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世界を征く者

「魔障壁を砕くなどいったいどんな威力なのだ…」


久々にマギアと相対したグゥインは寂しい遠征の拠り所としてただ親しい義弟であるマギアと触れ合うつもりでいた。


この瞬間までは。


グゥインはその本能でマギアの正体をこう感じた。

ーー彼はこの世界の"何か"を変える男だ。

ーー彼は他人が望む事を叶えようとする。

ーー彼は優しく世界を征く資格がある。


なにより、グゥインは一人の人としてマギアを愛していた。


「マギィ。お前。その命、俺にくれないか?」


グゥインはマギアに指を差し問いかける。


「へ?グゥ兄。またごっこ遊びですか?」


マギアは格好つけて問いかけるグゥインにいつもの事かと頭を傾げながら返答した。


「…。最近、祖国の内政が怪しくなってきている。そして、今回の東西敵国の襲撃。いくら馬鹿だと罵られている俺でさえこの出来事がおかしいものだと理解している。」


マギアの問に真剣に答えるグゥインは天を仰ぎ、つづけて話した。


「そして、土の国であるセントラで火魔法のように火花を散らす技を使うなど本来あり得ない。俺はお前の魔法に依らない技を、世界樹に左右されないその力を今、垣間見て確信した。」


グゥインはマギアを指差した腕を戻して自分の髪をかき上げた。


「でも!僕は、どんな人や場所でさえも使える筈の障壁魔法すらも使えないし、お役に立てる訳がありません!そもそもお父様がお許しになど…!」


マギアは急な勧誘におどおどとして当たりの物をガシャガシャと崩してしまう。


「ふむ。父上は非情な男。だが、合理的な判断をする。結果さえ見せつける事ができれば事実をすげ替えてでも通すはずだ。その力をお前は持っていると俺は信じている。しかし、確信はない…。だからこそ、その命を俺に委ねる覚悟があるならついて来い!」


落とした物を慌てて拾うマギアに膝をついて手を差し伸べるグゥイン。


「俺と来い。マギア!」


これまで生きてきた殆どの時間を堅く冷たい壁の中で過ごしてきたマギアにとって、今、この差し伸べられた手は太陽よりも輝いて見えた。


「…このままずっと、僕は独り…。そんなのは嫌。だから僕はずっと学んできた…。」


グゥインの手を掴んだマギアは涙で前が見えないほど、何も聞こえない程に泣き嗚咽した。


「あぁ、知ってるさ。」


グゥインはマギアの肩を優しく抱きしめて呟く。


ささやかな密談を終えた二人はその後、ひとしきり派手な花火を楽しんだ。


そして、最後に二人は膝を合わせてパチパチと淡く弾ける線香をしゃがみながら眺め、グゥイン王子は心の中で呟く。


『義母さま。貴方の宝石は私がその先に連れてゆきます。どうかご心配為さらずに…。』


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