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俺のスキルが回復魔『法』じゃなくて、回復魔『王』なんですけど?  作者: 八神 凪


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第九十六話 黒ローブの策略

 カケル達が散開したころ、正面から突撃したクリューゲルは徐々に部隊の後方へと近づいていた。

 彼は元・大隊長。勝手知ったるなんとやらで、編成の癖や動きはよく分かっていた。


「乱れが無いいい動きだ。訓練は怠ってい無いようだ……だが、やはり少し遅れがあるな。おい、マイティ!」

「え……? ク、クリューゲルさん! うわあ!?」

「キュエ!?」


 後ろから声をかけられると思っていなかったマイティと呼ばれた騎士が、クリューゲルに奇襲をかけられ墜落を始める。

 横に居た騎士がすぐに気づき、慌てて前方に声をかけた。


「て、敵襲! く、クリューゲル大隊長です! 迎え撃……ぐふう!?」

「いい判断だ。だが、喋りながら手を動かせよ? この高さなら死ぬことはあるまい、安心して墜ちろ」


 騎士は最後まで言えず、槍の背で脇を突かれてワイバーンから落された。ワイバーンは主人を助けに慌てて追いかけていくのが見える。

 だが、最後まで言えずとも脅威は伝わったようで、サっと数組のワイバーンが旋回して取り囲むように編成を変えた。


「だ、大隊長だ!? ど、ドラゴンに乗っているぞ……!?」

「マジだ……」

「ど、どうするよ?」

「今はやるしかねぇべ!」


 姿を見た騎士達は各々好き勝手なことを言い合っていると、前方から凄い勢いで青い鎧の騎士が槍を構えて向かってきた。


「あっはっはっは! 大隊長ぉぉぉぉぉ!」

「イグニスタか!」


 ファライディと同じくらいの大きさがある赤い竜も向かってくる。

 イグニスタと呼ばれた騎士が笑いながら突撃を仕掛け、クリューゲルはすれ違い様に受け流す。そのまま旋回して戻ってきてクリューゲルの横に着いた。


「腕は落ちていませんな! 空の散歩というにはサンデイは少々物騒ではありませんか?」

「ぬかせ。俺がここにいる理由は分かっているだろうに」

「……まあ、そうですな。陛下ですね?」

「ああ、止めに来た」

「なるほど。しかし、あの時逃げたあなたにできるとでも?」

「エルフの大虐殺を見ぬふりはできん。もしそうなった場合、操られていましたから許してくださいとは言えまい? だからその前に止める。お前も分かっているのだろう? できれば攻撃したくない。通してくれ」


「自信がおありのようで、以前の大隊長らしさを感じれます……しかし……」


 イグニスタがニヤリと笑うと、ビュ! っと、槍で横に居るクリューゲルを攻撃してきた!


