無謀な勝負をした結果
私はキングヒグマとの勝負に勝ったことで少し舞い上がっていた。
拠点に戻ると三人がすでにおり、いつ私が死んで復活するかを待っているようだ。信頼されていなかったのか。
私は背後から声をかける。
「よう」
「うっひゃあ!?」
三人が驚いたようにこちらを見た。
「な、なな、なんやその顔の傷!」
と、私を指さして疑問をぶつけてきた。
顔の傷? ああ、できているのか。これはあの熊のマーキングだったか。傷をつけることで自分のだと言ってるんだな。
私はそう説明してみた。
「え、なに? じゃあ認められたん? 勝ったん?」
「ぎりぎりだった」
「ぎりぎりだった、っていう感想じゃすまされないでしょ……」
そうなのか。
だがしかし、ぎりぎりだったっていうのもこりゃまたすごいだろう。人間は銃を使わなくちゃ熊には勝てない。私は刀で勝ったのだ。
「これ素材だ。熊が落としてくれた」
「うわぁ……。なんで手に入るのか。たしかにこれは金にはなるだろうが……」
「私の働きは十分だっただろう?」
「十分どころかもう役割を果たしすぎてるというか」
いやぁ、嬉しい。
熊との勝負は滾ったなぁ。楽しかったなぁ。
「うちらがあんたが死ぬの待っとったのバカみたいやん……。そんな低レベルでなんで勝ってしまうん……」
キャトラがそう嘆いていた。
私は素材をミロクに渡す。ミロクはそれを受け取り、冒険者ギルドに行ってくると告げて拠点から出て行った。
キャトラとリュウは私を見てくる。
「その、すまんかったなぁ。うち信頼してなかったわけじゃなかったんやけどどうも勝てるとは思わんくて死ぬのを待っとった」
「僕も。その、本当に勝てるとは思わなくてさ」
「気にするな。無謀だったって言うのは私も承知の上でやっている。ただ私のつまらないプライドのためだけに勝負をしたんだ。謝られる謂れはないさ」
私は逃げる形での負けは取りたくない。
敗走するのはみっともない。戦わずして負けるより戦って負けるほうが私にはいい。敗北したことはない。そのせいもあるのだろう。私は人一倍負けず嫌いだ。
だから無謀でも挑むのみよ。私のちっぽけなプライドで。
「だから謝らなくていい。それよりものすごくレベルが上がったぞ! 38レベルだ!」
「もううちらの倍やんけ」
「熊という大物に勝ったのが一番だったな。実にいい勝負だった」
こいつらが追いつくまではしばらくレベル上げはしなくていいだろう。
私たちが話しているとミロクが帰ってきたようだ。ミロクが帰ってくるなり私に紙を渡してくる。解雇状だろうかと思って紙をのぞき込むと私の冒険者ランクをFからCにあげるというものだった。まさかの二階級特進? 私は戦死してないぞ。
「なんでいきなりCランク?」
「あの熊と互角の勝負をする奴をFランクにしておくわけにはいかない、だとよ。あの熊はAランクの魔物らしいんだがいきなりAにするのもダメだということでCだ」
「そうか……」
運がいいな。SSランクへの道が少し楽になった。
だがここからだ。気を引き締めなくてはな。勝って兜の緒を締めよ。勝負はいつだって真剣だ。
「うちらも負けてられんなぁ。ちょっとうち依頼受けてくるわ」
「僕も」
といって二人が出ていく。
「俺もすまないが依頼を受けに行く。ミツネはどうする?」
「私は……王都を歩いてみるさ。まだ全体把握してるわけではないからな」
「わかった」




