マチュール王国・アロス村
米が手に入ると日本食を作りたくなっちゃうので諸刃の剣です…。
はい、やってきましたアロス。
米の産地があると分かってしまったら行かないわけにはいかない。王都では庶民食堂の手前あまり量を確保できなかったので、アロスで是非確保したい。
因みにアロスは王都から馬車で2〜3日の場所にあると聞いてましたが、1日でつきましたよ?
すごく頑張れば近いものです。
何故かリアとこだまは宿で寝ていますが、俺は早速米探し。
村に入ってまず目にしたのは広大な田んぼの数々だった。そして緑色で塗られた可愛らしい家が点在しています。黄金の穂と緑色の家々、収穫前のシーズンともなればそれは美しい光景を見ることができるのではないでしょうか。しかし稲はすでに刈り取られた後。収穫の時期が終わった後だったようだ。
残念に思いつつもめげずに米屋さんを探す。
米屋は実にわかりやすい稲穂の絵の看板を掲げていて、至る所にあった。
しかし、出荷が終った後でどこも新米は残ってなかった。
いい米は王都の貴族街で取り扱われているようだ。
遅かったか…。それにしても王都の貴族街、もちろん庶民は立ち入り禁止だったので踏み入れてないが、あそこに売ってたのか。米は庶民のものと言いつつ出来の良いものはちゃっかり押さえてる。嫌な奴らだ。
落胆しつつも諦めきれず町を歩き回っていたら、なんと1箇所だけ稲刈りが終わっていない田んぼを見つけた。
所々黒い点が見えるが、たわわに実った稲穂はとても美しい。地球でもテレビでしかみたことなかったけど、見るからに豊作だ。
「すみませーん。こちらの田んぼの人ですか?」
「ぬぁ゛じ、人族!?」
「あ、大丈夫、俺、人族じゃないでーす。ほらギルドカード。」
「お、おぉ…。」
ギルドカード作って正解でした。
人族じゃない証明が格段に楽になりました。
…あれ?そういやぁアルマジロ親子とは人族で一悶着イベント無かったような…。
ある意味すごい親子だったな。
田んぼの持ち主とおぼしきビーバーおじさんは、あのカール系スナックおじさんみたいな麦わら帽子に緑のベスト姿、恰幅のよい農家さんだった。
「この村には初めて来ました。パタタの町からきた楽というものです。米があるって聞いて。」
「パタタからかい。ずいぶん遠くから来たんだな。でももう収穫はとっくに終わっちゃってるからねぇ。」
「でもこちらはまだ収穫してないようですが?」
「あぁうちはな…。ほら、穂の所々に黒いのついてるだろ。あれが出ちゃったらダメなんだよ…。縁起が悪いから処分するしかないんだ。」
見ると、稲穂にたまに黒い粒がついてます。
え、あれ稲麹じゃ…。麹…。
「あ、あの!あの黒いのいただけませんか!!」
こんなところで麹に出会えるなんて奇跡です。
「あの黒いのが欲しいのか?変なやつだなお前。まぁどうせ処分するし…勝手に取ってけ。」
「あの黒いの研究してみたいと思ってたんです。頑張って取って来ます!」
「物好きもいるもんだな。まぁ頑張り。」
許可を得るや否や、広大な田んぼを端から虱潰しで稲麹取り。
稲麹とは豊作の時に稀につく天然の麹菌です。昔は稲麹から種麹を作り、その種麹から米麹を作っていたらしい。一般的には稲の病気だから嫌われますが麹があるならいろいろトライしたい。
醤油、味噌欲しい。
「おーい、まだやってるのかー?」
声をかけられハッとしたらいつの間にか日が暮れかかっています。でも夢中になったおかげでそこそこ稲麹ゲットできました。明日も頑張れば稲麹は全て摘み取れそうです。
お礼と、明日も続きをすることを告げ宿に戻ったらお腹を空かせたこだまの凄く切なそうな顔が待っていました。放置してごめんよ…。確かに、お腹すいたね。
「今日はハンバーグと目玉焼きのロコモコ丼にしよう。」
「ハンバーグ!」
「ロコモコ?」
ご飯を炊いて、ハンバーグ、半熟目玉を乗せるだけ。お手軽懺悔飯です。
ソースはハンバーグ焼いた後の肉汁にケチャップを入れて煮詰めたもの。ご飯の上にちぎったレタス、ハンバーグ、目玉焼き、ソースをかければ完成だ。お腹空きすぎ、早く食べたいので今日のところはパパッとで。
…と思ったらこだまには手抜きお見通しでハンバーグのフルコースを作らされましたとさ。
「今日は何してた?」
ご飯を食べ始めてすぐ珍しくリアに話しかけられたので稲麹のことを話した。
