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コケて立ち上がったら伊能忠敬でした。歴史に名を残す人は頭のネジが外れてるみたいです。もう俺は歩けません  作者: まろじろう
第一次測量 蝦夷地

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61/85

第61話「数字は線となり、俺の背中を押す」

朝。


俺。


目を覚ます。


     ◇


天井。


     ◇


江戸。


     ◇


家。


     ◇


もう。


驚かない。


     ◇


俺。


起きる。


     ◇


着替える。


     ◇


そして。


見る。


     ◇


地図。


     ◇


俺たちが。


作った。


地図。


     ◇


「…………」


     ◇


今日。


これを。


持っていく。


     ◇


最後。


一%。


     ◇


【第一次測量】


【測量進捗率:99%】


     ◇


九十九。


     ◇


何度。


見ても。


九十九。


     ◇


でも。


     ◇


今日で。


終わる。


     ◇


たぶん。


     ◇


いや。


     ◇


終わらせる。


     ◇


俺。


地図を。


持つ。


     ◇


「行こう」


     ◇


門倉隼太。


頷く。


     ◇


「はい」


     ◇


     ◇


歩く。


     ◇


久しぶりに。


江戸を。


歩く。


     ◇


でも。


     ◇


測らない。


     ◇


歩数。


数えない。


     ◇


方角。


測らない。


     ◇


ただ。


歩く。


     ◇


「…………」


     ◇


楽。


     ◇


普通に。


歩くって。


こんなに。


楽なんだ。


     ◇


俺。


ちょっと。


感動。


     ◇


その時。


思い出す。


     ◇


今日。


会う。


人。


     ◇


「門倉」


「はい」


     ◇


「今日、高橋先生もいるんだよね?」


     ◇


「はい」


     ◇


高橋至時。


     ◇


その名前は。


門倉から。


聞いた。


     ◇


伊能忠敬の。


師匠。


     ◇


天文方。


     ◇


俺が。


測量へ。


向かうことになった。


     ◇


大きな。


きっかけを。


作った人。


     ◇


らしい。


     ◇


「…………」


     ◇


俺には。


実感。


ない。


     ◇


当然。


     ◇


俺。


伊能忠敬じゃ。


ない。


     ◇


向こうは。


俺を。


知ってる。


     ◇


俺は。


向こうを。


ほとんど。


知らない。


     ◇


「門倉」


「はい」


     ◇


「高橋先生って、どんな人?」


     ◇


門倉。


少し。


考える。


     ◇


「大変優れたお方でございます」


     ◇


「それは聞いた」


     ◇


「先生が天文を学ばれているお方でもございます」


     ◇


「それも聞いた」


     ◇


違う。


     ◇


もっと。


こう。


     ◇


怖い?


     ◇


怒る?


     ◇


細かい?


