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11/11

11 未来

今回が最終話になります。

是非楽しんでいってください。

私とお父様は王の執務室にいます


「何というか……あまりの出来事に驚いてしまったが……久しぶりだな、ロキシー。元気で過ごしているかな?」


お父様は優しく話しかけてくれました

私はお茶を一口飲み、落ち着きを取り戻してから話します


「お恥ずかしいところをお見せしてすみません。はい、元気に過ごしております。東部の街も森の村も、ゆっくりとですが協力し合って、領地の立て直しに尽力しています。」


「それを聞いて安心した。新しい領主からも、領地が健全に機能し始めたと聞いている。よく頑張ったな。」


「ありがとう御座います。」


「ところで、東部の民には聖女と呼ばれていると聞いたが?」


お父様は少しニヤけて聞いてきます


「違うんです。タイミング良く回復魔法をかけたり、食事を用意したり、森の村を作ったりして村人たちに感謝されたのですが、その際に聖女さまと言われてしまいまして……否定してきたのですが、そのままズルズルと……」


私は思わず恥ずかしくなってしまいました


「まぁ住民の感謝の表れだ。あまり否定してやるな。だが……今回のアレは女神と言われても天使と言われても、否定できなさそうだな……どう見ても神の御業だよ。とりあえず経緯を説明してもらえるか?」


「わかりました。でもその前に……タイヨー君、聞こえてますよね?すぐに来てください。」


すると、その場に突然タイヨー君が現れました


「ビックリしたーー!」


お父様は椅子がひっくり返るほど驚いています


「大変申し訳ありません、スミス王。王女の呼び掛けにより参上いたしました。」


タイヨー君がそう言うと、お父様も落ち着きを取り戻しました


「よく来てくれたな、タイヨー君。この度の事、詳しく聞かせてくれないか?」


「わかりました。」


そう言うと、タイヨー君は話を始めました


「先日、僕は天体観測をしていた時に、接近してくる星があることに気が付きました。それは、ものすごいスピードで、この世界を目指しているかのように進んでいました。僕が観測したところ、それは直径が10数キロもある隕石でした。」


どうやらタイヨー君が自ら宇宙まで見に行ったことは内緒のようです


タイヨー君の話に、お父様は息を呑みました

隕石の事は知っています

空から降ってくる石で、直径1メートル程の隕石でも、街がひとつ消滅すると言われてます

それが……


「10数キロの隕石だと!?そんなものが落下してきたら……」


「はい。おそらく、この世界のすべての生物が絶滅するでしょう。そこで僕たちは急ぎ行動を始めました。」


タイヨー君は、一口お茶を飲んでから話を続けました


「天高くまで登った深緑竜さまと獄炎竜さまが近付いてくる隕石を攻撃して、とにかく小さく細かく破壊していきました。その過程で消失するならそれも良し、落下してきて流れ星となり燃え尽きるのも良し、とにかく細かくしました。」


「なるほど。それがあの流星群の正体なんだね。」


タイヨー君は、自分が最大の功労者になることが嫌なようですね


「その通りです。そして地上では、燃え尽きず落下してきた隕石から地上を守る為に、白氷竜さまに氷の結界を張って守ってもらいました。それで全て防げたと思ったのですが……」


そこまで話して、タイヨー君は私を見てきました

気が重いのですが世界樹さまの所業をお話ししますか


「私は、ひとつ大きな隕石が王都に向かって落ちて行くのを見ました。それは白氷竜さまの結界を突き抜けるところでした。私は急ぎ王都に瞬間移動し、結界魔法で隕石を押さえつけました。そこに深緑竜さまが到着して、ドラゴンブレスで隕石を消失してくれました。」


私の話はお父様も目の前で見ていたので納得しましたが、それでも信じられないような顔をしています


「しかしロキシー……瞬間移動で現れ、翼で羽ばたいて空中に浮遊し、強力な結界魔法で隕石を止めた……それは世界樹さまの力なのか?」


「はい……世界樹さまが力を貸してくれました。」


「なるほど、凄い力だったが……王都の人々が皆見ていたぞ。女神とも天使とも言われていたが……どうするのだ?」


今回ばかりは誤魔化しようがありません

ドラゴン様の力も借りていません

確かに隕石を破壊したのは深緑竜さまですが、私が単独で王都を守ったのは確かです

私が見せた力のそれは、神から得た力としか思えない状況です

それを王都中の人々が見ていました


「どうしましょう……」


私は思わず頭を抱えてしまいました


「王である私がロキシーの事を女神とか天使とか認めるのはマズイであろう。神を信仰する者たちが黙っておらん。もうここは王都を守りたい強い思いが王女の魔力を強化し、特別な力が生まれヒーローに変身したとでも言うか?」


