25.裁きの鉄槌
戦利品を回収するために何度か地下20階と往復した。その中で宝物庫のさらに奥に、地面に魔法陣が描かれた隠し部屋が見つかった。おそらくこれがダンジョンの核なのではないかと考えられる。
もしやと思って地下10階のボス部屋も調べてみたら同じ設備が見つかった。2つあることから階層ごとに核があったのかもしれない。この情報は大きな助けになりそうだ。
地上に戻ると、魔法陣の情報や地下20階ボス討伐の話が一気に広まった。特に魔法陣の情報に国王がたいそうお喜びになったとか。近く王宮の魔術師達が調査しに行くことになっている。
戦勝祝賀会として数日間にわたって盛大に勝利を祝われた。勝利の証としてフィディアスの甲冑は冒険者ギルドの中央にどんと飾り付けられた。冒険者の死体も回収され弔われた。
俺は高位の神官へ昇格して、次期最高神官としての推薦も取り付ける。国のお偉いさんとも挨拶したりなんかして、ちょっとした英雄になった気分だ。
色々準備が整う。そろそろ神殿にお祈りしに行きたい気分になってきたぞ。事前に最高神官へ今回の勝利を伝えに行くことも話してある。
神殿にたどり着き、最高神官マイセンに会うと地下の部屋に案内された。地下とは思えない非常に広い部屋で、大きな柱が何本も立って天井を支えている。
どうぞと部屋の奥へ促されて進む。
その時だった!
背中から腹部にかけて腰の少し上を激しい痛みが走る。
その場に倒れて痛みの正体がクロスボウのボルトが突き刺さったことだというのを理解する。
マイセンは不適の笑いを浮かべて俺を見下ろした。
「いやぁ……驚きましたよ」
「まさかこんなにも早く他の神官達から推薦を得るとは」
「大人しくしておけばこうはならずに済んだものを……」
「マ……マイセン様……どうして?」
「ククク……わかりませんよねぇ?そうでしょう」
「ですが単純なことです。あなたは最高神官への挑戦権を得た」
「私は大した力を持っていない」
「強い奇跡の力を秘めているあなたなら決闘が行われればどちらが勝つかはわかっているのでしょう?」
「いつもならもっと早い段階で始末していたのですが……今回ばかりは少し疑われてしまうかもしれませんねぇ」
「まさか、今までもこんなことを?」
マイセンは真相を話し始めた。
今まで自分の立場を脅かすものがいれば挑戦権を得る前に暗殺していたこと。自分の立場を脅かす存在であるフィディアスもその一人だ。彼をずっと彼を暗殺しようと計画をしていた。だがフィディアスに毒を盛っても効果が無く、多数で襲撃をしても返り討ちにされた。他にも様々な方法で暗殺を試みたが全く効果が無かった。そんな時、アレスの存在へたどり着く。
自分の力で殺せないのなら、フィディアスのことをよく知っているアレスにやらせればいい。アレスの妹を人質にとって脅迫するようにした。当然自分の存在は悟られないように間に人を通して――
そしてその計画は成功しフィディアスは死んだ。後はアレスを始末するつもりだったが、都合がいいことにアレスも死亡した。そして今後も自分の立場が脅かすものがいれば暗殺し続ける。神殿で死体が見つかっても怪しまれることはない。
「ククク……我々の信仰は実力絶対主義!」
「これが私の新たな実力主義のやり方なのですよ!!」
「クッ……こんなことが許されるわけが……」
「他には?他にも何かやったのか?」
「他に……?」
もう全部言いつくしたな……と間があく。
次第にマイセンは冷や汗をかきながら青ざめていく。
「なぜだ……?なぜ死なない!!」
マイセンは後ずさりした。
俺はすっと立ち上がりボルトを引き抜いた。俺の奇跡の力を持ってすればこの程度ならば治療できる。奇跡の力で俺の身体はキラキラと薄く輝く。
「全ての罪は本人の口から語られた」
「もういいですよ!皆さん!」
俺がそう言うと柱の影からぞろぞろと衛兵や神官や仲間の冒険者達が姿を現した。すごい。事前には連絡していたけどちゃんと待機してくれていたのか不安になるくらい気配がしなかった。
衛兵の隊長が言う。
「全て聞かせてもらった。マイセン!観念しろ!」
「なに!これは一体?!」
マイセンはひどくうろたえている。
高位の神官が一歩前に出て言った。
「それでは最高神官をかけた決闘を執り行う!」
「マイセン!辞退してその立場を失うか、俺に負けて失うか選べ!!」
「クッ……だが私には奥の手がある!!」
呪いの力のことだ。エミリアやアンナに呪いの棘を刺した犯人はこいつだ。だがその力を隠蔽して隠していたことからわかる通り、弱いから隠すしかなかったのだ。そして呪いの力の性質はもう全て研究済みだ!
俺の女神様やアンナを苦しめたこと。アレスを追い詰めたこと。他にも数多な罪。今までの犯したその罪の裁きを受けよ!
「悪党め!裁きの鉄槌を受けろ!!!」
渾身の右ストレート!!
思いっきり顔面を殴る。マイセンの顔はぐしゃりと歪み遠くに吹き飛んでぐったりと倒れた。
衛兵が近づき、生きていることを確認すると捕縛して連行されていく。
仲間達から歓声が沸き上がる。
「やったぜ!フィーちゃん!」
「さすが私のおねーちゃん!」
「スカッとしたぜ!」
「新しい最高神官様。どうか我らをお導きください」
「オッケーオッケー!俺に任しといて!」
――こうして俺は復讐を果たした。
もっと俺がちゃんとしていたらアレスを救えたかもしれない。悲しい結果になってしまったけど、それでもアレスとの友情は今も続いている。
今後は女神様ことエミリアを助け、もちろんジョセフパパも! あとはアレスの妹のアンナと一緒に楽しく精一杯生きていくぞ! 冒険者ギルド経営もまだまだやらないことがいっぱい残っている! それから地下20階より下にはまだ階層が続いているしどうなっているか見てみたい!
俺の冒険者ライフはまだまだ続く!
おしまい
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