     ◇


そういう。


情報。


     ◇


「まあ」


     ◇


俺。


前を見る。


     ◇


「会えば分かるか」


     ◇


今さら。


逃げられない。


     ◇


【99%】


     ◇


こいつ。


いるし。


     ◇


行く。


     ◇


最後の。


一%。


     ◇


俺たちの。


旅を。


見せに。


     ◇


     ◇


着く。


     ◇


俺。


地図を。


持つ。


     ◇


少し。


緊張。


     ◇


蝦夷地。


歩くより。


緊張。


     ◇


いや。


     ◇


それは。


言い過ぎ。


     ◇


中へ。


     ◇


いる。


     ◇


幕府側の。


役人。


     ◇


そして。


     ◇


高橋至時。


     ◇


「…………」


     ◇


この人が。


     ◇


伊能忠敬の。


師匠。


     ◇


俺。


頭を。


下げる。


     ◇


「伊能忠敬にございます」


     ◇


変な。


感じ。


     ◇


今さら。


だけど。


     ◇


俺。


伊能忠敬。


なんだよな。


     ◇


地図を。


広げる。


     ◇


記録も。


出す。


     ◇


役人。


見る。


     ◇


至時も。


見る。


     ◇


静か。


     ◇


「…………」


     ◇


長い。


     ◇


何か。


言って。


     ◇


怖い。


     ◇


俺。


じっと。


待つ。


     ◇


役人の。


指。


     ◇


地図を。


なぞる。


     ◇


俺たちが。


歩いた。


蝦夷地。


     ◇


西別。


     ◇


厚岸。


     ◇


函館。


     ◇


松前。


     ◇


全部。


ここに。


ある。


     ◇


やがて。


     ◇


役人。


顔を。


上げる。


     ◇


「伊能忠敬」


     ◇


「はい」


     ◇


「大儀であった」


     ◇


「…………」


     ◇


胸。


何か。


入る。


     ◇


嬉しい。


     ◇


たった。


一言。


     ◇


なのに。


     ◇


嬉しい。


     ◇


「そなたより最初に申し出があった折には」


     ◇


役人。


地図を見る。


     ◇


「正直に申せば、いささか荒唐無稽と思えるところもあった」


     ◇


「…………」


     ◇


俺。


ちょっと。


頷きそうに。


なる。


     ◇


分かる。


     ◇


俺も。


思った。


     ◇


五十五歳。


     ◇


蝦夷地まで。


歩く。


     ◇


測る。


     ◇


地図。


作る。


     ◇


普通に。


考えたら。


     ◇


無茶。


     ◇


「されど」


     ◇


役人の。


指。


止まる。


     ◇


「そなたは、それを形にした」


     ◇


俺。


地図を見る。


     ◇


形。


     ◇


そう。


     ◇


形に。


なった。


     ◇


毎日。


測った。


     ◇


数字。


     ◇


一つ。


     ◇


また。


一つ。


     ◇


それが。


今。


     ◇


地図に。


なってる。


     ◇


「ここに結実した地図」


     ◇


役人。


俺を見る。


     ◇


「誠に見事である」


     ◇


「…………」


     ◇


俺。


何も。


言えない。


     ◇


嬉しい。


     ◇


素直に。


     ◇


嬉しい。


     ◇


俺たちが。


やったこと。


     ◇


認めて。


もらえた。


     ◇


でも。


     ◇


役人。


もう一度。


地図を見る。


     ◇


「一つ、聞きたい」


     ◇


「はい」


     ◇


「なぜ、ここまでの精度を求めた?」


     ◇


「…………」


     ◇


俺。


止まる。


     ◇


「蝦夷地の地理を知る。それだけであれば、ここまで細かく測る必要があったのか」


     ◇


「…………」


     ◇


分からない。


     ◇


俺。


伊能忠敬が。


何を。


考えていたのか。


     ◇


知らない。


     ◇


俺。


この人じゃ。


ない。


     ◇


だから。


     ◇


答え。


分からない。


     ◇


俺。


横を見る。


     ◇


高橋至時。


     ◇


この人なら。


     ◇


知ってる?


     ◇


伊能忠敬が。


何を。


考えて。


いたのか。


     ◇


でも。


     ◇


至時。


何も。


言わない。


     ◇


ただ。


俺を。


見ている。


     ◇


「…………」


     ◇


俺が。


答えるの?


     ◇


いや。


     ◇


そうか。


     ◇


俺たちが。


歩いたんだ。


     ◇


俺たちが。


測った。


     ◇


だったら。


     ◇


俺が。


答える。


     ◇


俺。


地図を見る。


     ◇


そして。


     ◇


口。


開く。


     ◇


「最初は」


     ◇


声。


少し。


震える。


     ◇


「無理だと思いました」


     ◇


役人。


俺を見る。


     ◇


「こんな距離を歩いて、測って、地図にする」


     ◇


俺。


少し。


笑う。


     ◇


「できるわけがないと、思いました」


     ◇


本当。


     ◇


何回。


思った?


     ◇


歩きたくない。


     ◇


帰りたい。


     ◇


まだ?


     ◇


何で。


俺が。


     ◇


何度も。


思った。


     ◇


「でも」


     ◇


俺。


地図に。


指を置く。


     ◇


「歩くと、それは数字になりました」


     ◇


一歩。


     ◇


また。


一歩。


     ◇


測る。


     ◇


記録する。


     ◇


数字。


     ◇


「その数字が」


     ◇


指を。


動かす。


     ◇


「こうして、線になりました」


     ◇


俺たちが。


歩いた。


線。


     ◇


「…………」


     ◇


見る。


     ◇


すると。


     ◇


浮かぶ。


     ◇


景色。


     ◇


違う。


     ◇


人。


     ◇


「この線を見ると」


     ◇


俺。


ゆっくり。


言う。


     ◇


「助けてくれた人たちの顔が浮かぶんです」


     ◇


道を。


教えてくれた。


人。


     ◇


食べ物を。


分けてくれた。


人。


     ◇


泊めてくれた。


人。


     ◇


送り出して。


くれた。


人。


     ◇


そして。


     ◇


一緒に。


歩いた。


みんな。


     ◇


「私たちだけでは、ここまで来られませんでした」


     ◇


俺。


地図を見る。


     ◇


ただの。


線。


     ◇


でも。


     ◇


俺には。


違う。


     ◇


この線の。


向こう。


     ◇


人が。


いる。


     ◇


「だから」


     ◇


俺。


顔を。


上げる。


     ◇


「私たちがまとめたこの地図で」


     ◇


息。


吸う。


     ◇


「助けてくれた人たちが、少しでも笑顔になれば」


     ◇


俺。


役人を見る。


     ◇


「私たちの旅は、成功です」


     ◇


静か。


     ◇


誰も。


何も。


言わない。


     ◇


俺。


最後。


頭を。


下げる。


     ◇


「その結果が」


     ◇


「幕府のお役に立てるのであれば」


     ◇


「これ以上、嬉しいことはありません」


     ◇


沈黙。


     ◇


「…………」


     ◇


俺。


急に。


不安。


     ◇


言い過ぎた?


