6攻逢魔「魔導天のレナ」
難産で遅れました!申し訳ござらぬ!
命の護り手達が集まる集会まで、情報収集に励んだソウル達はどんな小さな事でも報告し、マギアのウィンドウに追記して情報を共有していった。そして当日を迎えたソウル達は、集めた情報を眺めていた。
「末端まで数に入れるとかなりの数になりますね…」
「まぁ、一組織だからね。こんなもんだよ」
ソウルの言葉に006が答えた。ソウル達が集めた情報によって関係してる人数は100人を超え、さらにここから増えていくのかとソウルは驚いていた。
「集会でさらに増えると思うわよ?」
クラフトがニヤけながら言うと、ソウルはその言葉に眉を寄せた。
「準備が出来た…そろそろ出発しよう」
「了解です。マギア、アヒーは今どこにいるか解るか?」
「はい、マーカーを付けて置いたで居場所の特定はできます。そのマーカーの信号は南西の方から来ていますね。今マップに反映しますよ」
ソウルとバーコードのマップにひし形のマークが付き、アヒーが現在いる場所を指し示していた。
「マギア、オペレータを頼む」
「お任せください」
「では行きましょう。バーコードさん」
「ああ…」
ソウル達はひし形のマーク目指して南西へ行くと、帝国郊外の屋敷へとたどり着いた。その場所は広い土地を有しており屋敷も大きく、庭園もちゃんと手入れされいて大貴族が所有している物だと分かった。
「かなり広いですね…ここを守る守衛も多そうですね…」
「どこか近くで潜入準備をしよう…」
「了解です」
ソウル達は屋敷の裏手に林が見えたのでそこへ行き、ソウルはパワードスーツを装着しバーコードは全身黒一色の装備を身に着けた。
「表には本人や従者等たくさんいるからそこの2階の窓から侵入しよう…」
「解りました」
ソウルは背中の腕を展開した後、ワイヤー付きの手を射出し2階へと昇り、バーコードはどこぞのアサシンの如くスルスルと壁を昇って行った。
「ここから会話はチャットで…」
「(了解です)」
ソウルがチャットで表示するとバーコードは頷き、ソウル達は屋敷へと侵入しアヒーがいる部屋を目指した。
「閣下、皆集まりました」
「解った行こう」
ボトワンが白と黒の皿がある天秤を片手に持ち、アヒーと共に1階にある大広間へ向かうと、大広間には石の円卓が置かれ10人の男女がそれぞれ椅子に座っていた。
「皆、待たせたな…」
「急な招集だな…何かあったのか?」
「ダミアンそう急くな。いま閣下からお話がある」
アヒーとボトワンが自分の席に座り、全員がボトワンに注目した。
「先日、ベヒーモスの角を取りに行ったパッソンが、飛行船のブリッチで死体となっていた所をドックの作業員が見つけた。騎士団の調べでは、かなりの恨みがある犯行だという事のようだ」
「パッソンが?そりゃよかった!誰が殺したか解らないが、あの自尊心だけ野郎を殺してくれた奴に賞賛を送りたいぜ!」
「ダミアン!貴様!仲間の死を喜ぶか!?」
「おいおい、オレリア?何を勘違いしているんだ?俺達は仲間なんかじゃねぇよ。ただ古臭い伝承に縛られてるってだけの他人じゃねぇか。俺は利害が一致しているから協力しているだけだぜ?」
オレリアと言う女性が、笑って喜んでいたダミアンを睨み諫めようとするが、ダミアンは尊大な態度を崩さなかった。
「貴様…閣下の御前でその態度…余程死にたいらしいな?」
「おいおい、オレリア…俺は本当の事を言っただけだぜ?それに大将を理由にするのはどうかと思うぞ?」
「殺す!」
「やめよ!!」
ボトワンが一喝し、その場に静寂が訪れると言い争っていた二人は椅子に座り直した。
「単刀直入に聞く。ダミアンお前がパッソンを殺したんじゃないのか?」
「俺が?大将…そりゃあないぜ…」
「ならば審議の天秤を使っても問題ないな」
「ああ、問題ないぜ」
ボトワンが天秤を円卓に置いた後、ダミアンに視線を向けた。
「【審議】ダミアンはパッソンを殺したか否か」
「否!」
ダミアンが答えると、天秤が白い皿の方へと傾いた。それを見たボトワンが安堵の息を漏らした。
「すまんなダミアン…アヒーが怪しいと言ったから審議の天秤を使わせて貰った…」
「いいって事ですよ大将。恨みがあったのは確かですし」
「アヒーもこれでいいな?」
「はい…」
アヒーが、何故かがっかりしたような声でボトワンに答えた。
「だとすると…誰がパッソンを殺したのでしょうか?」
眼鏡をかけた男が疑問を言ってその場を静寂で包むと、ダミアンが口を開いて静寂を破った。
「最近俺らの周りを嗅ぎまわっている奴がいる…」
「なに!?それは本当か!?」
「ああ…それに最近妙な視線を感じるしな…」
「それは私も感じたわ…」
