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1,[一般人・K,O]

「虎達朝よぉ、早く起きないと遅刻するわよ」


 階下から聞こえる母親の自分を呼ぶ声という目覚ましにより、飛び起きた。


 何か不思議な夢を見ていた気がする。


「どんな夢だったっけ」


 思い出そうとしても思い出せない。

 そんなモヤっとした気持ちを残しながら、部屋を出て洗面所で顔を洗っていると、ふと何かに背中を叩かれた。


「痛っ!? 何ッ!?」


驚いて振り返ると、

一歳下の妹の『音間恋虎一(おとまこいこい)』の仕業だった。


「どうしたの、兄さん。 朝から変な顔して。 怖い夢でもみちゃったとかぁ?」


と大体の事を言いあてられてしまった。

 話そうか迷ったが、あてられたのが少し悔しかったのと、自分でもよくわかっていない不明瞭な情報を与えて不安にさせたくなかったので、あまり気は進まないがあの方法でいこう。


「誰かさんに、叩かれたからだよ」


「何その言い方!! 心配して損した!!」


 少し強めに言い返す、コレが今できる選択肢な気がして実行してみたはいいが、当然怒らせてしまった。怒った顔も可愛いな我が妹は。今日も美人で大変よろしい。うんうん。


 その大きな声を聞きつけたのか、母親の『音間琴子(おとまことこ)』がやってきた。


「あらあらぁ、朝から喧嘩ぁ? 兄妹で仲良しさんねぇ。 早く食べないと朝ごはん冷めちゃうわよぉ」


 そう言われため、喧嘩(?)をやめ急いで朝食を済ませ、学校へ行く用意をする。


「行ってきます」


と母へ向かって声をかけいざ家から出ようとすると、足元から"いってらっしゃい"と返すかのように


「にゃー」


という鳴き声がした。


 鳴き声の主は、うちで飼ってる猫の『虎丸(とらまる)』だ。


 俺がまだ幼かった頃に父が死にその数日後虎丸はうちへやって来た。母が寂しさを紛らわせるために飼い始めたのだと思っている。

 因みに俺は猫が嫌いだ、いや好きだった。この時までは。あまり憶えてはいないが、父がいた場所を虎丸が奪ってしまった感じがして、申し訳ないが猫を好きでいるのが嫌になった。


