飯テロ⑤再びのエルフ・タルウィドゥナ王国
おいてけぼりって、されるとダメージすごいよね。
リアはタルウィドゥナで一人憤っていた。原因は楽達に置いていかれたからだ。人族の村の方を見ては眉間にシワを寄せている。
「リアそんなに怒らなくても…。あの人達が国に入れなかったのは私達のせいなんだし、行ってしまってもしょうがないじゃない?」
「何も言わずに行くのはダメ。私もちゃんと伝えたのに。」
きっと置き手紙を残していてもリアは怒ったのだろうな、と様子を窺う友人は思った。遠くを見つめるリアの顔は主人に置いていかれた犬のような顔をしているの気づいてる?と友人は生暖かい視線を向ける。そろそろ狩に行こうかと誘おうとしたところでリアが声をあげた。
「あ!帰ってきた!」
「え?」
リアが立ちはだかるタルウィドゥナに楽達は戻ってきたのであった。
「ん?リアわざわざお出迎えに来てくれ…ぐはぁっ…」
呑気に声をかける楽。そこに全多重を乗せた体当たりで突っ込んだリアは3人を抱き寄せるようにしがみついてきた。オォフ…痛い、痛いです。あまりの力強さに変な空気が漏れてますが緩まる気配なしです。
「置いてきぼりにした。」
「置いてけって…最初に出てったのはリアじゃ…ぬぅあああ」
お言葉を返したら絞めが強まった。なんでこだまとエティは苦しんでないの?このままじゃ堕とされると必死にギブアップのタップ。しばしの悶絶の後、若干緩めてもらえたが、まだまだ解放してはくれないようだ。
「ごめんね…?もう置いてかないから…。」
「ほんと?絶対?」
「神に誓います!」
「楽、神信じてる?」
「ぐぬぬ。リアさん鋭い…。こだまに誓って?」
「なら許す。」
ひゃー、こだま神より上ですか?とにかくしばしの押し問答の末、漸く解放。すごい渋々だが。…まだ若干不機嫌そうです。
「実はタルウィドゥナには食材を探しに戻ってきたんだ。」
「食材?」
「そ。リアも手伝ってね?」
仲間だよアピールのためにも積極的に誘っておこう。連れ立って向かったのは森の中。水は大分引いていて、森の中の水はすっかりなくなっていた。後は森の外に広がる水が引けば人族が攻め込んでくる。エルフ達は戦いの準備も大切ですが、戻ってきた魔物達をせっせと狩っているようです。そんなタルウィドゥナで俺たちが探したい食材は2つ。1つめは長芋です。
「エティ、宝探しだ!この葉っぱを見つけたらその下には太くて長ーい根っこがある。どっちが一番長いの見つけられるか競争するぞ!」
「なに!負けないぞ!こだま一緒に来るんだぞ!こだまの魔法で掘るんだぞ!」
リアにぎゅうぎゅうされるのを楽しんでいたエティは、長芋の葉っぱの画像、地中に埋まる長芋の画像を見せると、新しい遊びを見つけて目をキラキラさせ、こだまを掴んであっという間に走り去っていった。この世界に長芋があるかは知らないけれど、これだけ広いんだきっとあるだろう。
「ちょろいな。」
エティを唆し笑って見送っていると、リアが若干冷ややかな目線を向けてくる。解せぬ。
「さて、リアとはもう1つの食材を取りに行こう。」
「もう1つ?」
「そう、あそこの木の上になっている木の実だ。」
2つ目の食材は存在していることを既に確認済み。指差した先には、南国な葉っぱの下に毛深くて茶色いまん丸な実、そうココナッツがなっている。さすが異世界というべきか、森の一角には何故かココナッツの木が混じっている。森の中はコロコロ気象が変わり、狭い範囲でいろんな環境が生み出されている。そのせいか南国の植物、北国の植物が入り乱れている。しかも余程環境がいいのか、俺が知っている姿より大分でかい。
俺は木に上る術もココナッツ取り用の猿を飼ってもいないので、ボウガンで狙うことにする。実に当てちゃったら中のジュースが溢れちゃうからかなり難しい。しかもこの森のココナッツは俺が知っているココナッツより実の数が多い。たわわレベルを超えて巨大なココナッツ岩と化しているから、実の付け根がなかなか狙えない。何度かトライしていると、
「それ、面白い?普通に取ればいいのに?」
そういって風魔法を使うとちっちゃい竜巻がぽこぽこ生み出され、ココナッツの元へ。竜巻はココナッツをしたからグルグルってねじり切り戻ってきます。風ってそんな、子分みたいに使えるものなの?あと、俺魔法使えないのお忘れですか!!?
「でかしたリア。じゃんじゃん頼む。」
自力での採取は早々に諦め、リアにココナッツを取ってもらった。そうこうしているうちにエティ達も戻ってきた。
「楽!楽!見ろ、でっかいぞ!」
エティが抱えている長芋は巨大なんてもんじゃなかった。それ、軽自動車くらいありません?
「すごいぞエティ。エティがチャンピオンだ。俺は一個も見つけられなかったからな。」
「そうか楽は見つけられなかったか!オラすごいんだぞ!オラ、チャンピオン!」
「……。」
冷たい視線はやめてね、リアさん?
「さて、食材も揃ったし、リア、村長さんと話できないかな?ちょっと相談があるんだ。」
「村長?呼んでくる…いや、呼び出す。」
置いけぼりにされないようにと、村長、偉い人なのに若人に呼び出される羽目に。まだ信用してもらえてないようです。リアは魔法で風の鳥?を作り出し飛ばす。風なのに鳥の形に感じられるって不思議。風って伝書鳩にもなるんだな。料理の準備しながら待っていたら、程なくして村長が何人かを引き連れてやってきた。
「お前達、戻ってきていたのか?リアが煩かったから助かる。」
リア、俺達がいない間なにしてたの?
謎は深まるばかりですが、早速交渉と参りましょうか。
「実は村長さん達にお願いがありまして。実は、今から作る料理、人族の村に届けたいと考えています。」
そうして俺は事の顛末を村長に話した。人族の大都から来た騎士団がエルフの国を侵略しようと、湖の側にある小さな村にやってきて占拠した。村人から米を取り上げ、村人達には豆しか食べるものが無くなってしまった。騎士団の被害者でもある村人に食べ物を分け与えたいと。村で母親にご飯を食べさせたいと頑張る子供の話も丁寧に伝えた。
「同じ人族同士だというのに、ひどい話だ。しかし、人族に食料を与えるのは…。」
「不安は分かります。でも今、村の人達は騎士団に不信感を募らせています。実際に被害を受けていますからね。そこで、エルフが助ければ、きっと村の人たちは恩人であるエルフに害を与えようとは思わなくなるでしょう。問題の騎士団は、俺が追い払いますので、考えてはいただけませんか?」
「…。ふむ、どうしたものか。その料理とやらを見てから考えてもいいか?」
「了解です。折角です、他のエルフの皆さんにも味を見ていただきたいので呼んできていただければと思います。もちろん来るのが怖いという方には、持ち帰り用もお作りします。」
こうして俺たちは長芋とココナッツを使った料理をタルウィドゥナの人々に振る舞うことになった。




