迎撃部隊
「やあ、ハルトン副師団長補佐。お互い朝から大変だね。冒険者ギルドまで転移頼むよ」
「デービスト副隊長、おはようございます。さっそく向かいましょう」
彼は、ヒューゴ・デービスト。
侯爵家の長男だったが、次男に跡取りの座を譲って、王宮騎士団でかなり脳筋の第一部隊を副隊長として回している。
剣の腕も、攻撃魔法の腕もいい。事務仕事も良くできる。彼が現場に出てくるとは珍しい。
「アンジェ、久しぶりだな」
「ギルマス、ご無沙汰しております」
学院に通っていた時は、王都の冒険者ギルドによくお世話になった。
他所で倒した魔物の解体や買取りをお願いして騒ぎになり、ギルドマスターに呼び出されたことが何回もあった。
マスタン王国出身の冒険者だったギルマスは、2メートル以上の身長に、分厚い筋肉に覆われた体躯の美丈夫だ。
「“月の鏡”の対応ありがとな。おかげで準備がもうすぐ終わる」
「偶然知り合いだっただけですが、お力になれて良かったです。こちら、王宮騎士団第一部隊副隊長のデービストさんです」
「ヒューゴ・デービストです。宜しくお願いします」
「宜しく。ギルドマスターのブルーノだ。
さて、斥候からの報告で群れは真っ直ぐこちらに向かっていることがわかった。東西南北の門は封鎖、群れが来る予定の東門に戦力は集中させている。一応、他の門にはCランク以下の冒険者を待機させた」
「騎士団と魔術師団の迎撃部隊は東門に配備させます。他は警備隊がいるので問題ないでしょう」
「ああ、問題ないな」
「討伐後の魔物の処理は冒険者ギルドにお任せします。回復の魔法薬は、参加者に一本ずつお渡しします。また、回復が得意な魔術師がいますので、討伐後に改めて回復します」
「騎士団からは予備の武器防具を持ってくる手筈になってます」
「有り難い。現場はAランクのトビアスが指揮をとる。アンジェは奴を知ってるな?私はここで情報収集だ。討伐後にまた会おう」
「はい、何かあれば連絡を」
東門に到着すると、既に団員達が冒険者と共に準備をしていた。
「トビアスさん!」
「アンジェ!久しぶり!」
「お久しぶりです。私が今回の魔術師団の指揮官です。こちらが騎士団の指揮官のデービストさんです」
「ヒューゴ・デービストだ。宜しく頼む」
「トビアスだ。宜しく。斥候からの報告で3キロ先に先頭を確認した。もうすぐ目視出来るだろう」
「わかりました。準備に入りましょう」
それぞれの団員に指示を出す。
魔術師団は、回復と支援がメインだ。大人数の混戦は、攻撃魔法は使い辛い。
騎士団は、身体強化や魔法剣がメインなので前線だ。
冒険者はパーティーごとに動く。
「怪我で動けない者は結界内に避難させてから回復を。囲まれている者がいれば、“スリープ”で魔物を眠らせて補助するか、スタンロッドで攻撃を。
混戦となるので、攻撃魔法は控えなさい。今回の群れには、状態異常を引き起こす魔物は確認されていない。見つけた場合はすぐに報告共有を!以上!迎え撃つぞ!」
灰色の塊が向かってくる。
グレイウルフの群れだ。300匹以上いるか?
「数が多い!魔術師はサンダーアローかアイスアローの準備!」
私は、自分の周りに50程のサンダーアローを浮かべた。
「3.2.1.撃て!」
倒れたウルフ達のおかげで足並みが崩れた。
100は減らせたか?後ろのオーガの群れが予想より多いな。
「もう一回だ!準備!3.2.1.撃て!」
よし、これならオーガに集中できるだろう。
「魔術師団は下がれ!」
「盾、槍は前へ!一匹ずつ確実に屠れ!トドメを刺すのを忘れるな!」
ウルフに苦戦するような冒険者も騎士もここにはいない。危なげなく次々と屠り、オーガへの警戒に切り替えていく。
灰色がかった肌。2メートルから3メートル程の身長で、筋肉の塊のような身体。
角と大きな牙、鋭い爪、頑丈な皮膚が攻撃を阻む。
「盾に“反射”をかける!踏ん張れよ!」
「魔法剣は風で鋭さを強化!」
「剣が折れたら声をあげろ!予備を渡す!」
「足止めに“氷結”いいぞ!」
「足の腱を切れ!」
「吹き飛ばされた者を回収!回復しろ!」
「足元を狙って攻撃魔法!」
「変異種です!攻撃入りません!」
「アンジェ!」
「応援に入る!」
変異種の力はかなり強く、盾は一撃で吹き飛ばされ、皮膚も通常より硬いのか、槍も剣も数回の攻撃ですぐに折れた。足止めも効かない。
トビアスさんの声がかかったので、私はオリハルコンの大剣を出し、前に出る。
変異種の裏に回り込み、膝裏を狙って振り抜く。
片足を失い体勢が崩れたところを、トビアスさんが首を狙う。
変異種の咆哮が、他のオーガの動きも変えた。腕だけでトビアスさんの剣を阻む。立てない癖に厄介極まりない。
「首まで凍らせる!“氷結”」
変異種が氷の中で身体を動かそうとして、ピシピシと罅が入っていく。
トビアスさんの剣ではあまり深く切れなかったようで、氷の表面に血が垂れていく。
「アンジェ、やれ!」
氷が割れる寸前に、私はドラゴンの首を落とすつもりで身体強化をし、首に向けて剣を振り抜いた。
切っ先を地面にむけていたので、風圧はオーガの前の地面を抉り、少し砂埃が舞う程度だった。