 だが今はそんな事はどうでもいい学校に行かなければ。妹とは一緒の高校で、今日からは新学期だ。俺は2年になる。そして妹は一個下の、1年になるというわけだ。


 学校に着いてすぐに新クラスを確認し、妹とは別れ自分のクラスへと向かう。

 教室につき、自分の席に座ったその時、


「よぉ! 虎達! 2年になったばかりの今日も、朝から焼き魚食べてきたのか?きたんだろっ!!」


と、朝から大声で、焼き魚好きをいじってくるのは、中学2年からの親友の『金田太郎(かねだたろう)』だ。


 あだ名は"金太郎"。何故そう呼ばれるようになったかは面倒なので割愛させていただこう。


「別にいいだろ、好きなんだからさぁ。 それに『"朝は焼き魚"コレこそ究極の朝ご飯なり』と古来より決まっているだからなッ!!」


「そうなのッ!?」


「そうよ。 人の好きなものをいじるのはよくないし、究極の朝ご飯を見つけ出した先人たちにも失礼よ、金田くん」


と横から話に入ってきたのは、俺の幼稚園からの幼馴染の『武林姫燕乃(たけばやしひめの)』である。


 因みに一般的にいうところの、美少女だ。


 解くと腰まである綺麗な黒髪と、その名前であるが故に、あだ名かはわからんが同級生だけじゃなく先輩たちからも『かぐや姫』と呼ばれている。あだ名かはわからんが。

 だが、彼女はそう呼ばれることにあまり納得はしていない様子だ。


「そろそろ、先生がくる時間ね、また後でね」


そう言われ、俺は「ん」と返事をする。


 俺達の通う[私立・栞崎(しおりさき)高校]は、日本いや世界で活躍する小説家や漫画家、脚本家を数多く排出する、文学界では超有名な学校だ。

 家から近かったため、意識せず選び入学したが、まさかそんな名門校だったとは思わなかった。知らずに入った自分が恥ずかしい。

 因みに姫乃は入試1位だったらしい。金太郎に関しては何故この学校に通えているのかわからない程の学力であったはずなのだが、何故入れたのだろう。



ーー放課後ーー


「はあー終わったぁ、めっちゃ疲れたぁ早く帰ろうぜ、虎達」


「ん、ってもう疲れてるのか? 今日は始業式と少し授業しただけだぞ。 しかも午前で終わりだし」


と金太郎に俺はツッコんだ。


「いくら午前で終わるつったって、授業はしんどいんだよ!」


「虎達、早く帰りましょう」


金太郎と話しをしていると姫乃に言われた。


「そーだな、バカは置いといて帰ろう」


言ってやったぞ。普段あまりこういうことは言わないが、朝の焼き魚のおかえしだ。


「・・・、え!? バカっておれぇ!?」


 教室に金太郎の声が響いたのを聞いてから俺達は仲良く3人で帰った。その帰り道、金太郎が妙な話をしてきた。


「なぁ、こんな噂知ってるか?」


「どんな噂?」


姫燕乃が返すと、金太郎は続けた。


「うちの学校に花子さんが出るって噂だよ!」


「なんだよそれ、俺たちもう高2なんだぞ」


「そうよ私たちもうこどもじゃないのよ。それに、花子さんって小学校じゃないの?」


「うるせぇな!俺もわかってんだよ!」


 姫燕乃と俺の二人からの強めの口撃に、金太郎が大声を上げる。


「でもな、そんな噂が出るっつーことはよ、その元になる出来事があったってことなんだよ。 去年同じクラスだったとある男子に聞いたんだがな。 そいつ、春休みに部活の合宿で学校に泊まってた時のことらしいんだが、なかなか夜寝付けなくてトイレに行ったそうだ。 そしたらそこで女の笑い声がしたらしいんだ、男子トイレでだぜ!?な?気になってくるだろう。 どうよ今夜、忍び込んで確かめてみようぜ!」


「確かに、おもしろそうだな・・・・・・その話、のった」


「はぁ、そうなると思った」


 そんな子供じみた誘いに俺はまんまと応じてしまった。その様子を見ていた姫燕乃からは呆れられてしまった。

 でも仕方ないではないか、好奇心には勝てなかったのだから。


「でも、姫燕乃も気になるんだろう?」


「まぁ、気にならないっていったら嘘になっちゃう」


「だろ?」


 姫燕乃の返答に"やはりな"というように俺はそう言う。

 姫燕乃は秀才で真面目ちゃんだが、決してお堅いというわけではない。寧ろこういう時はノリがいい。


「だから私もついていくわ。 2人の行動もしっかり監視しないとだしね。 特に、金田くん」


と言いながら姫燕乃は金太郎をみた。その視線に金太郎がたじろぐ。

 そうしたところで、


「今日の夜9時裏門に集合な!」


「おう、了解」


「えぇ、わかったわ」


そう約束をし、家へと帰った。


 昼食を済ませた俺は、約束の時間までまだ余裕があったため、ベッドでゴロゴロしていると、食後ということもあるのか眠ってしまった。そして不思議な夢をみた。


『やぁ、こんにちは。覚えているか?』


「・・・」


『いや、すまない覚えているわけないか。 まぁ、そんなことは今はおいとくとするか。 いいかいよく聞くんだ、今夜学校にいっても絶……に……の扉を…………るなよ。 クソっ!細かい事を伝える時間がない! いいか絶対だ!!」


夢はそこで終わった。


……つ


ーーーーー誰かの呼ぶ声がする


…たつ


ーーーその声を頼りに暗闇の中を進み、目覚めへと向かう


「虎達ッ!!」


「うわぁっ!! あれ、姫燕乃? どうしたんだ?」


「もうそろそろで時間だから電話したのに出ないから、きてみたの。 そしたらやっぱり寝てた」


怒られた。

姫燕乃に「ごめん」と謝りながら急いで出かける用意をする。


「あの夢はなんだったんだろ。何かを開けるなとかいってた気が…」


「どうしたの? 大丈夫? 起こしたのダメだった?」


「い、いやなんでもない!」


「そう…ならいいけど…」


ぶつぶつ一人で夢についてのことを呟いていると姫燕乃にいらない気遣いと、無駄な心配をさせてしまった。そのうえ怪しさ全開の誤魔化し方をしてしまった。恐らくだが誤魔化しきれていないだろう。


「そ、そんなことよりそろそろ時間だろ、早く行こう」


「そうね、少し急ぎましょう」


 急いで準備をし、俺たちは学校に向かった。

 もう少しで裏門に着きそうな時、こちらに手を振る人影が見えた。


「おーい! 遅いぞー! お前らー!」


そう大声で叫ぶのは彼、金太郎である。


「しーっ!静かにぃ。 バレたら大変なんだから!」

と姫燕乃に怒られている。


「そうだぞバレたら、こんなおもしろそうなこと調べられなくなるだろ」


「だってぇ、楽しみではやく来ちまって一人で寂しかったんだよぉ」


「そんなことはさておき、はやく行こう」


と両手の人差し指同士をくっつけて寂しさをアピールする金太郎を横目に、俺は急かす。


「そうそう、さておいてね………てっ!? さておくのッ!?」


という金太郎のツッコミを聴き終えた俺たちは、夜の学校へと足を踏み入れた。


 そんな三人とは離れた別の場所にひとつの人影が月明かりに照らされていた。


「此処か、今回の現場は。 もう少しいい仕事が欲しいんだがな」


影の主がそう呟いたのを誰も聞いてはいなかった。


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