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安積金石丸   

間違えている可能性が多々あるかと思いますがフィクションとしてお考え下さい。

なお第1話・第2話共に文字数少なめです。第3話から長めとなっています。

≪享禄4年(1530年)-陸奥国安積郡郡山城(こおりやまじょう)


「おぎゃあ!?おぎゃあ!?おぎゃあ!?」 


安積祐重(あさかすけしげ)の元に本来では誕生するはずでなかった女の子が生まれた。その名をお七と定めたこの女の子の誕生が本来の歴史から大きく逸れることとなる。


安積氏は陸奥国南部でも広範囲を治める伊達氏の一家臣でありその嫡男で満年齢4歳の安積金石丸は周りと変わらない子供だった。


本来の歴史では特に目立った活躍をするわけでもなく歴史オタクでなければ知らないような安積氏の嫡男。それが3歳下の妹お七が生誕した事で金石丸の()()()()()()()


「・・・・・」

「どうですか?金石丸?あなたの妹ですよ?」


母親の安積菊乃が布団の上で生まれたばかりのお七を抱えながらその子を金石丸に見せている。金石丸はジーっとお七を見ておりそこには父親もいた。


「・・・・」

「お前は兄として妹が嫁ぐまで何があっても守らねばならん。分かるな?」


ポン


そう言って安積祐重が息子の金石丸の背中を優しく叩く。すると、()()という言葉に金石丸は触発された。


「はい!父上!僕がこの子を守ります!」


元気いっぱいに宣言する金石丸。その光景に両親や周りにいる者たちは微笑ましそうに見つめる。しかしその金石丸の宣言は()()()()()()で発せられたわけではなかった。


それからというものどちらかと言えば大人しい子供だった金石丸は野山を駆けまわる活発過ぎる子供に変わる。それは毎日のように朝お七を見に来ることからはじまる。


「お七!じゃあ()は行ってくるからな!お七を守れるように強くなるからな!じゃあ行ってきます!母上!」

「金石丸?あまり無理してはいけませんよ?」

「大丈夫です!これもお七を守るためですから!」


そう言って母親菊乃の心配をよそに走り去る金石丸。金石丸が向かった先は近くにある山。


「よーし!やるぞー!強くなるんだ!お七を守るために!お七のために!」


ダッ!


最初は山を駆けまわる金石丸。次第に疲れてくると今度は抱えるほどもある石を持って走る。


「お七のために!お七のために!」


終わりは限界に達して地面に倒れるまで。


「ハア・・・ハア・・・ハア・・・ハア・・・次・・・」


少しの休憩で今度は手頃な木の棒を見つけて延々と振り下ろし。


ブン!ブン!ブン!ブン!


「お七を・・・守るため・・・お七を・・・」


その光景は()()の一言に尽きる。いくら妹が可愛く守りたいと思っても普通の人間ではここまで限界を超えての行動は出来ない。この光景を見た周囲が心配したり引いたりするぐらいには端から見れば異常な行動に映っていた。そんな異常行動をし続ける金石丸の心情は単純でありそれは"妹を守る"という一心に突き動かされている。


生まれてきた妹お七を守るためには強くなる必要がある。その為にぶっ倒れるまで走りぶっ倒れるまで木の棒を振り続ける。


のちに()()()()()()()と呼ばれる事となる金石丸の度を超えた()()()()はこの日より始まった。

/////

そんな良いのか悪いのか変わってしまった金石丸を心配した菊乃が夫である安積祐重に相談する。


「祐重様・・・金石丸は大丈夫でしょうか・・・あの子の()()は異常です・・・」


そう妻に相談された安積祐重は悩みながらも答える。


「う~む・・・まさか妹が出来ただけで()()なってしまうとは・・・確かに異常ではあるが今は乱世であり強くなるという心は悪くない」

「ですが・・・あまりにも度を越えた鍛錬をしていて()()()があってしまっては・・・」

「・・・では1人誰かを付けることとしよう・・・金石丸も四歳となり傅役がいてもよい時期でもある事であるし・・・」

「そうですね!それでしたら勉強をさせなくては!」


勉強をさせることであの異常行動を減らせると考えた菊乃。だが、それは安積祐重によって却下された。


「それはもちろんさせなくてはならんが・・・勉強はもっと先でもよいだろう。今は金石丸のさせたいようにさせるのが一番あやつを成長させる・・・儂はそう考える・・・」


結局金石丸のさせたいようにさせて傅役は近くで見守るのみと結論が出された。

/////

翌日となり安積祐重は安積家家臣大槻貞光を呼び出した。


「お呼びでございましょうか?」

「急に呼んですまんな。実はお主に金石丸の傅役をつとめてもらいたいのだ」


その要望に少し驚きの表情となる大槻貞光。


「私がでございますか?」

「うむ。安積家随一の剣術槍術の使い手であるお主に任せたいと考えたのだ」

「かしこまりました。私でよろしければ謹んでお受けいたします」


恭しく傅役の任を引き受けた大槻貞光。しかし安積祐重の話はまだ終わっていない。


「しかし息子を見守るだけにしてもらいたいのだ」

「見守るだけ・・・でございますか?」

「ああ、あの子は普通に指導するのではなくあの子の考える通りに()()のままに成長した方が良い気がするのだ」

「なるほど・・・紀伊守様の直感であればそうなのでしょう・・・かしこまりました。それでは私めは金石丸様が危険な状態のとき以外は見守るのみといたしましょう」

「すまんな」


こうして金石丸に傅役という名の監査役がついた。

・【安積祐重】:通称が紀伊守で安積紀伊守祐重がフルネーム。1499年生誕。

・【安積菊乃】:安積国造神社の宮司の娘。1503年生誕。

・【大槻貞光】:剣術槍術に優れ金石丸の傅役という名の監視役に任命。1489年生誕。


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