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飯テロ②宣伝と仕入れルートは大切です。

狩りに料理を使うのもある意味飯テロなのでしょうか?なら今回は鳥に飯テロです。

「オムライチュおいちいよー!タダでちゅよー!」


今日は朝から看板娘のロッタちゃんが声を張ります。


「おや、ロッタちゃん、今日は元気だねー。」

「オムライチュ?なんだいそれは?」

「オムライチュはおいちぃのなの!」

「この卵みたいなのかい?へー、いろんな見た目の卵があるんだねー。」


幼いロッタちゃんが若干舌っ足らず気味で呼び掛ければ大人がぐんぐんつれる。どの世界でも子供の集客率は半端ない。そうなれば、味見してくれる人も出てくる。


「うまい!」

「本当!もう食べ終わっちゃった…。もう一個くれないかい?」と言われればロッテさんが

「ごめんなさい、みんなに食べてもらいたいから今日は1人1皿までなの。でも明日からお店で食べられるようになるからぜひいらしてください!」と見事な連携で客をゲットしていく。

ちゃんとお手頃価格ですよと伝えるのも忘れない。


「庶民でも買えるのかい?」と聞かれれば

「むしろ庶民のための食堂です!」とロッテさん。


夢だった庶民のための食堂。その庶民食堂の初めての手ごたえに目頭が熱くなっています。でも満面の笑顔で呼び込みするロッタちゃんに負けじとロッテさんも声を張り上げます。そんな2人の姿に見守るご近所さん達も嬉しそう。

人望もあるようだし、どうして今までうまく行かなかったのか…

食材が買えなくてまともな料理が作れなかったからか。

でも、【揚げオムレツのオムライス】は原価率もいいし、なんとか次の食材を買う分は稼げると思う。

そうなれば、また食材を買えるようになって、そのうちこの店も持ち直すんじゃないかな。

人目に触れぬよう裏で延々皿洗いをしながらそんなことを思っていた。


ミニオムライス200個はあっという間に完売した。評判も上々、明日は多少期待しても良いかもしれない。実はこの後、とある場所でも試食会を開こうと思っている。

ミニオムライスを100個作り、やってきたのはスラム街。王都ではたくさんの子供達がスラム街でその日暮らしをしていると聞いた。町で孤児院の子供達を戦力にしたように、王都でも子供達を働き手に雇えないかと考えたのだ。もし人気が出たら、すぐに食材が足りなくなる。クズ野菜を集めるのも、養鶏もアルマジロ親子だけではとても手が回らない。そこで、スカウトだ。


スラム街と言われる場所は、本当に絵に描いたようなスラム街だった。無人となって瓦礫と化した家が立ち並び、人の姿が見当たらない。聞けば遥か昔小さな集落があったのだが、貴族が貴族街を作った時に集落も移動を余儀なくされ打ち捨てられ残った場所らしい。しばらく歩いてみて、「誰もいないなー。」って呟くと、「え?いっぱいいるよ?」とこだま。何それ?気配ってやつ?と驚いていると、


「誰だお前!?」


瓦礫の裏から小さな子が出てきた。


「ポメッ!」


ひしっ。思わず抱きついてしまった。俺は子供の頃飼っていたこともあってポメラニアンには目がないのだ。子犬なら尚。


「なんだよー!やめろよー!」


バタバタする姿も何とも愛らしい。後ろのリアがじとっと見つめてくるが、ポメラニアンの子供と書いてポメラニアン(超絶かわいい)。不可抗力です。


「離せよー!あぁ…!!」


いいこいいこしまくったら目がトロンて。ふっ落ちたな。ポメの後ろからちっちゃい猫やらヤギやらいっぱい覗いているけど気にせず可愛がりまくる。散々いじり倒して気が済んだところで、


