04 約束の12月
ご覧いただきありがとうございます、文月 律です。第2話で親友の恐ろしい正体を知ってしまった主人公。オロオロしているうちに、物語はいよいよ「12月の合併初日」へと一気に加速します。男子校の教室に降臨した、美しくも冷徹なお嬢様。彼女の登場で、夢見たラブコメは完全に崩壊し――?それでは、第四章をどうぞお楽しみください!
親友の瑛斗が、この学校の頂点に君臨する巨大財閥の跡取り息子。
その衝撃の事実を知ってしまったあの日から、俺の日常の歯車は完全に狂い始めた。
翌日からも、瑛斗はいつも通り「よぉ、翔琉」と、気のいい陽キャの笑顔で話しかけてきた。
だが、俺にはもう、その笑顔の裏に何か恐ろしい計画が隠されているようにしか見えなかったのだ。
問い詰める勇気もないまま、腫れ物に触るように瑛斗と接する日々。
そうして、俺が一人でオロオロとパニックになっているうちに、時間は残酷なまでのスピードで流れていった。
――そして、約束の十二月がやってくる。
それは、男子校の歴史が幕を閉じ、「桜咲女子高等学校」との完全合併が果たされる運命の日。
その日の朝、俺たちの2-Cの教室は、まるで別世界に変貌していた。
「おい、マジかよ……」
「女子の匂いがする……本物の女子だ……」
周りの医者の息子たちが、かつてないほどソワソワと挙動不審になっている。
それもそのはず。教室の右半分の座席には、凛とした美しい制服に身を包んだ、都内随一のお嬢様進学校の女子生徒たちがズラリと座っていたからだ。
男子だらけだったむさ苦しい空間に、華やかな花が咲いたかのような圧倒的な違和感。
糖度九十九パーセントの恋を夢見ていた俺も、さすがにこの空間のプレッシャーに息を呑む。
そんな中、行われた臨時の席替え。
「えっと、俺の席は……ここか」
廊下側の、後ろから二番目。
自分の指定された席に座り、ふと右隣の席に目を向けた瞬間、俺の心臓がドクンと跳ね上がった。
そこに座っていたのは、ひときわ強いオーラを放つ美少女だった。
黒く長い髪をサラリとなびかせ、背筋をピンと伸ばして、まるでお人形のように上品に机に向かっている。
どこかで見覚えがあると思ったら、桜咲女子の『元・生徒会長』として有名な、超お嬢様――桜咲 楓果だった。
俺が呆然と見つめてしまっていることに気づいたのか、彼女がこちらを振り向いた。
「はじめまして。今日からお隣ね、よろしくね?」
楓果は、まるでお日様のように温かく、人当たりの良い完璧な笑顔を浮かべた。
そのあまりの可愛らしさと聖女のような優しさに、周りの男子たちが一瞬でハートを射抜かれ、鼻の下を伸ばしているのがわかる。
だが、俺の心臓が止まりそうになったのは、その直後だった。
彼女は周囲の男子に気づかれないよう、完璧な笑顔を張り付かせたまま、俺にしか聞こえないほどの低い、冷徹な声で囁いてきたのだ。
「……やっと見つけたわ、赤坂翔琉くん。あなたが2-Eの瀬戸瑛斗くんと、いつも一緒にいる男の子ね?」
「え……?」
なぜ、彼女の口から瑛斗の名前が出てくるんだ。
笑顔と声の冷たさのギャップに俺が固まっていると、彼女はさらに小声で、氷のような言葉を突きつけてくる。
「勘違いしないで。私は彼を、あの瀬戸財閥の冷酷な跡取り息子を裏から引きずり下ろすために、このくだらない合併を受け入れたのよ」
その綺麗な瞳の奥に、激しい復讐の炎が揺らめいているのが見えた。
「で、あなたは彼の何なの? ただの一般人のくせに、あの男の『お気に入り』みたいだけど……まさか、あの日みたいに、また何もできずに逃げ出すのかしら?」
あの日――。
その言葉が、中学時代のあの夕方の赤信号と、届かなかった俺の手の記憶を一気に呼び覚ます。
その瞬間、俺はすべてを察した。
楽しみにしていたはずのラノベのような甘々新生活は、初日にして完全に崩壊した。
表向きは人当たりの良い天使。けれど裏では復讐を誓う、過去の初恋の少女(楓果)。
そして、すべてを裏で操るバケモノの親友(瑛斗)。
その危険すぎる二人の戦いに、俺は一般人代表として、ど真ん中から巻き込まれることになってしまった。
お読みいただきありがとうございました!ついに12月の合併初日! 翔琉の隣の席に座ったのは、瑛斗の正体を知り、何かを警戒している桜咲女子の冷徹な元・生徒会長でした。「ただの一般人のくせに」と言われてしまった翔琉ですが、これから彼女とどんな風に関わっていくのでしょうか……!?ここからさらに物語が激動していきます!少しでも「先が気になる!」「ハラハラして面白い!」と思ってくださったら、ぜひ【ブックマーク】や、下にある【☆☆☆☆☆(☆評価)】で応援していただけると、執筆パワーがみなぎります!それでは、また次回の話でお会いしましょう!