「それはちょっと……私は東部の街に居たと言い訳するとか……」


「皆、瞬間移動を見ているぞ?」


私が一生懸命に言い訳を考えても、お父様はあっさりと否定します


もうこうなったら仕方がありません

私も覚悟を決めました


「決めました!私は逃げます!タイヨー君と身を隠して行商の旅に出ます!お父様!後のことはお任せしました!」


お父様は呆気にとられています


「え?いや、ちょっと待って!待ってください!」


お父様が慌てて止めますが私は待てません

私は瞬間移動でその場から消えました


タイヨー君

後の事はお願いします




ロキシー王女のいなくなった執務室……


残されたスミス王とタイヨー君


「で、では僕もこれで……」「待ちたまえ。」


逃げようとしたタイヨー君

その手をガッチリ掴んだスミス王


「ジックリと話し合おうではないか、タイヨー君。二人っきりでな。」


「スミス王!顔が近い!近いですって!」




空は青く晴れ渡っています

草原を揺らす穏やかな風は、とても心地がいいです


北部の街から街道を南下する馬車が1台


御者台にはジロさんとタイヨー君

馬車の中には談笑するユキ様と私

馬車に並んで紅炎様が乗る馬が歩きます


あの王都での騒動の後、お父様とタイヨー君は話し合ったそうです


私は逃げましたが……


ゴホンゴホン


私がやらかした事を世間にどう説明するかについて、いろいろ考えは出ましたが、お父様は結局『ロキシーは東部の街にいた。あれはロキシーによく似た女神ではないか?私は知らんぞ。』と言い切るそうです


そうして王都での騒動はお父様に丸投げして、私達は行商の旅をしています

今は北部の街で作成を依頼していた新商品を仕入れて王都を経由し南部の街へと向かっているところです


私は時々、人目のないところで翼を広げ空中散歩を楽しみながら……


だって、しょうがないじゃないですか

とっても楽しいんですもの




王都に立ち寄ったときにはノルディカさんとお会いできました


「お久しぶりです。ノルディカさん。ところで……あの噂はまだ収まりませんか?」


私は恐る恐る聞きました


「収まるどころか、あの時の王女の活躍が今や吟遊詩人の歌で大人気、演劇も上演され毎日満員御礼ですよ。王城からは、あれは王女とは別人だと発表していますが誰も信じていませんね。」


そう言って笑うノルディカさん


私はガックリと肩を落としました

噂が収まるには、まだまだ時間がかかるようです


王都での仕入れが終わると、私達は早々に南部に向けて出発することにしました

今は目立ってはいけないのです


「王女、たまにはスミス王に顔を見せてあげてくださいね。」


「はい。今回の行商から戻ったら伺いますね。」


ノルディカさんに別れを告げ、王都を後にしました


「本当に王城に寄らなくて大丈夫だったの?」


タイヨー君がそう言いますが、とんでもないです!


「今、王城に寄ったら、何日も滞在しなくてはなりませんよ。」


その後、私が王都に立ち寄ったという報告を受けたお父様がとても悔しがっていた事は、宰相さんとノルディカさんしか知りません




旅はとても順調で、しばらくして南部の温泉街に到着しました


馬車はジロさんの馴染みの温泉宿に到着しました

北部で仕入れた品はこの温泉宿に納品するそうです

なんでも冷たく冷えたお酒を保存する容器だそうです

宿屋のご主人は上機嫌で全てを購入されました


「日持ちもするようだし、とにかく全部買うよ!今日は泊まっていくんだろ?ゆっくりしていってよ。皆さんも温泉とお食事を楽しんでいってくださいね。」


温泉街では紅炎様とユキ様の超絶美男美女が並んで歩いている姿に注目が集まり、私が王女であることに誰も気が付きませんでした


あれほど注目を集めているのに堂々とされているお二人はとても凄いです




食事と温泉を楽しんだ後、私はタイヨー君と部屋に戻り、窓から夜景を眺めていました

私は街並みを見ながら話します


「温泉とは素晴らしいものですね。あまりの心地よさに、すっかり長風呂をしてしまいました。」


「ロキシーは温泉は初めてだったよね。喜んでもらえて良かったよ。」


「タイヨー君と出会ってから私の世界は一変しました。もちろんいい意味でですよ。いろいろな体験をしました。神さまの力まで得てしまいました。でもおかげで人々を守る事が出来るようになりました。」


