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飯テロ⑧情報戦

お弁当はコミュニケーションツールです。

「これを使おうと思う。」


俺がビットさんの前に取り出したのは、卵とチーズ。俺が思いついたのは【チーズ茶碗蒸し弁当】だ。弁当に茶碗蒸し、一見ぐちゃぐちゃになりそうだが、崩れない具沢山、硬めの茶碗蒸し。それも洋風バージョンだ。


「【チーズ茶碗蒸し】?聞いたことない食べ物だな。でもチーズはみんなの大好物だし、面白そうだ。よし、作ろう!早く作ろうぜ!」


流石料理人、未知の食べ物に興味津々。手伝ってくれるようだ。


【チーズ茶碗蒸し弁当】


材料

・卵

・出汁

・塩

・酒

・チーズ

・鶏肉

(餡)

・出汁

・醤油

・みりん

・水溶き片栗粉


まずは卵、出汁、塩、酒を混ぜ、ツルツルの食感にするために布で丁寧に濾す。缶の弁当箱に細かく切ったチーズと鶏肉をごろごろ敷き詰め、卵液を入れていく。空気が入らないように軽くトントンしておこう。水を張ったフライパンに缶を並べて蒸し焼きに。できるだけ表面を滑らかにしたいのである程度固まったところで卵液を追加して一番上は蒸しすぎない層にする。弁当用の卵多め、ちょっと固めの【チーズ茶碗蒸し】の完成だ。

続いて、上にかける餡作り。

鍋に出汁、醤油、みりんを入れ、【チーズ茶碗蒸し】の黄色と醤油餡のコントラストを楽しむため、色が濃くなるようしっかりめに煮詰めた。そして今回はシャバシャバ系にしたいので片栗粉少なめほのかなとろみ餡だ。


「これで【チーズ茶碗蒸し弁当】の完成です。この餡は、食べる前にかけるので小瓶に入れて弁当に添えて欲しい。」

「ほぉ。これはまたツルツルした綺麗な見た目の弁当だな。味見してみていいか?」

「あ、ちょっと待ってください。最後にちょっと面白い仕掛けを仕込みます。」


そう言って細いナイフを取り出し、表面に切り込みを入れていく。


「さ、食べる前に餡をかけてみてください。」


ビットさん、こだま、エティ、リアの前に【チーズ茶碗蒸し弁当】をサーブして、次に餡の入った小瓶を渡す。クルには【チーズ茶碗蒸し弁当】はデカすぎるので、椎茸の傘にチーズと鶏挽肉、卵液を入れた特別バージョンを作ってあげた。

さっそくビットさんが餡をかけると、


「おぉ文字が浮かび上がったぞ!!!」

「こだまって書いてある。」

「オラのはエティって書いてあるぞ!」

「クルのはお顔!」


そう、この弁当は、餡をかけると文字が浮かび上がる隠し文字弁当なのだ。ぱっと見は何も書いていないように見えるツルツルの表面だが、細かい切り込みの文字を入れておき、濃い色の醤油餡をかけると切り込みに餡が浸透し、より濃くみえる。隠しておいた文字が見えるという仕掛けになっているのだ。

クルの茶碗蒸しは小さすぎて文字が難しかったのでスマイルマークを刻んでおいたので文字ではなく顔が浮かび上がった。


「これは凄いな!しかも、味も凄くうまい!この滑らかな舌触り、たまらん!」

「うまうまうまうまうま。」

「チーズがすごくうまいぞ!」

「クルこれ好き。」


味も無事合格点をいただけたようです。茶碗蒸しとチーズ意外と合うんだよな。


「とても不思議。餡をかける前は何もなかったのに。これなら食べる人にだけこっそりメッセージを送れるね。」

「そう、リア、それが狙いさ!茶碗蒸しに今の状況を書いてみんなに配る。もちろんリバリさんのはただの茶碗蒸しだ。これならこっそりみんなに情報を伝えられるだろ?」

「なるほどな。これは凄い案だ。餡だけにな!ガハハ!」


さぁ、オヤジギャグまで爆誕したこの【チーズ茶碗蒸し弁当】で情報戦をおっぱじめますぜ!第二次世界大戦の時、日本は情報戦で負けて戦争大敗したという過去がある。戦争を制するには情報戦が鍵となるのだ。その意味でも、どうなるかすごく楽しみな作戦だ。

こうして俺たちは各所に配るべく大量の弁当作りを開始した。ビットさんは調理長だけあって流石の手際でどんどん卵液を作っていく。俺はその横でどんどん蒸し作業。文字の仕込みはリアが担当だ。俺、名前くらいしか文字書けないので…。こだま、エティ、クルはお腹いっぱいでお昼寝タイム。昼食べたばっかで茶碗蒸し食べたから、そりゃお腹いっぱいだよね。途中、料理担当のクルーも集まってきたので、作った弁当をどんどん運んで行ってもらった。夕方にはこの弁当が振る舞われることになるそうだ。


作業を終えた俺たちはやることもなくなり、再び牢屋に戻ってまったりとくつろいでいた。お腹いっぱいで動きたくなかったからね。夕方になるとどこからともなく美味しそうな匂いがしてきた。その匂いにずーっと眠りこけていたドワーフ達も目を覚ます。


「んーよく寝た。なんだかいい匂いがするな。そう言えば腹も減ってきた…。」


クラッグさんが寝起きにそう呟くと同時に、ガチムチな男達がドカドカ入ってきた。よく見るとビットさん達だ。


「おうお前達!腹減ってないか?飯持ってきたぞー!」


ビットさん達は大量のご飯と、酒樽を牢屋の前に並べると、次々に牢屋の鍵を外していく。


「ドワーフのみんなも一緒に飯食うぞ!」

「おぉ丁度腹が減ってたんだ、馳走になろうかの!」


クアワさんも普通に鍵を開けてもらったこと受け入れてハーフリング達と宴会を始める。みんな細かいことを気にしなさすぎる…。まぁ、誰も異論がないのならいいですけど。

こうして敵同士とは思えない賑やかな宴会が始まった。


「そういやー、楽、弁当作戦すげーうまく行ったぞ!」

「みんなマーラが好きでここにいるって知って、ほっとしてる。まぁ程々にリバリに付き合ってやって、あいつがこれ以上嫌われないうちに帰ろうかってなったぞ。」

「当たり前だ!マーラは俺を選んだんだからな!」

「しれっと自慢すんなおっさん。今夫婦喧嘩中だろ?」

「むむ…そうじゃった。早く剣を完成させねば…。」

「そもそもその作戦でいいかも疑問ですけどね…。」


肝心のマーラさんがどこにいるのか知りませんが、罪作りなお人ですよ。クラッグさんがマーラさんと仲直りできれば一件落着ですが、そこが一番難関かもです。


「なんだ、クラッグ夫婦喧嘩してるのか?じゃあリバリにもチャンスがあるかもな!ガハハ!」

「ぬかせ!すぐ仲直りしてやるわい…。」


最後の方、声がめちゃくちゃ弱々しいなぁ、おい!さっきまでの威勢の良さはどこへやら。まぁ、夫婦喧嘩は犬も食わない。あまり足を突っ込まないようにしておこう。それにしてもドワーフとハーフリングのみんな、似たもの種族、めちゃくちゃ意気投合して仲良さそうです。クアワさんなんて、肩組んで歌ってますよ。しかしこの宴会の流れ、また朝まで…?なんだろうな…。

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