オレリアの言葉にその場の全員が「実は俺も感じた…」という声が数多く上がった。
「そう…今も感じている…そこからだ!」
ダミアンが腰からナイフを抜き、入り口方に投げるとナイフが途中で何か硬い物に当たって落ちた。
「!?ナイフが!な…何者だ!?」
「(潮時ですね…バーコードさん先にここから出て皆と一緒に帝国を脱出してください。俺はここで殿を務めます)」
「(了解した…御武運を)」
「ようやく気付いたようだな…何も知らずに日常を晒す貴様らを観察するのは滑稽だったぞ」
仲間達が逃げられる時間を稼ぐ為、ソウルが低い声を出し最大限の悪役を演じる事にして、光学迷彩を切り姿を現した。
「貴様は一体…」
「我か?我は貴様らがふざけた事をして来たから、どんな奴が関わっているのか見に来ただけの者だ」
「見に来ただけだと?」
「ああ、そうだ。しばらく貴様らを見ていたが何とも愚かしい奴らばかりだったな…我が帝国の人間をバラバラにして殺したのに仲間内で疑い合うなど…片腹が痛くなる愚かさだ」
「帝国の人間…まさかパッソンは貴様が殺したのか!?」
「ああ、そうだ。どうだった?我からのプレゼントは?」
ソウルが悪役らしい振る舞いで、その場に居た全員を煽った。
「貴様、狂っているのか!?パッソンをあんな風に殺して置いて…プレゼントだと!?」
アヒーが隠し持っていた短剣を抜き、ソウルに向けながら言った。
「おやおや、そのパッソンの死を利用してそこの男を貶めようとしていた男が何か言っているぞ?」
「っく…」
図星を突かれたアヒーが、苦虫を噛み潰したような顔をした。
「クックック…どうやらプレゼントがお気に召さない用らしい…なら貴様達、何かの子孫達なんだろう?この情報を周辺諸国に渡すとしよう!それならお気に召すはずだ!」
「やらせるかよ!」
ダミアンが殴りかかって来ると、他の奴らもソウルに攻撃しようとしてきた。
「おっと怖い怖い!」
ソウルは天井に向けてワイヤー付き手を射出し、天井に張り付いた。
「怖いなぁ…プレゼントが気に入らないから襲い掛かって来るとは…鬼だな貴様ら」
「(マスター全員街から出ました。これから国境へ向かいます)」
「(了解。俺は奴らを引き付けながら北の国境を目指すから呼んだら来てくれ)」
「(了解しました)」
マギアからチャットで連絡が来ると、ソウルはこの場を去る事に決めた。
「鬼の巣窟などいられるか!俺は逃げさしてもらう!」
「この人数から逃げられると思うか?」
「愚問だな」
ソウルはアイテム欄から閃光手榴弾と煙幕を取り出し、最初に閃光手榴弾のピンを抜いて投げた後煙幕を投げた。
「うわぁ!」
「きゃぁ!」
最初に視覚と聴覚を奪った後、煙幕が全員を包み込むと、部屋の外で待機していた従者達が突入してきた。
「なんだ!この煙は!」
「煙幕だ!同士討ちに気をつけろ!」
煙幕が効いている内に、ソウルは蜘蛛の様に壁を這いながら移動し、部屋から出た後玄関へと向かった。
「貴様!何者だ!」
光学迷彩を起動し、玄関の入り口付近まで移動したソウルは、光学迷彩を切ってわざと見つかった。
「奴だ!奴を捕まえろ!いや殺せ!」
ソウルを追って来たボトワンが、その場に居た従者や守衛に命令すると命令された者達は剣を抜いてソウルを取り囲もうとしてきた。
「おっと!その手には乗らぬよ!」
玄関の扉に体当たりして外へ出ると、ソウルはホワイトローズから渡された起爆装置を手に持った。
「さて、我からの最後のプレゼントだ!きっと気に入るぞ!」
「何をする気だ!貴様!」
ボトワンが叫ぶように言うと、ソウルは起爆装置のボタンを2回押した。その数秒後ドックがある場所からキノコ雲が上がり、爆発音と衝撃波がソウルに伝わって来た。
「なんだ…あれは…」
ボトワン達が爆発に驚いていると、ソウルはその内にG・アークの足に搭載してあるローラーダッシュを展開した。
「それでは諸君!お勤めご苦労!さようなら!」
ソウルはモーター音を鳴らしながら街を滑る様に疾走し、北の門を目指した。
「(よしよし、ちゃんと追ってきているな)」
ウィンドウに表示された後ろの風景を確認すると、ボトワン達が馬に乗って数名の従者を連れながらソウルを追いかけて来た。
「よっと!」
体を傾け街角を曲がって行くと、閉じられている北の門が見え、ソウルは背中の腕を展開した。
「待て!貴様この先は行き止まりだぞ!無駄な抵抗は止めろ!」
「それはどうかな!?」
ボトワンが怒りが混じっている声でソウルに言うと、ソウルはワイヤー付きの手を門の屋根を狙って射出し、射出した手が屋根の縁をしっかり掴んだ後ワイヤーを巻き戻すと、ソウルの体がワイヤーに引っ張られそのまま門を飛び越えた。
「な!なんだと!?」
「ふははは!さらばだ!」
