鬼気迫る
王宮は、一時騒然とした。
行方不明だった近衛騎士2名の他にも数名が、昏倒している状態で見つかった。
当初は彼らの安否が不明だったこともあり、怪しい者は片っ端から捕縛された。
まあ、騎士を見て逃げたら捕まるよね。
後ろ暗いところがあると思うもの。追う側の心理としては。
身元確認がとれても、一度捕まった人達は要注意人物とされている。今回の事件の内通者じゃないかと疑われてしまったのだ。
鬼気迫る騎士の勢いに負けただけの人達、ドンマイ!
結局、敷地内で捕縛された身元不明の侵入者が計8名いた。
「ルドラ王国なのか…」
捕縛した侵入者の証言を聞いたアルフォンス殿下が、疲れた声を出す。お疲れ様です。
「はい。まさか、あの王女殿下がここまでやるとは思いませんでしたね」
「全員を誘拐して、王女殿下のハーレムに迎えるって…馬鹿なのか?ハッ」
カルロス様、イラッときてますね。
「アルフォンス殿下の立太子式典に来てたんじゃなかったの。王太子を誘拐して、ハーレムに迎えるってナニ!戦争したいの!?」
ウィリアム様、馬鹿の思考は理解できないものです。
「小国のただの王女が、なんでハーレム持ってるの」
クロード様、そこ気づいてしまいましたか。
「あの王女、頭悪そうだったもんな〜」
ルーカス様、理由はともかく一応侵入されちゃってますからね。私も馬鹿にしてますけど。
「さて、表面だけ見ると、ルドラ王国の我侭な王女による無謀な誘拐未遂事件なのですが、侵入者達を解析したところ“呪い魔法”の痕跡が出ました。
折角、我が国が恥を晒してまで他国に注意喚起したのに、既に王族に迎え入れていた国があったようです」
あの王女に、我が国の第二王子の失脚に関わった子爵令嬢と同じ、アトラクト王国の王族の末裔と思われる痕跡がでてしまった。
我が国は、先の事件の発表から、国内全ての貴族に他の被害者が居ないか魔術師を派遣して確認、魔法防御の魔道具の着用を義務化した。
平民は全てを調べるのは難しい為、捕まえた犯罪者に“呪い魔法”の被害者がいないか調べている。
ルドラ王国で、寵妃の娘として甘やかされていた上に、“呪い魔法”で我侭な願いが叶ってきた王女は、我が国に訪れたことでかなりの屈辱を感じたようだ。
魔道具のおかげで、誰も相手にしなかったから。
小国の王女が、大国の王子の立太子の式典に参加する自国の国王に同行した理由が、新たなハーレムメンバーを漁りに来てるとは誰も思わないよ。輿入れの警戒しちゃってたよ。
滞在中に、部屋が気に入らない、料理が気に入らない、王太子に会わせろ、あの騎士をつけろ、パーティーにいた男を呼べ、等々の要望をされたようだが、格下の小国のただの王女だし、パーティーで要注意人物にされていたのもあり、さっさと追い返されたらしい。
「王女殿下には、我が国は肌に合わないようだ。体調を崩される前にお帰りになっては?馬車の手配を致しましょう」
宰相閣下が、国境まで、転移魔法が使える魔術師に送らせた。絶対追い返すって気持ちが溢れてる、素晴らしい手腕である。
まあ、それもあって我が国に対してこんな暴挙に出るほど拗らせてしまったんでしょうけど。
ルドラ王国は薬草が特産品の国なだけあり、様々な薬が作られている。
今回の襲撃は、魔法を使われたなら魔法防御の魔道具が防ぎ、もっと早く失敗していただろう。
魔物に使う睡眠薬や麻痺薬を、騎士や侍女達に使うなんて、信じられない暴挙だ。未だに目覚めない者もいる。
怒った国王陛下が、挙兵しそうと噂もある。
一応、“呪い魔法”の被害者なので、宰相閣下が直々に赴いてコテンパンにする予定。
宰相閣下自ら、青筋立てて訪問メンバー選んでました。騎士も魔術師も、かなり連れて行くそうです。
寵妃と王女は、そのまま処刑されるんじゃないかな。王女は、怒らせてはいけない人を怒らせた。
ルドラ王国は財政難との噂があるのに、これから賠償金で苦労しそうだ。




