閑話 夜のお散歩
「アルフォンス殿下、来月の10日に側近の皆様と奥様や婚約者様を王宮に泊めること出来ますか?」
「ん?泊めることは出来るぞ。どうした?」
「5年に一度しか観れない景色、見に行きません?」
この時、私は悪戯っ子のような顔をしていたらしい。
面白がった皆様が悪ノリし、全員参加が決まった。
そして、当日。
王宮の庭に集まった皆様に、魔道具の小型ランタンを持たせ、纏めて転移する。
「アンジェリーナ、ここはどこだ?」
「大樹海の中です」
「「えっ!?」」
暗闇に、皆様の驚いた声が響いた。
「ここは魔物が寄り付かないので安全です。あっもうすぐ観れますよ」
「悪ノリしたのは俺らだけど、大樹海は想定外だよ」
白い満月が淡いピンク色に変わる。
「あっ今日は紅月か」
5年に一度、3時間程淡いピンク色に月が染まる。
それを、人は紅月と呼ぶ。
紅月に照らされた妖惑草が花開く。
ぼんやりと蒼白い光が足下に広がる。
気づいた時には、視界いっぱいの妖惑草が咲いていた。
「凄いな。この花はなんだ?」
「魔物避けの香にも使われてる妖惑草です」
「妖惑草に花が咲くなんて聞いたことがない」
「魔素を多く含んだ土、大樹海のような場所でしか咲きません。それも、5年に一度の紅月の夜だけ」
空には満天の星と紅月。
左右は暗闇の森、足下は蒼白く光る一面の花畑。
幻想的な光景に、皆が見蕩れる。
女性陣は感嘆の溜息を吐く。
「なんて美しいのかしら」
「来た時は真っ暗だったのに」
相手に寄り添い、それぞれ話し出す。
「アンジー、とっても綺麗だね」
「ふふっ、クロード様まだ終わりじゃありません」
「え?」
蒼白い光に交じり、別の光が溢れだす。
その光は、空中をくるくる回る。
ふわりふわり、光がまた一つと増えていく。
「あれは…?」
「妖精です」
「「は?」」
「妖精を惑わす草ですからね」
「なに?」
「妖精が妖惑草の花の蜜に酔って、姿を現すんです」
「そんな事が…名付けた者は知っていたのか」
「人里じゃ花が咲かないから忘れられたのかな」
どんどん妖精の光は増えていく。
こんなに綺麗なのに、実は5年に一度の妖精の宴会場だ。
『キャハキャハハ』
妖精の酔っ払いが笑ってる声なのだろうか。
静寂の森に、微かに楽しそうな音がする。
「妖精が観れるなんて、凄いわ」
「ああ、妖精は実在していたんだな」
「来てよかったでしょう?」
私は、にんまり笑った。
女性陣を誘った男性陣の株も上がったようだ。
仲良きことは美しきかな。
それぞれ相手と過ごし、2時間程で王宮に戻った。
「夜のお散歩、満足いただけましたか?」




