第5話 パーティ任命式
2日後...
「これより以下の者達の、創造神討伐パーティー任命式を開式する!」
清々しい晴天に恵まれた休日。我が父、カイ国王の珍しく厳粛な声が城内の大広間に響き渡った。
国王が座る玉座の数段下には、跪いた僕とクレマとジンマの三人が居た。そう、『創造神討伐パーティー』の三人だ。
10数メートル程離れた場所から取り囲むように見ているのは、この城の護衛、使用人達、そして一部の国民等々、計200人位だろうか。城の外にも、城門を囲むように1000人規模の国民が集まっている。
一体なぜ、この場所にここまでの人間が集まっているのか?
それは、今日が正式なパーティ任命式だからだ。
しかも今年は、数十年に一度の王族の出立である。その歴史的な瞬間に立ち会いたい国民は、僕の姿を一目でも見ようと城に集まってくるのだ。
まぁ僕は注目されるのに慣れているのでどうってことないが、ジンマなんかは過度の緊張でぎこちない事この上ない。
と、そんな怯え切ったジンマを尻目に、我が父は宣言を始めた。
「それでは、前衛として任命する!我が城が誇る剣豪、ジンマ!前へ!」
国王が声を張る。指名されたジンマはビクリと上半身を伸ばし、生まれたての小鹿のような膝で立ち上がる。そしていつコケてもおかしくない足取りで、玉座への階段を一段、また一段と登る。
ついに国王と相対したジンマは、冷や汗をダラダラと流して直立不動になってしまった。
「我が城の顔として、恥じぬような活躍を所期している!」
「は、はひぃ!」
盛大に声を上ずらせたジンマが、場内の憫笑を誘う。
しかし、それでも我が父は笑うことなく、厳かな面持ちのままジンマの肩にパーティー任命の証である緋色のマントを掛けていた。...そして何か、ジンマに耳打ちしているのが見えた。
「ジンマ、真の目的を忘れるな」
「...もちろんです」
どんな言葉を二人が交わしたのかは、僕には聞こえなかった。しかし、ジンマの顔つきが変わった所を見ると、何か鼓舞されたのだろうか。
ゆっくりと元の姿勢に戻るジンマを横目に、国王が次を呼ぶ。
「続いて、後衛として任命する!アカデミーの主席であり、『巻戻』の掌力者、クレマ!前へ」
クレマが僕の右隣からむくりと立ち上がり、玉座への階段をダラダラと登り始めた。彼女は国王と対峙しても顔色一つ変えず、寝起きのような気だるさを顔面に引っ付けていた。
「新進気鋭である貴女の健闘を所期している!」
「うす」
(いや、「うす」て...)
クレマが驚くほどこの場に不適当な返事を繰り出す。だが、我が父は気にすることなくクレマにマントを授与し始めた。
それでもクレマの不適は繰り返される。
「カイ国王、ウチは結局後衛になるんスね」
マントの授与中に私語を使う人間が、果たして今まで何人居たのだろうか。
否、彼女が1人目であろう。
しかし、一方の父《国王》も問題である。何故かこの人は、クレマの私語に返答しているのだ。
「あぁ、確かに君なら前衛も務めることが可能だが、不本意だったかな?」
「いや、後衛の方が楽だし、全然いいっすよ。」
我ながら自分の父に呆れる。どう考えてもこの場で話す内容じゃないだろう。
マントを肩にかけたクレマは、のそのそと階段を下りて元の位置に戻っていった。
ふぅ...
一旦気を取り直そう。次はいよいよ僕の番だ。
「最後に、中衛として任命する!我が息子にして『入替』の掌力者、オーゴ!前へ!」
今までの二人の印象で今年のパーティの評価が決まろとしている今、この現状を変えるにはやはり僕がピシッと決めるしかない!
僕は滑らかに立ち上がると、着実に一歩一歩を踏みしめながら階段を上がっていった。
「我が国の代表として相応しい立ち振る舞いを所期している!」
王はそう言い切るとマントを手に取り、僕の肩に掛け始めた。
こうしてステンドガラス越しの神秘的な光を浴びながら、ルート国の国章があしらわれた真紅のマントを王から授与されると、まじまじと旅の始まりを実感する。
そんな感慨に耽っていた僕に向けて、マントをつけ終えた父がもう一度言葉を発した。
「オーゴよ、この旅には沢山の困難が付き纏うだろう。予期せぬ危険や試練が降りかかることもあるだろう。だが、この国の希望として必ず創造神の元に辿り着き、この世界に光をもたらしてくれ。」
僕の肩に手を置いた父は、王の威厳を感じる台詞を送ってくれた。
いつもは頼っていいのか分からないような父だが、この瞬間は一国を背負う王の大きさを見せてくれたような気がした。
「はい...!!」
ここまでの姿を見せて貰って、僕が期待に応えないわけにいかない。
婚約者探しの道すがら、必ずしも創造神を討伐することをこの胸に深く誓った。
僕が元の場所に戻ると、王は息を深く吸い、口を開く。
「これにて、以上の3名を正式に創造神討伐パーティに任命する!...閉式!!」
王の閉式の言葉を皮切りに、僕達に数百の拍手が浴びせられる。
全ての拍手が、僕達の為だけに送られているこの空間。
「悪くねえ気分だな」
右隣で膝をついているクレマが、横目でこちらを見て口角を上げてくる。
これだけの祝福が僕たちに浴びせられているのだ。僕はクレマの心情に同感せざるを得なかった。
「確かにね、ははっ」
ふと、天井のステンドガラスに描かれた天使が、僕達に笑いかけた気がした。
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