「聖女さまって呼ばれるようにもなったしね。」


「もう!タイヨー君たら!」


タイヨー君が少しからかうように言うので、私は怒ったように言い返しました


「でも人々が感謝の思いで聖女さまと言ってくれるのを、私が否定するのは何か違う気もしますね。ただ何かタイヨー君にうまく利用されている気がしないでもないのですが。」


そう言って私は目を細め、タイヨー君を睨みました

タイヨー君は慌てて否定します


「そ、そんな事はないよ……たぶん……」


そんな姿も、とても好きです

温泉上がりで気分が高揚しているせいでしょうか

私は大胆な行動に出てしまいました


私はタイヨー君に顔を寄せて上目遣いに言いました


「私に申し訳ないと思うなら……今、ここでお詫びをしてください……」


もう顔から火が出そうなくらい恥ずかしいです

私は緊張しながらタイヨー君に向き、目を閉じました


…………。


どれほどそのまま待っていたでしょうか?

恥ずかしさの我慢が限界に達したその時です


「……あの〜…ロキシー……何をすれば……」


すぱーーん!!


タイヨー君の申し訳なさそうな声の後で、気持ちいいくらい歯切れのよい音が聞こえました


「イタタタ……」


タイヨー君が何者かに頭を叩かれたようです

薄目を開けて見てみると、そこにはハリセン片手に怖い顔で仁王立ちのライア様


私は恥ずかしさに耐えきれず顔を手で覆い、しゃがんでしまいました


タイヨー君は何が何だか分からない様子


「いったい僕が何を……」


「だまらっしゃーい!」


ライア様の怒声が響きました




タイヨー君が床に正座しています

その前方に怖い顔をしたライア様とディーネ様

恥ずかしさに泣きそうな私を慰めてくれるユキ様


「タイヨー様!貴方は何をやってるんですか!」


「何と言われても……何をしていいのか分からなくて聞こうかと……」


タイヨー君の答えに、ライア様とディーネ様が心底呆れたように、ため息をつき言いました


「貴方はどれだけこの青い惑星を観察してきたんですか!?いくら悠久の時を生きる存在だからって、ノンビリするにも限度があります!女性があの表情になったら何をしてほしいか決まってるでしょ?キスですよ、キス!」


「キス?とは?」


タイヨー君はそもそもキスを知らないようでした

これは私も誤算でした


ライア様がキレ気味に言い放ちます


「口と口をくっつけてブチューっとすればいいんです!はい!やり直し!私達は元の場所に戻ります!」


そう言うと3人は、そそくさと扉から出ていきました


なんて恥ずかしいことを直球で言い放つのですか!!

もう!悠久の時を生きる方々は皆さんがこんなでしょうか?


扉は少し開いていて、3人の顔が半分覗いてます

部屋に残されたのは引き攣った顔のタイヨー君と、両手で顔を覆ったままの私


「やり直せるかーー!」


タイヨー君、絶叫


「大体ライア達は何時からいたのさ。行商にはついてきてなかったじゃん!」


すると、ライア様が胸を張って言いました


「ユキ様から今から面白い事が起きると聞いて、急ぎ瞬間移動してきましたわ。」


タイヨー君がユキ様を睨むと、ユキ様は可愛い顔で舌をペロッと出しながら言いました


「タイヨー様、ゴメンね。」


タイヨー君は、3人を追い出して扉の鍵を閉めました

そして私のところに来て言いました


「ゴメンね、ロキシー。僕が何も知らないばかりに恥ずかしい思いをさせちゃって。」


タイヨー君は誠心誠意謝りました

その態度に私も自分の行動を反省しました


「いえ、タイヨー君が悪い訳じゃないんです。私も唐突でした。ごめんなさい。」


「ロキシーが謝る事じゃないよ。でも……僕は、まだまだ知らない事が沢山あるようだね。もっといろいろ知らなくちゃ駄目だとよく分かったよ。」


私は微笑んで答えました


「タイヨー君だけじゃないです。私もですよ。これから2人で、もっと世界を観察していきましょう。」


「そうだね。僕たちは悠久の時を生きる者。ゆっくり2人で世界を、人々を観察していこう。」


そして私達は笑い合いました




私は日記帳を開きます


私達はまだ知らないことがたくさんあります

でもそれをこれから二人でゆっくりと知っていけばいいのです

そして知り得たことを日記に記していきましょう


私達にはとても長い未来が待っているのですから




……長い未来にも続く日記?


……私が書いたそれは神々の日記?


……それは神話と言うのでは?


…………!


だ!だめです!

こんな赤裸々に記した日記帳……


絶対に!絶対に誰にも見せられません!

わかってますよね!?世界樹さま!?

絶対にですよ!!




ー終わりー




以上で「ロキシーの日記」完結です。

楽しんでいただけたでしょうか?

また自作もお楽しみに!

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