「昔本で読んだんだ。この黒い玉、稲麹って言うらしいんだけど、これを使って珍しい調味料が作れるんだって。」
「しょうゆ?」
「流石こだま冴えてるぅ!そう醤油だ。あと味噌も。」
「こだまも知っているのか?その調味料。」
「うん。美味しいご飯がいっぱい作れる。」
「なるほど。こだまが喜ぶなら、価値があるものなのだ。よし、明日は私も手伝おう。」
「え、リアも手伝ってくれるの?あ、ありがとう…。」
明日の助っ人が増えた事もそうだが、久しぶりのリアとの会話に喜ぶ楽。ま、会話はそれだけだったが。
話しかけてくれるということは、そこまで嫌われてはないのかな?なら良しとしよう。
翌日、3人連れ立って田んぼへ。
「そんなもんの何がいいのかねぇ…。」
呆れるビーバーおじさんを横目に、あっというまに稲麹を摘み取る。今日は3人だから早い早い。折角なので稲刈りもお手伝いすることに。と思ったら飽きてきたこだまが魔法でサクッと全刈り。
「縁起悪いしその米も持ってっていいぞ。」
「えー勿体ない!丁度昼時ですし、お礼にご飯一緒にいかがですか?」
「そんな米食えたもんじゃないぞ、俺は遠慮しとくよ。」
新米なのにもったいないな…。そう思うのだが無理強いはダメだよな。
仕方なく俺たちだけでお昼ご飯。
「ご飯すすむおかずが必要ですな!」
今日はやる気十分です。
王都で豊富にゲットした鶏と卵があることだし、【バッファローチキン】と【揚げ出汁卵丼】にしようかな。
早速畑の傍のスペースに移動し、バケツコンロを出してもらう。
リアに火を準備してもらっている間に下準備。
【バッファローチキン】
材料
・鶏肉
・塩
・胡椒
・にんにく
・小麦粉
・バター
・ケチャップ
・タバスコ
・白ごま
鶏肉を大きめのぶつ切りにし、塩、胡椒、すり下ろしにんにくを混ぜ込み、その後小麦粉をまぶす。
160℃の油で7分揚げたらバター、ケチャップ、タバスコを和えて最後に白ごまをふりかける。
これで【バッファローチキン】の完成。アメリカ生まれの味濃いめ、ガツ飯だ。
そして、
【揚げ出汁卵丼】
材料
・卵
・昆布出汁
・塩
・片栗粉
・万能ネギ
フライパンに1cm位の深さにたっぷり油を引く。脂があったまってきたら卵を割り入れて揚げ焼きに。白見が固まってきたら半分に折って黄身を包みこむ。黄身が半熟になるよう焼きすぎないように気をつけよう。卵が揚がったら余分な油を捨てて水、昆布出汁を煮詰め、塩で味を整えたら片栗粉でとろみをつける。
ご飯に揚げ卵をのっけて、出汁をかけ、ネギを散らせば【揚げ出汁卵丼】の完成だ。シンプルだけど油は旨味。醤油をちょっと入れるとなお旨いのだが出汁だけでも絶品だ。さぁお待ちかねのお昼ご飯タイム。
上品な出汁の香りと、にんにくケチャップのガツンとした香りが一面に広がる。
田んぼの真ん中で新米ご飯なんて、まるであの、青空でごはん食べる系番組。旨い!にエコーかけて欲しい。
「うまうまうまうまうま」
「出汁と卵のとろみがご飯に染み込んで本当に美味しい。」
2人にも無事「旨い」頂きました。
ゴクッ。
振り向けばビーバーおじさんがガン見しています。
「…頼む!それわしにも食わせてくれ!!!」
うっかり飯テロってたみたいです。
「うまーい!」まーい…まーい…まーい…
あれ、エコーかかってません?
「いやぁすげぇ旨い飯ありがとな。」
「新米だから尚美味かったんですよ。」
「縁起悪いなんていうもんじゃないな、あんな旨いんだから。しかも余ったおかずまで貰っちゃって。家族が喜ぶぜ。」
「いえいえ、こちらこそこんなに米譲って貰っちゃって、ありがとうございます。」
作り過ぎた【バッファローチキン】【揚げ出汁卵】で、白米&玄米大量に譲ってもらっちゃいました。
折角なので、王都に美味いご飯料理出す店があるから、そこに卸してもらえるようお願いしておいた。美味しく料理してもらえるなら生産者冥利に尽きると快諾してもらえた。
販売ルートも確保なんて、俺いい仕事しすぎ。
なにより、稲麹と玄米、これで種麹つくれるじゃん!
種麹ができたら、米麹、米麹ができたら、味噌に醤油!
絶対たどり着いてやるぜ。
アロスを後にし一路王都へ。本当はパタタに直帰したいが一応庶民食堂に米の販売ルートのこと伝えなきゃだしな。
ま、帰りはのんびり行くことにします。
2人の眼圧が凄かったからでは決してありません…よ?




