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実家の転職神殿を追放されたけど、魔族領で大聖女をやっています  作者: 楊楊
最終章

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57/69

57 侵攻

 悪い事は続くものだ。


 今度は、コボルトのコボルさんが、慌てた様子でアルベールに報告に来た。


「アバレウス帝国の大部隊が、獣人の里との境界沿いに集結しています。後5日もすれば、砦に到着します。現在、砦にいる兵力だけでは、撃退は無理です」


 アルベールが言う。


「そう来たか・・・まずは、ホープタウンの有力者を招集しよう。それに父上にも報告を。コボルトたちは、引き続き情報収集に努めてくれ」


 落ち着いて指示するアルベールを見て、少し頼もしく思った。

 カール王子も見習ってほしい。


「カール先輩は一度、領に帰ったほうがいい。転職神殿支部も心配だから、その辺をお願いする」

「任せろ。ザバス、すぐに帰るぞ」



 ★★★


 すぐに緊急会議が開かれた。オーガやエルフ、ドワーフの代表者も続々と集結する。

 説明をすると皆一様に驚いていた。

 オーガの族長オーガルが言う。


「なぜ急に?勝つにしろ、負けるにしろ、大損害を被ることになるのに・・・理解できません」


 アルベールが答える。


「理由までは分からん。我らが転職神殿本部を新たに開設したことが大きいのかもしれんな。それは置いておいて、どう対処するかだ。端的に言うと、ホーリスタ王国を支援するかどうかだ。そうなると、獣人の里付近とホーリスタ王国内との二つの戦線を抱えることになるのだが・・・」


 ここでコボルさんが言った。


「ホーリスタ王国には、ランカスター転職神殿支部がありますよね?私たちは、転職神殿には本当にお世話になっています。厳しい状況になるのは分かりますが、ホーリスタ王国を支援してほしいと思っています」


 ただでさえ、自分たちの里が攻められようとしているときに、転職神殿の心配をしてくれることは有難い。

 オーガラも続く。


「我ら、誇り高いオーガは、受けた恩は返す。ホーリスタ王国を支援しよう」


 これにはタイガードやライオスも続いた。


 アルベールが言う。


「だったら、ホーリスタ王国を支援しよう。次は、部隊をどのように編成するかだが・・・」


 言い掛けたところで、ソフィア王女が部屋に入って来た。


「特に意見はないけど、いい物を持ってきたわよ。適性価格で買ってくれるなら、かなりの数は用意できるわ」


 ソフィア王女が持ってきたのは、水晶玉のような魔道具だった。


「これは通信の魔道具よ。離れた場所でも会話ができるの。こういった戦闘には役に立つでしょ?」

「姉上、それが本当なら、戦術の根底が覆りますよ」

「本当よ。実験も成功しているからね。そうよね?ギルマス?」


 声を掛けられた商業ギルドのギルマスは、ばつが悪そうにしている。

 そして、意を決して話始めた。


「じ、実は・・・もう既に・・・」


 ギルマスによると、既に実用化しているという。

 ただ、少し儲けを独占しようとして、本格的に発表するのを、ソフィア王女に待ってもらっていたようだ。というのも、各地にギルド員を派遣して、相場状況をチェックする。そして、高く売れそうな物を見付けたら、通信の魔道具で報告してくるようにしていたそうだ。これなら、他の商会を出し抜くことも可能だ。


 これには、冒険者ギルドのギルマスが激怒する。


「だったら、危険な任務に就く冒険者に持たせればいいんじゃないか?生存率も上がるだろうしな。それをお前は・・・冒険者の命と金とどっちが大事なんだ?」

「そ、それは・・・」


 アルベールが仲裁に入る。


「この優秀な魔道具は、商業ギルドの提供でいいのだな?そして今までは、実験に付き合ってくれていたということだな?」


 暗に今回のことは目を瞑るから、魔道具代は出せと言っている。

 察したギルマスは言う。


「もちろんですよ。最大限商業ギルドは、協力させていただきます」



 ここからは、戦力分析に移る。

 こちらは数こそ少ないが、一騎当千の実力者が大勢いる。また、転移スポットと通信の魔道具という優位性がある。それにこれを併用すれば、諜報力も相手を圧倒できる。


「最優先は、獣人の里の砦の防衛だ。ホーリスタ王国への支援は、余剰人員で行うことを考えている。俺はこれからホーリスタ王国へ向かい、情報を集めてくる。その間の部隊編成は・・・」


「儂がやりますじゃ!!最後のお務めとしてね」


 声を上げたのは、長年ゴブリンの里の村長をしていたゴブリンコマンダーのゴブールだ。最近は村長職を退き、後進の育成に当たっていたのだが、魔王国の危機に居ても立っても居られないようだった。


「ではゴブール殿、よろしく頼む。エクレア殿、一緒に来てくれるか?」

「もちろんです」


 会議終了後、私とアルベールは、転移スポットでランカスター転職神殿支部に向かった。

 到着すると、すぐにショコラに声を掛けられた。


「な、なぜこちらに?」

「アルベールさんが、全面的にホーリスタ王国を支援することを決めてくれたからよ。その情報収集にね。それに支援物資も持って来たからね」

「すぐにカール王子にお取次ぎ致します」


 私とアルベールは、カール王子の元に案内された。

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