ごめんね
「聡~!何で来るかなぁ~?!」
聡が、二人に拉致られて山下家へやって来た。
「二人に誘われたから。」
「だからってホイホイついて来るな!!」
私はガックリした……。感動の再会が…………聡がこんなに近くにいるのに…………いるのに…………酔っぱらいがこんなにいる!!近くにいるのにぃいい~!!くそぉおおお~!もういい!引きこもる!!
自分の部屋のベッドの上でクッションに当たっていた。くそっ!くそっ!くそっ!
だいたい何なの!?会って話がしたいって言ったのに、もう会えないって言ったの誰だよ?私の涙を返せ!!腹立つ腹立つ腹立つ~!
「くそっ!」
「女子がクソとか言わない。」
どわぁ~幻聴まで聞こえて来た。
「うるさい!どうせ私はお姫様じゃないもん!」
「お姫様だよ。ミアは僕のお姫様だよ。」
え……?聡?
ドアの前には聡がいた。
「嘘…………幻覚?」
「触ってみる?」
「うん!」
そう言って私達は抱き合った。
「体調は?」
「大丈夫。」
「良かった……。今回の事、謝りに来たんだけど……」
みんな酔っぱらっててそれどころじゃないと思うけど……?
「だから何で来たよ?」
「いや、祐さんにキレられて、雅さんに泣かれて…………めんどくさくなって…………」
言ったよ……!言っちゃったよ!めんどくさいって……。
「それに…………」
会いたかった?私も会いたかった!
「イブの夜……吉村の家に行ったって聞いたんだけど?」
ひぃいいいいい~!!そっちか!聡の笑顔が怖い!怖すぎる!!なんかのオーラがにじみ出てる!
「いや、あの、それは、ドブ川に落ちたから、だから、その…………」
ドアの外で声がした。
「何?修羅場?ママにも見せて見せて!」
「イブの日に元彼のとこいたらしい!」
「マジか~それはないわ!」
ちょっと待て……?確実に覗かれてる!!私はドアを開けた。
「みんな、あっち行って!あっちで酔っぱらってて!」
「聡~飲もうぜ!」
「聡は未成年だから!!」
私達は荒れたリビングに連れて来られた。私達完全に酒の肴だ!!
隆兄とアケミさんはは酔いつぶれてソファーで寝ていた。
「聡、気をつけて!ジュースに何か混ぜられてるかも!」
「まあまあ、せっかく来たんだから、お茶じゃ何でしょ?」
「いや、お茶以外が何でしょ?」
私はわざわざ新しいペットボトルを開けて聡のコップに注いだ。
「私が注いだ物以外飲んじゃダメだからね?」
しばらく飲んでいると、みんなはあちこちで寝はじめて、聡と私だけが宴に残された。
「いーよね。大人は酒に逃げられて。」
「確かに。ミアがお酒飲んで自殺しそうになったのに、不謹慎ではあると思うけど……。」
「まあ、暗い雰囲気よりよっぽどマシだよ。…………そっか……私、お酒飲んだら死にたくなるのかな?やってみようかな?」
私がお酒の入ったコップを手に取ろうとすると、聡にその腕を掴まれた。聡は黙って首を降った。
その掴まれた腕にはまだ……包帯が巻かれていた。
「ごめん。ごめんね。聡。クリスマス、行けなくて……ごめんね。」
「いいよ。生きててくれたから。」
聡は声が震えていた。
「ずるい……。怒りも嫉妬も……ミアの顔を見ただけで、チャラになっちゃったよ。ミアを失う事に比べたら…………全部……なんて事ないよ。」
聡…………。
そして私達は…………強く抱き締め合った。




