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第1話 3畳の冷たい床と、小さな命
第一話:3畳の冷たい床と、小さな命
三畳一間のアパートの畳は、いつだって湿気と古畳特有の埃っぽい匂いがしていた。
大学三年か四年、もう自分の学年すら曖昧になるほど疲れ切っていた。
就職活動の書類選考や面接には落ち続け、生活費と学費を稼ぐためにスーパーの夜間バイトを限界まで詰める日々。部屋に帰れば、電気も点けずにただ冷たい敷布団に倒れ込むだけの毎日だった。
そんな荒みきった生活の中で、唯一の救いであり、同時に胸を刺す存在だったのが、豆柴の「ハル」だった。
知り合いから譲り受けた赤柴の女の子。
本来ならピンと立った三角耳とコロコロとした体が特徴の豆柴だが、
ハルはいつも部屋の隅で、小さな体を丸めて俺を見ていた。
ロクに上等なフードも買ってやれず、狭い部屋で散歩にもろくに行けない。
俺が疲れ果ててため息をつくたび、ハルは心配そうにトコトコと寄ってきて、冷たい鼻先を俺の膝に押し付けてきた。
「ごめんな、ハル。内定が出たら、もっと広い部屋に引っ越して、毎日大きな公園に散歩行こうな」
叶うかもわからない約束を吐き捨てるように呟くのが、俺の毎晩の日課だった。