「お前ら腹減ってるか?あと、いい話があるんだが、聞く?」

「ほ、施しなんていらねーぞ!」


精一杯虚勢を張るポメだが尻尾はブンブン。落ち済みですからね。


「あれ人族かな?でもリーダー喜んでる?」

「人族は子供食べるんだよね?」

「俺は人族じゃないし、子供食べるって何?めちゃくちゃ怖いんですけど。」


予定とは違ったがリーダーが落ちれば後は簡単。子供達のアジトまで案内してもらい【揚げオムレツのオムライス】を振る舞うことに。当然のことながらお腹を空かせていた子供達は感心するほどの食いっぷりでミニとはいえ100個もあった【揚げオムレツのオムライス】を12人足らずで食べ切った。


「す、すげぇうまかった…。」

「兄貴、こんな美味しいの食べて、俺ら死ぬのかな…。」

「もう悔いはねぇよ…。」


うん、すごい物騒です。やめよう?

その後スカウトし、仕事内容を伝えると二つ返事で了承してくれた。食べ物にも職にも滅多にありつけないから断る理由はないと。


「それで、君たちここに住んでるんだよね?」

「俺たちは生まれてすぐにここに捨てられたんだ。他に行くところなんてないからな。」

「そうか…。よし、ここに君たちの家と鶏を育てる養鶏所つくるか。こだまとリア、この辺の土地買い占めてくれないか?丁寧にな?」


サクッと瓦礫の石を利用した石造りの宿舎、広大な養鶏所を作ってもらい、土地の確保も黒い笑いを含んでこだまに頼むと、グッとサムズアップするこだま。「チーズインハンバーグ!」ちゃんと対価要求し勇んで街に戻っていった。流石こだま様だ。俺にはなんの力もないからしょうがない。走り去るこだまの背中を拝んでおいた。


「さて、子供達。育てる鶏探しに行こう!」

「お、おう…。」


子供達を連れて一路森へ。鶏はどうやって捕まえるの?


「こうするんだよ。」


こだまに出しておいてもらったバケツコンロをセッティング。フライパンにオリーブオイル、大量の乾燥コーンを入れて蓋をする。そう、【ポップコーン】だ。しばらく待つと【ポップコーン】が爆ぜる小気味良い音が鳴り響く。同時に香ばしい良い香りが立ち込めた。


「すげー良い匂い!」

「なんだそれ!白くて綿みたいだぞ!」

「これはな【ポップコーン】って言うんだ。これを拓けた部分に撒く。」


【ポップコーン】をばら撒くと子供達から悲しそうな声が上がる。


「大丈夫、みんなの分もあるから。みんなのはもっと美味いやつだぞ。」


残った【ポップコーン】の半分にはバターと塩を絡める。バターの豊潤な香りが広がると子供達が唾を飲み込む。


「こっちも美味いぞ!」


残りの【ポップコーン】はフライパンで砂糖を溶かし絡めていく。塩バター味とべっこう飴味だ。ばら撒いた辺りを観察しながら子供達とのんびりおやつタイムだ。


「塩バターすげーうめー!」

「私この甘いの好き!」

「うん、甘い方もパリパリしててうめー!」


好評で良かったが、皆んな大声は禁物だよ。そうこうしているうちにばら撒いた【ポップコーン】に鶏達が集まってきた。鶏はどんどん増えていき、いつの間にか一面鶏だらけになっていた。


「そろそろ頃合いだな。」


背中のボウガンを構え鶏の頭上を狙って矢を放つ。予め仕込んでおいた袋を撃ち抜くと巨大な網がバッと開いた。


「おぉ、デッケー網だ!」

「すげー鶏達を一気に捕まえちゃった!」


俺だってやるときはやるよ?おやつを食べ終わった頃には無事鶏の確保も完了した。【ポップコーン】で完全に心を掴んだのか、子供達にもみくちゃにされながら宿舎に戻ってみると丁度こだま達も帰ってきていた。リアがじっと見てたけど、俺は基本的には子供に好かれるタイプだぞ?どうだ!すごいだろ?

何故か【ポップコーン】がバレてまた大量に作らされたが、卵とクズ野菜集めのルートは無事確保できた。尚宿舎、養鶏所の土地を確保してもらったはずがこの地区全体の権利をもぎ取ったらしい。丁寧にお願いしたらくれたって。さいですか。だったら鶏の餌にもなるとうもろこし畑も作ろうかね。

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