密かなる力
「はぁ、グゥイン様。遠征の寄り道とはいえ、長居は出来ませんよ。」
兄弟二人のやり取りを細い目で睨み従者達が部屋を離れ静かになった。
「やれやれ、、、やっと胡散臭い野郎どもが消えたな。マギィ、義母様はご健勝であるか?」
「…。」
「そうか。済まない。助けにはなれないが、せめてこれを滋養にしてくれ。」
グゥインは腰に着けていた袋をマギアに渡す。
「これは…。チーズですか!?こんな高級なもの頂けません!!」
マギアは受け取った袋をグゥインに返そうとした。
「馬鹿者!お前も腐っても貴族だろうが!…まったく。それに、それは世話になった義母様への贈り物だ。叶うならどうか召し上がって欲しい…。」
「…はい。…ところで、グゥ兄、遠征って?」
マギアはグゥインから受け取った袋を抱きしめてグゥインに問いかける。
「あぁ、我がセントラ大陸の西岸にまたヨトゥンの火族が侵入して来てるらしい。加えてヴァリアースのセネア地方からも雷族による東岸侵攻の報告が上がってもいてな。毎度の事とはいえ今回は同時侵攻という事もあってな。一応の戦力として一番の大国であるヨトゥン方面がある西にグゥイン隊を差し向ける事になったんだ。そんで、城の西の外れにあるここにお忍びで遠征の寄り道として来たってこと」
世界は大陸よりも大きな創生樹イヴァンを中心に三つの大陸と二つの島国で成り立っている。
主に西のヨトゥン大陸、東のヴァリアース大陸(北にファリス地方、南にセネア地方)、そして中央南にセントラ大陸。
マギア達がいるのは地の世界樹が根差すセントラ大陸である。
「グゥ兄の隊!?セントラ大陸最強の歩兵隊じゃないですか!?そんなに危険な状態という事なんですか?」
「さぁな。俺は頭が良くないからな!作戦を立てたのは兄上よ。アイツはいけ好かないが頭では敵わん。戦略は奴に、そして俺は武力で片付ける。それだけの事よ。」
グゥインは拳を天に掲げてニコッとマギアに笑顔を見せた。
「そんな事より、弟よ!そろそろアレを見せてくれよ。パチパチとキレイな火花を上げるアレ!」
「えー、と、花火の事ですか?」
「そう!それ!遠い行軍で鬱とした俺の気分を晴らしてくれよ!」
グゥインの提案でハッと思い出したようにマギアはお願いした。
「あっ、そう言えばグゥ兄が来たら試したいと思っていた道具があったんです!!花火と同じ原理なんですけど、武器として使えないかと思って作ったんです。」
「ほぉ?武器?見せてみな。」
「あ、はい。これです。石の弓なんですけど…」
「あぁ?石弓?そんな物、雑兵の魔障壁ですら貫通せんぞ?」
「えぇ、なので、兄上の魔障壁を実験に使わせて欲しくて…。」
伏せ見がちな弟のお願いに少しキュンとなったグゥインは頬をポリポリと書いて承諾した。
「…。ふん。いいだろう。」
「…!ありがとうございます!」
マギアは鉄の堤に黒い粉を込め、その後に小さな鉄の小玉を入れた。
「それでは、いきますね。」
「さっさと済ませて、アレを見せろよな。」
グゥインは右の掌を前に出し、障壁を前方に展開した。
「はい、では」
マギアが小さな穴に火種を入れた瞬間、パァァン!!
空間に強烈な閃光と破裂音が響く。
「…!!」
グゥインの魔障壁はピンという響きと一瞬光ったものの見た目は何の変化もなかった。
「っあぁ。やっぱりダメだったかぁ。魔障壁には無理だったかぁ!普通の壁になら穴が空くんだけどなぁ…。」
るんるんと残念がるマギアとは正反対に青ざめたグゥインの額には冷たい汗が流れていた。
グゥインには分かっていた。
障壁は弾き返したのではない。貫通したのだ。
グゥインの背後から離れた壁にはキュルキュルと小さな煙を上げて鉄の玉がめり込んでいた。




