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もう一度、勉強したい  作者: AKANE
クラウディア
10/29

館のこと

 知恵熱は一日で下がった。

 前の熱の時と違って食欲があることがよかったのかもしれない。

 水もたくさん飲んだ。そしてたくさん出した。

 おまるを使うことにとてもとてもとてもなじめないので、早くトイレに行けるように、という目標を立てた。

 ドクターが診察にきてくれて、お説教された。


「世の成り立ちを理解したほうが良いのは確かですが、今すぐというわけではありません。クラウディア様の体は未知なのです。無理をした場合何が起こるのか我々にも予想がつきません。なにか始めたかったら必ず誰かをそばにつけるように」


 丁寧な言葉なのにちくちくトゲを感じてしまう。

 ただ絵本をベッドに持ち込んでいることにはちょっと思うところがあったようで、文字を覚えようとしている、と言うとなんと家庭教師を名乗り出た。

 このドクターに勉強を教わるの?! イヤだ! と反射的に思ったけれど、もとから拒否など出来るはずもない。

 それからしばらくの間、診察と勉強がセットになった時間を設けられた。

 ものすごくスパルタ教育だった事は予想どうりだったと言っておく。

 発音が悪い、文字が汚いと散々だった。

 言葉もムチになるんだからね? クラウディアちゃんは5才だからね? 優しくしようね?


 おかげさまで大抵の文字を理解できるようになったんだけど。

 ついでに勉強用に紙とペンも手にはいった。

 ペンはなんと羽ペン。インクに浸して使うんだけどなれなくてすぐにインクの染みができちゃう。

 鉛筆と消しゴムはそもそも存在しないみたい。

 鉛筆はないんですかって聞いたら不思議な顔をされたので、ハンナの時と同じように曖昧な笑いでごまかしてみた。あったほうが便利なのになぁ。今後ぜひ誰かに発明してもらいたい。

 その合間をぬって体力作りも始めた。

 この部屋の中でしか生活していなかった体は驚くほどに体力がなかった。

 ベッドから窓際に行くだけでも最初は息が上がってしまう。部屋をぐるぐる何周もしたり、体操したりとこちらも頑張った。


 全てはトイレに行くために。


 もうおまるなんて使いたくない!

 1週間くらいそんな生活をしていたおかげか、今日やっと部屋の外のトイレを使っていいと許可が出たのだ!

 もちろん念のためにハンナもついてくる。中まで入ってきて使い方も教えてくれた。

 結果、大変、満足、できました。

 私ゾンビだけどご飯も食べれるしトイレも行くし、ちゃんと生きてるじゃん。



 帰りに回り道をして、館の中を案内してもらう。

 私の部屋は二階。

 この階には他にも客間やにいさまやかあさまのお部屋もあるみたい。

 一階には居間とか食堂とか、台所やメイドさんたちの部屋に管理人のゼアビルド夫人のお部屋もこの階にあるという。

 お風呂じゃないけど湯殿があるみたい。話を聞くかぎりサウナにちかいものらしいけどそれでもいい!

 明日元気ならお風呂に入れてもらう約束をした。

 今日は他にも二階の客間を一つ一つ見せてもらい、ベランダにも出させてもらって大満足の一日だった。


 ベランダから見る限りではこの館は私がいる本館と、馬小屋や騎獣の世話をする小屋(小屋と言っても一軒家二つ分はありそう)がL字型に建っていた。

 私が出してもらったベランダは玄関の真上で、そこから真っ直ぐに道が続いていて、その先にはダウパーの村が広がっていた。


 「ハンナはあそこに住んでいるの?」

 「そうですよ。右手の方にうちの農場と家があります」


 夏の終わりのきらきらした空が、青々とした草原を照らす。

 牧歌的な景色がどこまでも広がっていた。

 ここが私がこれから生きていく世界なんだ。

 これからどんな生活がまっているのか、期待で胸がわくわくした。

 外に出れるようになったら何をしよう。何が出来るんだろう。



 私は毎日が忙しくて忘れていた。

 クラウディアちゃんがもう何日も夢に出てこないことを。




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