エピローグ
次の日、朝早くにドクターがハンナの家に行き、ロルフから妖精の石を受け取り、ハンナには詳しい事情は伏せ、館の修理を行うからしばらく館の仕事は休んでいいこと。今後のことはゼアビルド夫人からの連絡を待つことを伝えたらしい。
にいさまは(結局のこの呼び方がしっくりくるというので。エリアス様と呼んだらとても変な顔をされた)グライフとともに一度モーレンベークに戻っていった。
そういえばグライフの名前を聞いていなかったな。
今度教えてもらおう。
館の修理が始まりしばらくして、ゼアビルド夫人が戻ってきた。
最後に会った時よりも顔色が悪くなり、ちょっとだけ、やつれていた。
その日の夜、ゼアビルド夫人とドクターが長い時間話し合っていた。
私はどんな話をしているのかとても気になっていたけれど、二人とも何も言わなかったので私からは何も聞けなかった。
そして館の修理にある程度見通しが立ったある日。
私とドクターは館を出発した。
私が勉強したいと言い、リーラ様に会いたいと言ったから、ドクターがそれを両立できる方法を考えてくれたんだ。
それは、遺跡を調査する部署に入ること。
遺跡から発掘された魔術道具を扱う部署で、うっかり魔力を流すとどんな作用が起こるかわからない、妖精の石に似た魔術道具を研究している部署。
遺跡発掘もするし、発掘された魔術道具の研究、開発も行う。
研究員のほとんどが作業中に魔力遮断マントを使用して働くけれど、私は魔力ゼロだからその心配は全くない。どれほど高魔力の魔術具を触っても発動させられない私は、ある意味最も安全な研究員になれるだろう。
私の希望がある程度叶う職場があったのだ。
ただし、古代の魔術道具を扱うため、国家機密を扱う部署になる。
そこで働くためには信頼できる筋からの紹介と、王立学園でそれ相応の成績を収めなければならない。
王立学園は初等科、高等科を合わせて10年。さらに必要があれば専科に進むというので、この世界のイロハもわからない私にはかなりハードルの高い要求だけど。
「勉強がしたいんだろ?思いっきり勉強させてやる」
ドクターの大変意地の悪い笑顔に、私はひきつった笑いしか返せない。
ちょっと人生、早く決めすぎたかな……。
けれど私が望んだことだ。
目標高くいってみよう。
「これからどこに行くんですか?」
「モーレンベークに行く。そこで王立学園初等科に入学できるだけの知識を身につけなければ」
まずは王立学園初等科の入学を目指して。
「出発するぞ」
「はい!」