     ◇


変だった?


     ◇


もっと。


難しいこと。


言うべきだった?


     ◇


俺。


顔を。


上げる。


     ◇


高橋至時。


     ◇


俺を。


見ている。


     ◇


そして。


     ◇


ほんの少し。


笑った。


     ◇


「…………」


     ◇


何で。


だろう。


     ◇


それだけで。


少し。


安心。


した。


     ◇


役人。


地図を見る。


     ◇


長く。


見る。


     ◇


そして。


     ◇


頷く。


     ◇


「よく分かった」


     ◇


俺。


待つ。


     ◇


「この成果」


     ◇


役人。


地図に。


手を置く。


     ◇


「確かに預かった」


     ◇


「上へも申し伝えよう」


     ◇


「…………」


     ◇


その。


瞬間。


     ◇


視界。


光る。


     ◇


俺。


息。


止まる。


     ◇


【第一次測量】


     ◇


【測量進捗率:100%】


     ◇


「…………」


     ◇


百。


     ◇


俺。


見る。


     ◇


【100%】


     ◇


もう一度。


     ◇


【100%】


     ◇


百。


     ◇


本当に。


     ◇


百。


     ◇


ずっと。


見たかった。


数字。


     ◇


二十五。


     ◇


動かない。


     ◇


何で?


     ◇


四十八。


     ◇


中途半端。


     ◇


五十。


     ◇


まだ。


半分。


     ◇


九十九。


     ◇


あと。


一。


     ◇


そして。


     ◇


今。


     ◇


百。


     ◇


「…………」


     ◇


俺の。


目に。


涙が。


たまっていた。


     ◇


止めようと。


思った。


     ◇


でも。


     ◇


やめた。


     ◇


いい。


     ◇


今日くらい。


     ◇


いい。


     ◇


俺。


地図を見る。


     ◇


ここまで。


来たよ。


     ◇


本当に。


     ◇


ここまで。


来た。


     ◇


みんな。


     ◇


ありがとう。


     ◇


俺。


やり遂げたよ。


     ◇


「…………」


     ◇


違う。


     ◇


俺だけじゃ。


ない。


     ◇


門倉。


     ◇


宗平。


     ◇


一緒に。


歩いた。


みんな。


     ◇


旅の途中で。


助けてくれた。


人たち。


     ◇


誰か。


一人でも。


いなかったら。


     ◇


この線は。


     ◇


ここまで。


続かなかった。


     ◇


俺。


涙を。


拭う。


     ◇


もう一度。


地図を見る。


     ◇


そして。


笑う。


     ◇


俺たち。


     ◇


やり遂げたよ。


     ◇


【第一次測量 完了】

ここまで浩哉の旅を見守っていただき、本当にありがとうございます。


私の作風は、一般的な小説とは少しかけ離れたものかもしれません。


短い文章。

多い改行。

そして、浩哉と一緒に一歩ずつ進んでいく物語。


これは、ただ伊能忠敬の物語を「読む」のではなく、浩哉たち登場人物の歩みを、一緒に「体感」していただきたい。


そんな思いから、この形で書いています。


作中における測量の行程や伊能忠敬の足跡については、可能な限り史実を調べ、それに準拠して制作しています。


つまり――


浩哉が「まだ歩くの!?」と叫んでいたあの距離を。


伊能忠敬たち測量隊は、本当に歩きました。


調べれば調べるほど、


「この人、本当にすごいな」


と思わされます。


そして気づけば、作者である私自身が伊能忠敬という人物を好きになっていました。


第一次測量は終わりました。


ですが、浩哉の旅はまだまだ続きます。


時に熱く。


そして最高にバカバカしく。


日本地図完成まで、あとどれくらいかかるのか。


ぜひ浩哉と一緒に、その長い道のりを体感していただければ幸いです。


ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました。


そして、これからも浩哉たちの旅をよろしくお願いします。


もし、


「浩哉の旅をもう少し見守ってやろう」


「続きも一緒に歩いてみよう」


そう思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると、とても嬉しいです。


皆さまからいただく応援が、作者の背中を押してくれます。


浩哉は、まだまだ歩きます。


たぶん本人は嫌がります。


それでも日本地図が完成するその日まで。


これからも、一緒に歩いていただけたら嬉しいです。

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