「ええい!早く開門しろ!急げ!」
ボトワンが、怒りながら門番に指示を出す声がソウルの後ろから聞こえたが、ソウルはそのまま門の向こう側に着地すると、再びモーター音を鳴らし北の国境へと目指した。
「(馬で追いかけて来るのは30分が限界だと前に聞いた事があるな…ならそれまでに国境を超えるか撒けばいいわけだな)」
ソウルはそう考え、ローラーダッシュの最大速度を維持しながら街道を進んでいった。
「そろそろ15分位か?ん?」
ソウルが舗装されていない街道を爆走して15分がたった頃、後ろを映しているウィンドウに視線を移すと上空に何かに乗って追いかけて来ている人影が見えた。
「あれは…うお!」
その人影が、ソウルに向かって複数の火の玉を飛ばして攻撃してきた。ソウルはそれに驚きつつも火の玉を回避しながら進んだ。
「このままじゃいつか当たるか!」
ソウルが跳躍すると、背中にあるファントムを両手に装備し、ローラーダッシュを逆回転にして、後ろを向きに着地した後、ソウルの体が後ろを向いたまま街道を進み始めた。
「あれは何だ?魔女っぽいな?」
「こらぁ!そこの爆弾魔!止まりなさい!」
「断る!」
カメラのズーム機能で人影を確認してみると、箒に跨った魔女が杖の先に火球を作りながらソウルに向かって叫ぶと、ソウルはファントムを連射し弾丸が魔女に当たると思ったが、魔女の目の前に魔法障壁が現れ、弾丸が防がれてしまった。
「きゃ!」
「ちぃ!障壁か!厄介な!」
そのままファントムを発砲し、火球や魔女を近づけない様にしながら進んでいると、一向に止まらないソウルに対し業を煮やしたのか別の魔法も使い始めた。
「この!いい加減とまれ!」
「だから断る!」
別な魔法を使っても止まらないソウルにキレた魔女は、巨大な火球を出現させ、ソウルの進んでいる先の道を狙った後放つと、道の先が激しく燃え上がり、マグマ地帯を作った。道の先がマグマになった為、さすがにソウルも止まらなければ行けず、急いでブレーキをかけた。
「くそっ!我を止めたな!?」
「はぁはぁ…やっと止まった…ちょっとあんた!帝国を吹き飛ばすなんて何で事をしてくれるのよ!爆発音に驚いて研究してた薬品落としちゃったじゃない!どうしてくれるのよ!素材高かったのよ!」
「知るか!」
「知るかってあんたねぇ!6攻逢魔の1人「魔導天のレナ」に向かっていい度胸ね」
「6攻逢魔だとかマトン天のレナとか初めて聞いたな…」
「マトン天ってなによ!羊の天婦羅みたいじゃない!魔導天のレナよ!すべての属性魔法を使いこなし尚且つ頂に立った者に贈られる称号が魔導天よ!覚えて置きなさい!」
「それで…そのマトン天のレナさんは我に何か御用か?」
「あんた…また!…まぁいいわ…あんたを帝国に連れて行くわ…そこで正しく裁かれなさい!」
「さっきから何を言っているんだ?我は急いで次の町を目指していたのだが…帝国に何かあったのか?」
「はぁ?あんたねぇ…この期に及んで白を切る気?」
ソウルは嘘を言い、何とか切り抜けられないか試す事にした。
「白を切るというより我は関係ない!だからさっきも知るかと言った!」
「え?…だってさっき攻撃して来たじゃない!」
「それはお前が先に攻撃してきたからだろう!攻撃して来たから迎撃しようとした。これは当たり前だと思うぞ?」
「あれ?…そういえば…そうだったわね…」
「(この女…ちょろい!チョロインの類だ!)ならもう行っていいか?」
「待ちなさい!宰相の話によれば見た事も無い鎧を付けていたと聞いたわ!」
「我は来訪者だ!奇抜な格好しててもおかしくはないだろう!?」
「あんた来訪者だったのね…そうね…悪かったわ…」
「じゃあ、我はもう行くぞ!全く、急いでいると言うのにとんだ目にあった…このマトン天め!」
悪態を吐きながらマグマ地帯を回避し、ソウルは再びローラーダッシュを開始した。
「(ちょろすぎ!あの娘6攻逢魔とか言っていたけど、あんなので大丈夫か帝国…)」
嘘がうまく行き、その場から走り去っていった。余談だが後から追いかけて来た宰相達から人物の特徴を詳しく聞いたレナは、激怒したという事だった。
審議の天秤は所謂魔法道具のウソ発見器です。
ソウルが演じる悪役は、映画やアニメで見た悪役をいろいろ足して行って物です。
たまに「家畜に神はいない!」とか言いうかもしれません。
潜入した仲間達は南から脱出しています。
皆が視線を感じたと言いましたが、その中には気づいていない奴も数名います。
魔導天のレナを最初エビ天と呼ぼうとしたけど、止めました。もちろん頭にはアホ毛が生えてます。
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