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これは想定外です  作者: らんらんらん
52/81

馬鹿王子 表

 


 二日前、大陸の南にあるカストリク王国の外交官が第四王子と共に来訪した。


 カストリク王国のダンジョンの探索が進み、魔宝石の鉱脈が発見され、安定して採掘できるようになったからだ。

 我が国のダンジョンでは、宝石に混じって魔宝石がたまにでる程度なので、とても羨ましい。


 魔法防御の魔道具を義務化したこともあり、魔宝石の安定供給は是非とも成立させたい。


 私は、魔術師団の師団長と一緒に魔宝石の品質確認に駆り出され、魔宝石の取引交渉をするアルフォンス殿下達と応接室で待機している。


 色々な部署の文官達が出入りし、クロード様とカルロス様とやり取りをしている。


 そこに、難しい顔をしたウィリアム様が戻ってきてアルフォンス殿下に何か耳打ちをした。


 片眉をあげたアルフォンス殿下は、チラリと私を見て悪い顔をし、すぐに表情を戻した。


 なんだなんだ、その反応は気になるじゃないか。



 出入りする人が落ち着いた頃に、カストリク王国一行の到着を告げられた。

 私は、入り口近くに師団長と並んで待機する。


 カストリク王国一行が入室する。

 一人だけ華美な衣装の青年が、私を視界に入れると下卑た顔をした。

 顔がそこそこ良くても、その表情だけで女性に間違いなく嫌われるだろう。私も、嫌悪を顔に出さないよう必死だ。


 じっとりと上から下まで観察される。気持ち悪い。



「ほう。こいつが私の相手か。これなら第五妃にしてやってもいい」


 応接室の空気が、ピシリと固まった。



「アーキル殿、貴国の風習は知っているが、ここはラビスタ王国だ。他国の女性を軽視する人間を連れてくるな。今回の交渉はなしだ。直ぐに帰国されよ」


 アルフォンス殿下が、聞いたこともない低い声をだした。ちょっと魔圧も漏れてる気がする。


「も、申し訳ございません!!!」


 殿下が声をかけたであろう人物が謝罪し、華美な衣装の青年は、護衛と思われる人物に口を塞がれ引きずり出されていく。


「アーキル殿、彼女は、数々の功績で伯爵位を賜っている才媛だ。そして、私の側近の伴侶でもある。

 今回は魔術師として、貴国の魔宝石の品質確認の為に同席をお願いしていた。

 まさか、夫の目の前であんな侮辱をするとはな。

 直ぐに、カストリク国王に抗議文を送る。陛下には話は通しておく。帰国の挨拶は不要だ。行け!」


「申し訳ありませんでした…失礼いたします…」


 アーキル殿とお仲間は、顔面蒼白で去っていった。



 え?これ私のせい?

 隣の師団長に目を向けると、目が全く笑ってないのに笑顔だった。怖っ!


「アンジェリーナ、悪いな。こうなる予感はあったんだが、交渉に使えると思い黙っていた」


 アルフォンス殿下が悪い顔で言う。


「はあ…なにがなにやら」




 カストリク王国の第四王子は、到着初日に我が国の侍女に手を出そうとして問題になり、これ以上の問題を起こさせないように、カストリク王国の人間が周りを固めていたらしい。


 もうそこで帰国させるか、部屋に軟禁していれば良かったのに、元々この交渉を第四王子の手柄にする予定だった為に、この場に連れてきてしまったようだ。


 そして、私をカストリク王国の最低な風習と勘違いして侮辱した。



 カストリク王国は、平民までハーレムが浸透している国だ。

 国王を筆頭に、成人した王子も皆ハーレムを持っている。第四王子も既に第四妃までいて、愛人も多数いるそうだ。


 そんな国なので、女性蔑視も酷く、交渉の場に連れてくる女性はお察しだ。

 商人の交渉の場は、一夜のお相手の娼婦が用意されるのが常識らしい。

 貴族同士なら、交渉の場にいるのは妻や愛人候補となる娘で、気に入ったらお持ち帰りが許されている。


 真面目に交渉しろよ、賄賂が露骨過ぎるだろう。


 …なんてことだ!

 私を候補だと勘違いしたのか、あの王子!


 ちょっと待て。

 確かに魔宝石は欲しいけど、我が国の方がカストリク王国より三倍くらい大きい大国なんだが。

 どう考えても、こちらが下手に出ることはないだろうよ。我が国は、賄賂を贈られる側だぞ。

 そして、ここはラビスタ王国だ。他国に、自国の風習を持ち込むなよ!

 まさか、そんなこともわからない馬鹿を外交に出してきたのか?



「あの国、馬鹿なんですか?」


「ああ、かなりの馬鹿だな。あの王子のおかげで、魔宝石を安く輸入できる。すぐに陛下と宰相に報告して、搾り取るぞ。

 アンジェリーナ、一部は慰謝料として貰えるから期待しとけ」


 アルフォンス殿下が、ニヤリと笑う。

 なんて悪い顔でしょう。

 でも、私もきっと悪い顔してる。いや、ここにいる全員が悪い顔してる!ふふふ


「アンジーを侮辱したんだ。あの王子は二度とラビスタ王国に入れないようにしてやる…!」


 あっ、クロード様だけ激おこだ。





 その後、私個人へのお詫びに最上質の魔宝石が10個も贈られてきてウハウハ。


 国も、一年は格安で上質な魔宝石を輸入出来るようになり、それ以降も高値はつけられないことになった。

 見事な安定供給だ。お馬鹿な第四王子に感謝だね!


 そして、第四王子は入国禁止。

 クロード様、本当にやったのね…







ウィリアムは、王子は軟禁されて交渉に出て来ないと思ってたのに、直前に出てくると聞いて不機嫌。

殿下は馬鹿王子が出てくると聞いて、アンジェリーナを下げるか一瞬悩み、狂った幸運値に賭けました。

結果、瞬殺!笑いが止まらないぜ!


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