬼(?)「俺たちももとは人間だったんだ。頼む!助けてくれ!」
陰陽S「……サエキ、やめとけ。」
同情していたサエキに陰陽Sが待ったをかけた。
サエキ『どうして?!』
陰陽S「奴らはもうここの住人だ、外に出たら体は崩れ、そして、苦しみながら死ぬ。」
サエキ「……残念だが無理だ。」
ケンドーン「ソイツはひどいな!」
肩を落とす餓鬼達の後ろからケンドーンが姿を現した。
ケンドーン「俺はまだ、大丈夫だろ?自首するから連れて行ってくれ。」
そういい終わる前に餓鬼達が一斉に外へと続くトビラに走っていった。
サエキの頭にフシミの声が響く。
フシミ『騙されちゃダメよ、リョータ?ソイツは後ろ手でナイフを持ってる。殺気がすごいわ。』
ヌキナもピンときて指摘する。
ヌキナ「その手、後ろ手に持ってるのは何?!」
ワカマツはヌキナをかばいケンドーンから距離をとった。
ケンドーン「ち、感のいいガキどもだ。」
4人はケンドーンをその場において外へと逃げた。
ヌキナ「アイツ、追いかけてこないわよ?!」
ワカマツ「とにかく、早く外へ!」
去っていくナンマイダーを見ながらケンドーンはニヤニヤしていた。
ケンドーン『いや、これでいい。俺はこの次元の王になるのだ!』
ナンマイダー達が外に出るとそこには四天王達に守られた機動隊員達と足元にのたうち回るように少しづつ体が灰になっていく餓鬼達の姿があった。
陰陽S「よし!とじろ!」
異次元ポータルは閉じた。中からはケンドーンの高らかな笑い声が響いていた。