飯テロ⑤ご飯泥棒
敵の兵糧補給路を断ち、兵糧を欠乏させるのが、兵糧攻め。
なら敵の食欲を爆上げして、兵糧を欠乏させるのも、兵糧攻めですよね?
早速騎士団の厨房にやってきた。
米が中心の食生活ということで今回の武器は、ご飯がすすむ【食べる醤油】と、肉でも魚でも何でも旨くする魔法の粉、【トリュフ塩】だ。
「楽、見つけてきた。」
「おぉ!こだまサンキュ!」
「楽、大豆もお肉と交換してきたぞ!」
「ナイスだエティ!さぁ準備は整ったぞ。」
まずは超簡単な【トリュフ塩】
材料
・フリーズドライトリュフ
・塩
なんと!フリーズドライしたトリュフの粉末と塩を混ぜるだけ。あんなにもてはやされているのに超簡単。なのにどんな食材もめちゃくちゃ旨くなる。トリュフ系のメニューってなんかうまいよね。トリュフサラミとかマジ好き。
これは焼く時の塩の代わりはもちろん、料理当番じゃない時もささっと振りかけてみんなに美味しく食べてもらおうと思っている。
そして、【食べる醤油】。
こちらもフリーズドライを使う。折角手に入れたのだから使いたいのだ!
【食べる醤油】
材料
・大豆
・醤油
・にんにく
・玉ねぎ
・長ネギ
・塩
・胡椒
・ごま油
大豆は茹でて、醤油に1晩漬け込みフリーズドライに。
ネギもみじん切りしてフリーズドライに。
にんにくと玉ねぎはスライスして油でカリカリに揚げて細かく刻む。
更に生玉ねぎはフリーズドライで粉末バージョンも用意。
これらに塩、胡椒、ごま油を加えて混ぜれば完成だ。
本当は醤油で煮詰めた大豆、みじん切りしたネギ、フライドガーリック、フライドオニオンをごま油で炒めて、塩胡椒でもいいけど、某醤油屋さんから出ている【食べる醤油】がフリーズドライ醤油使っているって見かけたので、できるところはフリーズドライにしてみた。
これなら簡単にはレシピ真似できないし良いかなと思った次第である。醤油味の大豆、フリーズドライしたらサクサク食感がめちゃくちゃアクセントになるしね。
【食べる醤油】はご飯に乗せるだけでも旨いし、これも魚や肉に合わせても旨い。
早速騎士達のご飯に仕込んでみた。
「おぉ!今日の肉は格別に旨いな!」
「本当、いくらでも食える!」
「この醤油味のも、ひとサジで飯1杯いけるな!」
「それ、魚に乗せてもイケるぞ!」
「やべー、箸がとまらねー!」
食欲旺盛な騎士達が、いつも以上にうまそうに食べている。
「うまうまうまうま」
「肉おかわりだぞ!ごはんもおかわりだぞ!」
うちの子達もご満悦です。
「いやー、旨かった!明日もがんばれそうだ!」
「おう!明日も頑張っていっぱい腹空かせなきゃだな!ガハハハ!」
しめしめ、うまくいっています。このまま毎日お腹いっぱい食べてもらおうと思う。
そう、俺がやろうとしている飯テロは、ご飯泥棒のせいで毎日食べすぎ兵糧攻め作戦だ!
名前はダサいが、隊長の上を行ってやるぜ!
小さくガッツポーズしてたら、そこに騎士達を労うためか隊長がやってきた。
隊長は長い髪を後ろで1つに結えた、細マッチョイケメンだった。30歳前後だろうか、予想に反して意外と若く見える。他の騎士とちがって、赤で統一された甲冑に大剣を2本背中に担いでいる。
名前は、コウウ。名前まで軍師っぽい。
後ろに2人の騎士が控えていて、弁慶みたいなゴリマッチョの仮面男と長髪ポニテの女性。ゴリマッチョの方はバチョウ。黄色ベースの甲冑で全身、顔まで覆われていて人相まではわからない。ナックルを装着しているあたり、格闘タイプなのだろうか?そして女性の方はレイキョウ。スレンダーで長身、青の甲冑だが、こちらは最低限のようだ。レイピアを腰に差し片手だけガントレットをはめている。バチョウは分からないがレイキョウもまた20代前半位、若く見える。まるで信号みたいな3人だ。
「今日はいやに賑やかだな!」
「これは、コウウ様!新人の腕がよくって、今日の飯は格段に旨いって盛り上がってたところです。コウウ様も是非召し上がってくだせぇ!」
「こいつなんて、明日もいっぱい食べるために頑張ろうって。」
「コウウ様、明日の俺ぜってぇ活躍しますんで見ててくだせぇ!」
ガハハハと笑いが起こり、3人にも食事が用意されます。ふむ、と言いながら席に座るコウウ達。まずはバチョウとレイキョウ。肉の香りを嗅ぎ、そして丁寧に箸を入れ口に運びます。特にバチョウだが、見た目に反して綺麗に召し上がります。
「…確かに、これは美味しい。コウウも食べてみて。」
そうしてコウウも箸をとります。バチョウ、レイキョウ以上に丁寧、気品を感じる召し上がり方です。
「この香りは…椎茸?いやバター?何とも言えないが深い良い香りだ。確かに旨い。ご飯に乗っているこの醤油漬けのようなものも、大豆のようだが食べたことのない軽い食感。これを誰が?」
「へぇ、新人のコーダとその息子達、ココ、エコです。お前ら、挨拶しな。」
「あ、えと、コーダです。こっちがココ、そっちがエコです…。」
「その紋様。田舎の出か?」
「は、はい、蝦夷族の流れを受けてまして…。」
「ほほう、それは遠いところからよくきた。歓迎するぞ。」
ふぅ、なんとか誤魔化せたかな?
トリュフは流石に出回ってないのか、食材を言い当てられる事はなかったが、コウウいい舌を持ってるな。世が世なら美食家になっていた事だろう。コウウは綺麗に、そして瞬く間にご飯を食べ、活気付く騎士達を眺めている。
「……。」
しばらく考えこんでいたが、みんなを労い戻って行った。俺の作戦気づかれちゃったりしてないよね?
若干不安を感じつつも、爆弾投下は無事終わった。後は様子を見るだけ、俺達はそろそろお暇しようかしらね。
「なんだって、故郷から早く帰れとの連絡が来た?何かあったんかいな?」
「詳しくは分からないんですが、母の調子が悪いらしく…。」
「そうか。おっかさんは大切にしなきゃな!安心しろここは俺たちに任せておっかさん安心させてやれ。」
「すみません、何のお力にもなれず…。」
「そんなことはねぇぞ!蝦夷のうまい飯の食べ方教えてもらったからな!塩も醤油もこんなに作り貯めてくれたしな!」
そう、たっぷりの【トリュフ塩】、【食べる醤油】を贈呈しておいた。これでみんな美味しくご飯を食べてくれることだろう。ずる休みの常套文句で無事離脱。本当ガンテツさんいい人だな。