第52話「進みたいけど進みたくない」
朝。
函館。
出発。
俺。
歩く。
「…………」
行きたくない。
◇
昨日。
俺。
言った。
江戸。
帰る。
測量。
行かない。
茂辺地。
行かない。
松前。
行かない。
その結果。
【タイムパラドックス率:47.8%】
◇
「…………」
思い出したくない。
◇
あの数字。
絶対。
よくない。
四十七・八。
何が。
起きるのか。
知らない。
知りたくも。
ない。
◇
だから。
歩く。
渋々。
歩く。
◇
「先生」
門倉隼太。
「何?」
「本日は随分と静かですな」
「…………」
「お身体でも?」
「元気」
「では、なぜ?」
俺。
門倉を見る。
◇
言える?
歴史に。
怒られたから。
大人しく。
してます。
◇
言えない。
◇
「反省してる」
「何をでしょう?」
「人生」
「…………」
門倉。
困る。
ごめん。
◇
歩く。
測る。
記録。
また。
歩く。
函館。
離れる。
◇
俺。
何度も。
ウインドウ。
確認。
する。
【タイムパラドックス率:0%】
「…………」
よし。
◇
もう一回。
【0%】
よし。
◇
少し。
進む。
【0%】
「よし」
門倉。
「先生?」
「何でもない」
◇
ゼロ。
素晴らしい。
昨日まで。
こんな数字。
気にして。
なかった。
今。
ゼロ。
見るだけで。
安心。
する。
◇
俺。
学んだ。
歴史。
逆らわない。
大事。
◇
でも。
納得。
してる。
わけじゃない。
「…………」
江戸。
帰りたい。
心の中で。
言う。
◇
ウインドウ。
出ない。
◇
俺。
止まる。
「…………」
思うだけなら。
いい?
◇
試す。
江戸。
帰りたい。
◇
何も。
出ない。
「おお」
◇
もう一回。
江戸。
帰りたい。
帰りたい。
帰りたい。
◇
【タイムパラドックス率:0%】
「心は自由だ!」
門倉。
「先生!?」
◇
よかった。
歴史。
心までは。
縛らない。
◇
歩く。
少し。
気分。
良くなる。
◇
函館から。
進む。
海。
見る。
道。
見る。
測る。
記録。
いつもの。
仕事。
◇
でも。
一つ。
違う。
俺。
知ってる。
この先。
茂辺地。
その後。
知内。
福島。
松前。
◇
昨日。
聞いた。
聞きたく。
なかった。
でも。
聞いた。
◇
「門倉」
「はい」
「茂辺地の次」
「知内でございます」
「その次」
「福島」
「その次」
「松前へ」
「…………」
やっぱり。
◇
減って。
ない。
寝たら。
一個くらい。
消えてるかと。
思った。
◇
「先生」
「何?」
「昨日も申し上げましたが」
「確認しただけ」
「左様ですか」
◇
歩く。
また。
測る。
俺。
時々。
後ろ。
見る。
函館。
あっち。
◇
普通なら。
あそこから。
船。
乗って。
本州。
行きたい。
俺なら。
絶対。
そうする。
でも。
伊能忠敬。
しない。
◇
「…………」
なんで。
この人。
ここまで。
測るの?
◇
俺。
自分の。
身体を見る。
五十五歳。
この身体。
本当に。
意味。
分からない。
◇
でも。
今。
俺が。
使ってる。
◇
歩く。
歩く。
測る。
◇
昼。
休む。
俺。
飯。
食う。
海。
見る。
牡蠣。
ない。
よし。
◇
宗平。
魚。
持ってくる。
俺。
一瞬。
見る。
「何の魚?」
「先生?」
「種類」
聞く。
宗平。
答える。
普通の。
魚。
◇
「よし」
「何がでしょう?」
「最近、海産物に慎重になってる」
宗平。
意味。
分からない。
それで。
いい。
◇
午後。
また。
進む。
少しずつ。
茂辺地。
近づく。
◇
その時。
ウインドウ。
出る。
俺。
反射で。
止まる。
◇
【第一次測量 蝦夷地】
【測量進捗率:49%】
「…………」
◇
増えた。
◇
俺。
見る。
四十九。
昨日。
函館。
四十八。
今日。
こっち。
来た。
四十九。
◇
「…………」
やっぱり。
◇
俺。
なんとなく。
分かって。
きた。
この数字。
歩いた。
距離。
じゃない。
◇
俺が。
やるべき。
何か。
それを。
終わらせると。
増える。
◇
だから。
函館。
戻っただけでは。
四十八。
だった。
◇
その先。
来たら。
四十九。
◇
俺。
ちょっと。
嫌な。
こと。
思いつく。
◇
「門倉」
「はい」
「知内って」
「はい」
「まだ先?」
「茂辺地より、さらに先でございます」
「…………」
◇
俺。
ウインドウを見る。
【49%】
◇
あと。
一。
◇
五十。
半分。
◇
「…………」
まさか。
◇
函館。
半分。
じゃない。
俺。
昨日。
なんで。
四十八?
思った。
◇
もしかして。
本当の。
半分。
この先?
◇
俺。
嫌な。
予感。
する。
◇
だって。
半分。
だぞ?
西別。
行った。
函館。
戻った。
さらに。
茂辺地。
向かってる。
◇
それで。
まだ。
半分?
◇
「…………」
嘘だろ。
◇
門倉。
「先生?」
「何?」
「またお顔が」
「大丈夫」
大丈夫。
じゃない。
◇
俺。
歩く。
さっきより。
足。
重い。
◇
四十九。
◇
この数字。
増えて。
ほしかった。
ずっと。
増えろ。
思ってた。
◇
今。
初めて。
思う。
◇
「…………」
五十。
見たくない。
◇
夕方。
今日の。
測量。
終わる。
俺。
座る。
◇
ウインドウ。
出す。
【測量進捗率:49%】
変わらない。
◇
「明日」
俺。
聞く。
「どこ?」
門倉。
答える。
「まずは茂辺地へ。その先、知内方面へ」
「…………」
知内。
◇
俺。
四十九。
見る。
知内。
考える。
◇
「絶対そこで増えるじゃん」
門倉。
「何がでしょう?」
「こっちの話」
◇
夜。
横になる。
俺。
眠れない。
◇
怖い。
タイムパラドックス率。
じゃない。
今夜。
怖いの。
進捗率。
◇
四十九。
あと。
一。
◇
五十。
来たら。
第一次測量。
半分。
◇
俺。
布団。
かぶる。
「…………」
嫌だ。
◇
でも。
行かない。
言ったら。
歴史。
怒る。
◇
「…………」
詰んでない?
◇
伊能忠敬。
五十五歳。
中身。
浩哉。
四十歳。
第一次測量。
函館より。
さらに。
先。
◇
俺は。
今日。
初めて。
思った。
◇
進捗率。
上がるな。