「……! お前……!」

「チッ、外したか……操られているのは知っていますぜ? それはそれで好都合だ。あの黒ローブを招き入れたのは誰だと思う?」

「まさか……!?」

「そのまさかよ! 俺様はエルフを皆殺しにした後、国王を失脚させてその椅子に座る。そういう手筈だ!」


 イグニスタは黒のローブ達と結託して、王の座を奪うつもりだと告白した。エルフの集落は魔王であるバウムを倒した後、フィアムが掌握するらしい。


「エルフを皆殺しにしたら、フィアムとやらはエルフの集落が手に入らないのではないか?」


 殺しにきているイグニスタの攻撃を槍で反撃をしながらクリューゲルが尋ねると、イグニスタは笑いながら答える。


「それは俺の知ったことじゃあないですな。奴はなにかの封印を破りに行った。帰ってきたらエルフが全滅……どんな顔をするだろうかね、あの野郎は!」


 がははと笑った後、すぐ真顔になりイグニスタは攻撃号令をかける。


「一番から三番までは俺と共に逆賊クリューゲルを始末するぞ! 四から六番は国王の護衛につけ!」

「し、しかし……ぎゃあ!?」

「口答えは許さん。俺が国王になった暁には金も酒も女も自由だ! 続け!」


 イグニスタが国王は黒の集団操られていると発言したため、騎士達はざわついていた。

 反論をしようとした騎士を刺し、イグニスタはクリューゲルへさらに攻撃を仕掛ける。


「お、俺は大隊長と戦うなんてできねぇ!?」

「馬鹿、ここでゴマすっとけば……!」

「やるなら全力で来い。死ぬ覚悟も持てよ?」

「ひ、ひい!?」


 クリューゲルの言葉で数人は戦域を離脱。それを見たイグニスタが舌打ちをしながら呟く。


「チッ、腰抜けどもが……俺に続けぇ!」


 鼓舞しようとするイグニスタに槍を繰り出しながら、今度はクリューゲルが笑う。


「フッ、騎士達よ。身の振りはよーく考えた方がいいぞ? こちらには協力な仲間がついている……ほら、お出ましだ!」


 編隊から向かって左側が魔法で光り輝きドラゴンの咆哮があがった。そこでぎょっとしたイグニスタは驚いて声をあげる。


「どうしたぁ!?」

「た、隊長!? 左からドラゴンに乗った男女が凄い勢いで攻撃を仕掛けています!?」

「なんだと!?」


 さらに驚愕の事態がイグニスタの耳に入る。


「ほ、報告です! 右方向にもドラゴン! 背に乗った女騎士と魔法使いが攻撃を仕掛けてきました……!」

「くっ、ドラゴンを出すとは……姫の後押しか……」

「そういうことだ。お前のくだらない野望はここで潰える! 魔王相手では勝ちめはないぞ」

「ま、魔王だと……!? くそ! こいつらを倒せば俺が一生の生活を保障してやる! 続け!」

「馬鹿いうでねぇ! 命がいくつあってもたりんわ!」

「俺は手を出しません!」

「いや、むしろクリューゲル大隊長を助けた方がよくね?」


 イグニスタの号令を聞いても八割方攻撃を止めた。理はクリューゲルにあるのは明白だからだ。

 しかし血気盛んな若い騎士や元々クリューゲルを嫌っていた騎士はイグニスタに与していた。


「死ね、クリューゲル!」

「やってみるがいい。陛下は俺が必ず助ける……!」


 敵味方の区別がハッキリとした瞬間、壮絶な空中戦が始まった――



 ◆ ◇ ◆


 <エルフの集落上空>

 

 国王と黒のローブを乗せたドラゴンが集落の上で様子を伺っていると、騎士の報告が飛んでくる。


「やはり結界が邪魔をしてこちらの攻撃は通りません」


 騎士達が弓や魔法で攻撃するも、弾かれ、逆にエルフから手痛い反撃を受けていた。


「……」

「陛下……?」


 まだ操られていることを知らない騎士が虚ろな目をした国王に声をかけると、わざとらしく黒ローブが声をあげた。


「さあて! 僕の出番だね!」

「なにをなされるので……?」


 訝しんで尋ねて来た騎士へ、黒ローブの男がゆっくりと頷くと下を指差して口元に笑みを浮かべた。


「あの結界を無くすよ……これでさ」


 そしてすっとローブの袖から真っ黒な玉を取り出して伝令の騎士に見せる。

 騎士は背筋に寒いものが走り、周囲を見渡しながら再度、質問を投げかけた。


「……なんですかこれは?」

「これは『抑止の秘宝』って言ってね、目標へ触れさせるとあらゆる効果を霧散させることができる超レアアイテムなんだよ! 身体強化だろうが、それこそ結界だろうがね」

「それはすごいですね……ではこれを結界へ?」

「そう! だけど、ちょっと協力が必要なんだよね。頼んでいいかな? 国王の力になりたいでしょ? こっちへ来てもらえるかい?」

「ええ、出来ることであれば構いませんが……」


 胡散臭さを感じていた騎士だが、国王のためと言われれば無下にもできずワイバーンを近づけて黒ローブの男に近づく。


「それじゃ、これを持って」

「は、はあ……」


 真っ黒な玉を受けとった騎士を見て、黒ローブは口元をゆるませた後――


「≪漆黒の刃≫」

「え?」


 ――ワイバーンの首を刎ねた。


「な、なにを!?」


 落ちそうになる騎士が国王のドラゴンに飛び移ろうとしたが、黒ローブの男は騎士を突き飛ばした。


「あ……? ……ああああああああ!?」

「いや、悪いね。協力してくれるって言うからさ!」


 黒ローブの男は落ちていく騎士へダガーを投げつけた。高速で飛んでいったダガーはきっちりと狙ったところへ吸い込まれていく。


「ぐが……がああああ!?」


 ダガーは喉に刺さり騎士は秘宝を持ったまま結界へと落ちていく。

 流れ出した血が秘宝に付着し鈍い輝きを放ち始めた。それを上から見ていた黒ローブが成り行きを見守る。


 そして血をすすった秘宝が結界に触れると次第に薄れていくのだった。



「これは……どういうことだ……」

「さ、これでどこからでも攻撃できるよ? 皆殺しと行こうか! あは! あははははは!」


 異変を感じて駆けつけてきたバウムを見ながら、黒ローブは笑いながら騎士達に総攻撃の合図をかけた。

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