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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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58 決戦準備

 カール王子を訪ねると、そこでは軍議が開かれており、紛糾していた。


「とにかく王都を奪還すべきです」

「まずは、こちらで防御を固め、反撃の機会を窺うべきだ」


 そんな時、国王陛下が私たちに気付いたようで、歩み寄って来た。


「カールから話は聞いている。アルベール殿下、礼を言う」

「お気になさるな。こちらも他人事ではいられない事情がある」


 挨拶を交わした後に詳しい状況を説明してくれた。

 国王陛下が言う。


「恥ずかしい話、完全に油断していたのだ・・・」


 ホーリスタ王国としては、交渉団が襲い掛かって来るなど夢にも思わなかったそうだ。

 普通はそうだろう。そんなことをすれば、もうその国とは誰も交渉してくれなくなる。歴史を遡れば、使者を切り殺して、相手に送り返したことくらいはあったらしいが、こんなことは前代未聞だという。


「過ぎたことを悔やんでも仕方がない。問題は今後どうするかだ。我としては一刻も早く王都を奪還したい気持ちもある。しかし、それで多くの犠牲が出たのでは本末転倒だ。総力戦であれば負けることはないであろう。しかし、各地に散らばる諸侯の中には王都陥落を知らない者も多い。各個撃破されては・・・」


 国王陛下が悲痛な声で言う。


「国王陛下、各諸侯と連絡が取れればいいのですか?」

「それが理想だが、そんなことができるのか?」

「いい物を持ってきましたからね」


 アルベールが差し出したのは、ソフィア王女が開発した通信の魔道具だった。


「これがあれば、各諸侯と連絡が取れますよ」

「かたじけない。しかし、街道は既に封鎖されている。この魔道具を各諸侯に届けるのは命掛けの任務となるな・・・」

「それも心配いりません。対策も考えてあります」


 アルベールは通信の魔道具を手に取り、何やら通話を始めた。


「ゴブリンライダー隊を大至急派遣してくれ。それと姉上もだ」


 しばらくして、ゴブキチとゴブコが率いるゴブリンライダー隊とソフィア王女がやって来た。

 アルベールが説明を始める。


「この者たちは機動力に優れていて、敵の包囲網を難なく突破できるでしょう。それに姉上がいれば、新たな転移スポットも設置可能です」


「何から何まですまない。こちらから案内役を出さねばならんな・・・」


 その時、大きな声がした。


「私にやらせてください!!」


 そう言ったのは、ハーフリングの男性だ。

 少し見覚えがある。聞いたところによると、優秀な文官らしい。そういえば・・・


「お久しぶりです、エクレア先生。あれからランカスター転職神殿で転職し、私は文官に採用されました。今こそ、採用してくれたこの国とランカスター転職神殿に恩を返す時です。危険は承知の上です。是非私に!!」


 これを皮切りに多くの者が志願した。

 ほとんどがランカスター転職神殿の転職者だったのは、ちょっと嬉しい。


「では早速頼む。武運を祈る」



 ★★★


 すぐに彼らは出発した。

 途中まで、集団で転移し、そこからは別行動を取るようだった。その辺の指揮はゴブコとハーフリングの文官が執っていた。


 3日後、有力な諸侯には、すべて通信の魔道具が行き渡ったので、軍議が開かれた。

 参加者のほとんどが、通信の魔道具を介した遠隔地からの参加だったのは、不思議な感覚だった。それは遠隔で参加している者たちも同じ感じだったようで、全く緊張感がなかった。

 参加者の一人が声を掛けてくる。


「エクレア先生、久しぶり!!俺は土魔法を生かして、領主自ら農作業や魔物退治をして、頑張っているんだ。是非ウチの領に遊びに来てくれよ」

「それを言うなら私の領にも来てもらいたいわ。こっちは工芸品を中心に・・・」

「いや、俺の領のほうが凄いぞ・・・」


 なんだか、同窓会のようだった。

 カール王子が一喝する。


「お前ら!!国の危機なんだぞ。緊張感を持て。それに功績で言えば、勇者の僕が一番だ!!」


 参加者は少し、文句を言った後、黙り込んだ。

 国王陛下が話始める。


「このような事態になったことをまずは詫びる。それで今後だが・・・」



 ★★★


 作戦は、一言で言えば相手の補給路を断つというものだった。

 大量の斥候部隊員を派遣して、情報収集に務め、各諸侯が各個撃破されないような対策も取った。多くの魔族部隊を派遣したことは言うまでもない。

 機動力もゴブリンライダー隊に勝る部隊を相手は持っていないので、情報戦では圧倒的に勝利していた。


 アルベールが言う。


「向こうの戦術は、無理に王都奪還をしてきたところを叩くか、諸侯を各個撃破しながら足場を固めるくらいしか考えていないだろう。両方とも無理となると相手は困るだろうな」


 斥候部隊のお蔭で、相手の行動は筒抜けだ。

 各個撃破しに来たつもりの相手を待ち伏せし、逆に包囲殲滅したことは一度や二度ではない。


 アルベールが言う。


「こうなると、相手は一か八かランカスター転職神殿支部に攻め入ってくるだろうな。それはそうと、獣人の里の砦も心配だ。一度見に行ってみよう」

「はい」


 私とアルベールは、獣人の里の砦に向かった。

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