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よし、先回りしよう。

なし崩し的に次の国を目指すことになるようです。

「うむ、うまいな。お前達もそう思わないか?なぁ?」

「…私たちはお芋だけなので。」

「芋だってうまいじゃないか。俺は肉パンだがな!わっはっは!」

「クルもお芋欲しい!」

「おおぉ、お主も芋が欲しいのか?芋はいいぞぉー。」

「…ねぇ楽、これ面白い?」


俺達は現在どこでもYEAHで暇つぶし中だ。

ドアスコープから見える音のない世界にアドリブでアテレコして遊んでいる。


黒男達が休憩に入ったので亀ごと拉致られた俺達だったけど、動きがなく暇を持て余してのこの状態だ。ドアスコープから見える景色は無表情の兵士達の整然たる行列。休憩だと言うのに教科書に載せたいくらい美しく並んでいる。出番前のよろこび組なのかな?休憩所に戻った黒男はすみっこの荷物置きみたいな台に亀を置き、自分は中央のテーブルへ向かうと部下に用意させた食事を取りはじめる。陣地の前には前に述べたようなよろk…兵士達が無言で何か食べている。芋を茹でたものかな?白っぽい塊を黙々と口に運んでいる。

黒男は兵士達とは別メニューで汁物とパンに肉を挟んだサンドイッチみたいなもの。大量の書類を確認しながら流れ作業のように食べているのでおいしいかどうかは窺い知れない。亀が置かれた台の隣にはもう一つテーブルが置かれていて、そこでは商人達がご飯を食べている。こちらは地図を確認しながら何やら話し込んでいるようだ。音が聞こえないから見た目で判断するしかないが、特に変わったことは起こっていない。


「外の音が聞こえたらいいんだけどなぁ。」

「お芋は?」


クルは兵士達が食べている芋を見て芋の口になってしまったようだ。立派に食いしん坊へと育ってきている。


「芋かぁ。じゃめちゃくちゃ簡単だけどうまい、スタックポテトでも作るか!」


暇だけど凝った料理を作る気分には慣れなかったので簡単にクルのお芋作り。


【スタックポテト】


材料

・さつまいも

・タイム(好みのハーブでOK)

・バター

・塩

・胡椒


まずはサツマイモを皮ごと薄くスライス。水に晒したのちしっかり水気を切ったらバター、塩、胡椒を全体にまぶし8〜9枚重ねていく。あとは180℃に予熱したオーブンで50分焼くだけ。途中追いバターをするとよい。焼けたらタイムを振りかけて完成だ。


「美しいミルフィーユね。」

「バターがたまらないな!メープルシロップかけてもうまそうだな。楽、メープルプリーズだぜぇ!」


存在を忘れつつあった精霊コンビがいつの間にかダイニングテーブルの中央に鎮座している。どこでもYEAHは異空間らしいのだが相変わらずこのコンビには関係ないようだ。


「なんか、えらい久しぶりですねガルゥボーイ。はい、メープルシロップ。」

「私には練乳ね。」

「練乳に目をつけるとはさすがウィリデ…。」


いつぞやに作った練乳をしっかりチェックしていたようだ。そう言えばあの時現れなかったのが不思議でもある。


「ちょっと最近忙しかったのよ。練乳誕生の瞬間に立ち会えなくて悔しかったわぁ。」

「練乳誕生の瞬間って…そんな大袈裟なものじゃなくない?」

「いいえ、私は甘味の精霊になるって決めてるんだから!」


練乳をドバドバかけながら俺の心の声に普通に返事してくるウィリデ。そこも平常運転なようだ。久しぶりに会ったら甘味中毒度が悪化していたが。


「忙しいのにこんなところで油売ってていいんですか?」

「精霊にだって休憩は必要なの!休憩だって仕事を効率よく進めるための立派な仕事よ!」

「まぁそれはそうですが…。クル、アイス乗っけるか?」

「クル!」

「ちょっと楽、私のにもアイス乗っけなさいよ!」

「俺のもだ、楽!」


やはり精霊コンビが加わると姦しいな。リアも甘味に取り乱す様子を何度も目の当たりにして精霊信仰も若干落ち着いたのか、ウィリデ達を気にせずサツマイモとアイスのマリアージュを楽しんでいる。よく考えたら今日は甘党だらけのメンバーだな。


「それで外の音が聞こえるようにしたいんだったけ?」

「え、ガルゥボーイ方法知ってるの?」

「内側の小さい窓からは見えてるんだろ?その窓のガラスの音振動を増幅させれば聞こえるんじゃないか?」

「小さい窓ってこのドアスコープのこと?」

「そう、それだ。どれどれ。ヴィブラッジオーニ。」


ガルゥボーイがドアスコープに指を近づけ何やら唱えると、指からまるで波動のような光が出現。波動はドアスコープに吸い込まれていき小さく光ったかと思うと外の音が聞こえ始める。


「おい、商人地図を持ってこい。合流地点を確認する。」

「は、はい、只今!」


ドアスコープを覗いてみると、いつの間にか食事を終えた黒男が読んでいた書類を一旦机に置き、後ろの商人達に指示を飛ばす。


「おぉ!声聞こえます!」

「そうだろ?その小さい扉を閉めれば音が聞こえなくなるから、うるさい時は閉じるといいぞ。」


小さい扉とはドアスコープについているスライド式の蓋だ。試しに閉じてみるとパタリと音が消える。これは便利でいい。黒男達が丁度ルートを確認しようとしているようなので早速盗み聞くとしよう。まずはみんなでドアスコープが見えるようにePadを持ってきてレンズがドアスコープの穴の上に来るように設置してみる。そしてカメラを起動させればePadの画面にドアスコープの映像が大きく映し出される。これでみんなで見ることができるだろう。


