クマ嵐 ②
熊はそのでかい腕を振り下ろしてきた。私は刀で受け止めてみるが重い。受け流すことで精いっぱいだ。やはり動物は違う。人間とは違い力が倍以上だ。
私は熊のおなかを切りつける。熊には多少ダメージが入ってはいるがぴんぴんしているようだ。
「いいぞ、タフネスさ、力強さ、すべて合格だ! 私の糧となるにはこれ以上のないほど豪勢!」
「グガァ!」
熊がもう一度爪を振り下ろした。
さっきとは威力が違いそうだ。これはまともに受けることはやめたほうがいい。私の勘がそうささやいている。
なので私はその攻撃を躱してみる。熊の腕は地面に当たり地面がえぐれる。
「想像以上だな」
「グラァ!」
熊は私を殺そうとこちらに走ってくる。
私は木を駆け上り飛び降り背中に乗った。私は首元に刀を突き刺す。首はどの動物においても急所だ。
刀を刺すと熊は痛そうに暴れる。私は危うく振り落とされそうになったので刀を引っこ抜き地面に降りた。
熊はこちらをにらみつける。
「さて次は……」
私が次の手を考えていると熊は私に近づき立ち上がる。
立ち上がる行為はきっと威嚇なのだろう。自分をものすごく大きく見せて威圧をかける。でかいというのはそれだけでも脅威になりうるからな。
だがしかし、そんなんでびびっていては剣士の名が廃る。本物の威圧というのを見せてやる。
「はああああああああああ!!!!」
私が叫び声をあげると熊は一瞬びくっとびびっていた。
《スキル:大威圧 を取得しました》
スキルが手に入った。それはまあいいとして。
びびっている隙を逃すわけがない。戦場じゃあ、ビビったら負けだ。剣道でも、なんの試合でも。恐怖を感じるのは負けにつながる。
「そんなにびびっていたら貴様の負けだ、熊」
私は刀を胸のあたりに突き刺した。
狙うは心臓、ずぶずぶと刀が胴体に沈んでいく。熊は叫び声をあげる。私は全身全霊を込めて刀を突き刺している。熊はやめさせようとこちらを殴ろうとしてくるが、そのまま私のほうに倒れてきたのだった。
ぶくぶくと口から泡を吹いている。白目をむいており、死んではいないようだが気絶しているようだ。
ふむ、体力そこまで削れてはいないようにも見える。頭に表示されている黄色いゲージみたいなのが多分体力だろう。それが半分くらいしか削れていない。
「まだここまでやって体力がそんなに削れていないのか。修行不足だ」
私は刀を引き抜く。とりあえずもうやめておこう。私の体力の消耗も激しい。引き分けとして処理してやろう。
私は熊に背を向ける。すると、背後に気配を感じた。私は振り向くと、熊が腕を振り下ろそうとしていたのだった。
「なっ、気絶していたはずでは」
「ガル……」
私は顔を引っかかれる。だがしかし、ダメージは受けていない。
《マーキングを付けられました》
《嵐のキングヒグマに勝利するとキングヒグマを使役できるようになります》
「えっ?」
《キングヒグマが素材を落としていってくれました》
そういう幻聴が聞こえ宝箱が二個出現する。
開いてみるとキングヒグマの剛毛、キングヒグマの大爪だった。
「グァア」
キングヒグマは四足歩行に戻りこちらを見て鳴く。それはまた強くなって戦いに来いというような鳴き声だった。
「私の勝ち、でいいか?」
「グア」
勝ったことにしておいてやるという言葉が聞こえるようだ。
とりあえず、勝ち。私は、やはり強くなっている。