この弾丸がお前を裁く…
ちょっと難産でした!
それではお楽しみください!
「今日はここまでか…」
アークライトに戻ってきたソウルは、現実世界の時間を見てもうすぐ夕食ができる時間を指しており、ゲーム内でも日没まじかだった。
「夜に錬金術ギルドに行っても嫌がられるか?…仕方ない明日だな…」
ソウルはログアウトボタンを押し現実に戻っていった。
「姉さん、何してるの?」
「ちょっとした実験…」
片手に氷を持ち、耳に息を吹きかけようとしていた姉に、チョップをお見舞いした後、一階へ降りていった。
「ちょっとしたお茶目じゃない…」
「普通に心臓に悪いから!それとダイブしてても解るように設定されてるから!」
食事の用意がされているテーブルに座り、いただきますの号令の後、食事を始めた。
「そういえば総一郎は友達と旅行とか行かないの?」
「異世界に旅行して…アダダダダダダ!」
母親が唐突に質問してきたので、適当に答えたらアイアンクローを喰らわされた。
「彼女の一人も作らない…友人との接点も低い…お母さん心配だわ…このまま美人だけで終わる人生なんて悲しい物よ…ちゃんと体と心を健康にしてくれる人見つけないと!」
「そう言いつつアイアンクローを止めないのはナァァァゼェェェェ…アダダダダ!」
「そりゃあ、総一郎が適当な事言ったからだよ…母さんも若い時はぁアダダダダダダ
!」
「あなた? 私は今も若いわよ?」
「(我が母の背中に阿修羅が見えるのはきっとアレ的な何かかもしれない…)」
「(生命エネルギーが溢れてますね…)」
美咲と有栖が三人を見ながら黙々と食事を続けた。
「ひどい目にあった…」
こめかみを揉むようにマッサージをしながら、自分の部屋に帰ってきた総一郎は机に向かいネットを開いた。
「なになに?…待望のパイルバンカー開発成功か?」
ゲームのまとめサイトや攻略サイトで何か使える情報はないか探していた所、一つの記事を発見した。
「プレイヤーズユニオン「薔薇乙女騎士団」に所属するホワイトローズ氏が、盾の内側につけた火薬式パイルバンカーを可憐に操り、敵をなぎ倒していく動画が公開された。ホワイトローズ氏とはその愛くるしい容姿と仕草を振りまき、たまに見せる男らしさが人気のプレイヤーである。 そのホワイトローズ氏の公開した動画の中にパイルバンカーが映っており曲芸じみたリロードシーンが拍車をかけて話題となっていた。 過去パイルバンカーを開発した人おり、コレジャナイバンカーと言われ試行錯誤の日々を送っているコヨーテ氏にインタビューをしてみた所、「ポッとでの奴に我々が日々苦労して開発、改良しているパイルバンカーを超えられた?容易く?…火薬式?…ぬぁぁぁぁぁぁぁ!デテコイィ開発者ぁぁぁ!ぶち(ピー)してやらぁぁぁぁ!」と発狂してしまった。その後、ホワイトローズ氏にインタビューをしてみた所、「パイルバンカーを作ったから宣伝してくれって友人に言われて全力でやっちゃった!てへ☆ だってすごいんだよ~!火薬独特の衝撃が体の芯に響くし、リロード時の緊張感もビンビンする!もうこれなしじゃいきていけないかも~…ん?コレジャナイバンカー?なにそれ?何年たっても結果が出せないバンカーの事はしらないよ?」といい‥‥」
総一郎はこの記事を見てすぐに右近寺に連絡を取った。
総 「ちょっと!今サイトの記事読んだんだけど大変なことになってるじゃねーかー!」
右 (いやぁ!やりすぎた感は否めないけど、あそこまで人気があるとは思わんかったw)
総 「いや、俺が言っているのはコヨーテ氏に対してヘイト上げるようなコメントがあるじゃねーか!記事読んでてヒェッってリアルで言っちまったし!」
右 (いいライバルが出来たじゃないか!w)
総 「ちょ!しょれしゃれになっとらん…」
右 (ろれつが回らなくなるほど感謝しているとは…俺!エアバイクのケイデンスが上がるほど感激!)
総 「やめなされ…やめなされ…むやみにコヨーテ氏を発狂させるのは止めなされ…」
右 (まぁパイルバンカーを世に出したらこうなるのは当たり前だよねー)
総 「まさかこんなことになるなんて…」
右 (信じて友人に託したパイルバンカーが(略 )
総 「やべぇよ…やべぇよ…俺が開発者だって銃士ギルドに行ったら簡単に判っちまうよ…」
右 (まぁその時はおとなしく(ピー)されるか撃退するしかないね!)