「おぉ、それは魔法か?いいアイディアだな。それなら…レンティ!」


ガルゥボーイが今度はePadに何やらつぶやくと映し出された映像がクリアに、そして歪みない状態へと変わる。


「すごい、歪みがなくなった。」

「光の屈折を調整してやったぞ。これなら見やすいだろ?」

「これ、めちゃくちゃいいです!さすが精霊様です!」


わかりやすく褒めたらわかりやすく嬉しそうに笑うガルゥボーイ。やはり褒めるって大切だね。早速みんなで画面を覗き込んでみると、丁度商人が黒男の前にイーゼルのようなものに貼られた地図を持ってきたところだった。ちょっと地図が遠いな。つい癖でePadを2本指でズームするとなんと画面の中の地図にズームすることができた。しかも画質は全く変わらない。


「おぉ画質の性能まで上がってる!」

「楽、面白い使い方するな。確かに近づいたら見やすくなったぞ!」


ガルゥボーイもやはり男の子?ガジェットに偉くご満悦だ。ウィリデ達は興味ないのかおやつに夢中であんまり画面すら見ていない。


「この北東側を通り山の嶺へと上がればチャンチョンが見えてきます。チャンチョンの中腹部に開けた場所があり、そこが合流場所となっています。」

「嶺か…。高さは?」

「ご安心ください、標高はあまり高くなく散歩気分で登れる程度の山です。」

「なら補給はあまり考えず短期突破も可能か。」

「そこは大丈夫かと。ただ山までの距離はまだ幾分かあるので合流地点までは1ヶ月、いや頑張れば3週間でいけるかと。」

「では2週間を目指せ。さぁ出発するぞ!」

「2、2週間…は!お前達、今すぐ出発だ!!」


地図を見る限り商人が指差す合流地点とやらは1ヶ月で行けるような距離には見えない。しかし反論するのが怖いのか黒男の無茶ぶりに慌てて出発準備を促すためバタバタと走っていってしまった。黒男は走り去る商人達を見て満足したのか、再び机に向かい羽ペンを紙を取り出す。さらさらと簡単な文を書き思うとぶつぶつ何か唱えたかと神はあっという間に鳥の形に変形、そして空高く舞い上がり何処かへと飛んでいってしまった。


「合流相手への連絡かな?」

「あらかたそうだろうな。」

「チャンチョンって?」

「チャンチョンって言えば遺跡だろ。なんかよくわかんねーけど上が長ーい通路みたいになってる壁があるんだ。」

「まるで万里の長城ですね。でもガルゥボーイ達がよく知らないってことはかなり昔の遺跡ってことなのかな?ところで黒男達はなんでこんな遠回りのルートを取るんだ?まっすぐいった方が山もないし楽そうなのに。」

「距離的には近いがこの中央の平地は寒冷地だからな。寒いのは避けたいんだろう。」

「寒冷地?」

「ラグジュン平原は寒くて有名よ。日中はマイナス80℃、夜になるとマイナス120℃まで行く日もあるんだって。」


マリアージュを堪能し終わったのか、リアが口を拭きながら入ってきた。


「マイナス120℃って…それは凄いな。」

「寒い上に魔獣もいるから大抵の人はここを避けるの。」

「うへぇ魔獣もいるのか。」

「よし、先回りしよう。」

「「え?」」


ガルゥボーイの提案に思わずハモるリアと俺。クルは嬉しそうに大きくうなづいている。そしてウィリデは練乳をなめてうっとりしている…。


「先回りしたら黒男びっくりするぞ!」

「いや、そもそも俺達がここにいるって黒男知らないし…。」

「だって面白いだろ!」

「それに脱出のタイミングがうまくできるかどうか…。」

「亀だろ?亀が逃げ出せればいいなら。」


ガルゥボーイは両人差し指でドボチてポーズをとり、そのままくるくる回し始める。すると光の糸が指から伸びてきて人差し指と人差し指の間に光の繭ができていく。繭がある程度の大きさになると今度は形がぐにゃぐにゃ変わり始めなんと亀の形に。ガルゥボーイは出来上がったカメをePadの前に浮かせ次いでクルをヒョイっと拾い上げ亀の上に乗せる。


「わー亀さんの上!亀さん前進だクル!」


まるでホログラムの亀に乗ったクルは亀の頭をポンポンして前を指差す。するとクルの目の前のePadの画面がゆっくりと前進を始める。


「こ、これは…?」

「クルの指示で亀が動き始めたんだ!どうだこれなら自由に動けるぞ!」


なんと亀を操縦できるようになってしまった。ただ動き出した亀に気づいたのか黒男がスッと台の奥へと亀を移動させる。さすがに今は逃亡できなさそうだ。


「よし、あとは脱出のタイミングを見計らうだけだな!ワクワクするな!」


あれ、ガルゥボーイが一瞬エティに見えた。気のせいだろうか…。


「ガルゥはエティと意気投合すること多いからねぇ。」


さいですか。あと、ウィリデついにおやつ食べ終わったんだね。


「楽、おかわり!」


さいですか。きっとウィリデはこだまと意気投合することが多いのだろう。


「楽、早く!」


…はいはい。

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