総 「どう見てもボコボコにされる未来しか見えない…」
右 ((スーパーの閉店時に流れる曲)さよならソウさん…どうか死なないで… )
総 「貴様ぁ!他人事ミタイニイイヤガッテー」
右 (だって他人事だし…)
総 「チッキショーーー!」
総一郎は携帯を閉じた後、ベッドに入りふて寝することに決めた。
「さて、今日はあいつを追い詰める所まで行けるかな?」
翌朝、総一郎は朝食を済ませた後、自分の部屋に戻りログインを開始した。
「ログイン完了っと、錬金術ギルドで瓶に残った液体を調べてもらうんだったな」
錬金術ギルドに向かうと入り口でアイシャが掃除していた。
「あ!ソウルさん!おはようございます!」
「おはようございます、アイシャさん、アンジェラさんはおりますでしょうか?」
「はい、いますよ~呼んできますね、中に入って少し待っててください」
「ありがとうございます、では失礼しますね」
アイシャがアンジェラを呼びに行き、ソウルが錬金術ギルドの中に入るとスクフォイが釜から武器を取り出していた。
「っぷぅ…完成っと…ふぅ…」
「おはようございます、スクフォイさん。この武器のここってもしかしてプラスチックですか?」
「プラス?…アイゼン強化素材を使いましたが…そのプラスチックとかいう奴は使ってないですよ?」
「アイゼン強化素材?…(どう見てもプラスチックなのだが…)」
「気になるならレシピが売っていますよ、あ、でも結構難しいからスキルレベルが低いとまずいかも…釜のランクも高ランクの物が必要だし…」
「う~ん…そうですか…防具制作に役に立つかと思ったのですが、お金とスキル上げしないとか…」
「防具に使うならハイファ反応素材の方を買うといいですね」
「なるほど、ありがとうございます」
「おや、ソウル? スクフォイと錬金術談義かい?よかったねスクフォイ、友人が出来て」
「ボッチみたいに言わないで下さいよ!僕にだって友達の…ゴニョゴニョ…」
「そこで人数が言えないのはボッチ特有のものさね」
「クッ…」
アンジェラが奥から現れ、スクフォイが涙目になりながらその場を去ると、ソウルは真剣な顔になった。
「その顔、何か進展があったんだね?」
「はい、ナーガの巣で見つけた遺品を届けにバルームの町に行きました。 その町は、数年前疫病に襲われとある怪しい老人から薬を買ったそうです。 ですが薬の値段があまりに高く借金する形になり、ナーガをあの鉱山へおびき寄せて留まらせれば借金はなくなる依頼を出したそうです。 その怪しい老人がバルームの水源に薬品を入れている所を町の子供に目撃されており、その薬品を入れてあったと思われる容器を回収しました。 後、関係あるか解りませんが水源にモンスターがおり討伐したらこの羽が落ちていました」
ソウルは、瓶と羽を机の上に置くとアンジェラは眉を顰めた。
「これは…もしかして…」
アンジェラが瓶を持ち、極わずかに残っている液体を見ると小さな箱を取り出し、その箱から眼鏡を取り出し身に着けた。
「ちぃ…やっぱりかい…」
アンジェラが瓶を見つめながら怒りの表情になった。
「ソウル、よくやったよ。 これはね、作られた疫病なのさ…」
「作られた?」
「そう、あの大馬鹿者はやらかしたって話は前にしたね、これがそうさ。これは水に入れると病原体が爆発的に増殖した後アルコール並みに蒸発して病気をまき散らす厄介な奴さ…名前を「トレントの吸命」 これにかかったら、ゆっくりと命が吸われるように衰弱していき、最後は干からびるような姿になって死んじまう……ハァ…これが完成した時、あの大馬鹿者は王に、これを使えば世界を手にできると愚かにも進言したのさね…でも、その進言に激怒した王がこれの完全廃棄、研究資料消去、かかわった研究員の監視をご命じなされて、すべて終わったと思ってたんだけど、まだ残っていた奴があったかい…」
「そんな恐ろしいものが…では、こちらの羽については何か?」
「これは使い魔の媒体になってた物だね、これを調べれば主を特定できるさね…ソウル…明日、明日すべて片付けるよ…もう、あの大馬鹿者に振り回されるのは疲れちまったよ…手伝ってくれるかい?」
「もちろんですよ」
「ありがとねぇ…全部終わったら何か礼をするよ、期待しておきな」
「いえ、お礼というより被害にあったバルームの町の住人の方に何かお願いします」
「ああ、それは当り前さね。 それとは別にお礼をするって話さ」
「そういう事でしたか…失礼しました。ではできる限り準備をしておきますね」
「よろしく頼むよ」
錬金術ギルドの三人に軽くあいさつした後、銃士ギルドへ向かった。そして銃士ギルドのギルドマスターゼフティに遺品受け渡しの報告と明日事が起きることを伝えた。
「すまねぇな・・つらい役やらしちまって…後わかった、俺っちも大捕り物に参加するぜ!」
ゼフティが少し豪華な箱から、銀色で所々金の装飾がされた弾丸を三つ取り出した。
「これは(マジシャンズ・キラー)っていう対魔導師用の特殊弾だぜ、ハリーちゃんと俺っちが一つずつ、最後の一発はソウルが使ってくれ」
「一発か…外したら終わりだなぁ…」
「いやね、いつもはもっとたくさんあったんだけど、ここ最近忙しすぎて補充するの忘れててさ、ハッハー!とりあえず念を込めれば必ず当たるさ!」
「‥‥そういえば時間が空いたなぁ…弾でも作るか~あ、そういえばパイルバンカーも追加で作っとこう」
「あれ?無視された?おーい!?」
製作室に籠り、人気が大爆発したパイルバンカーや部品、弾丸、炸裂火薬など時間の許す限り製作し次の日を待った。
そして次の日、朝の時間帯にログインしたソウルは、銃士ギルドで待機していた。
「そういえば、ソウルさんって防具つけてないのですね、これからひと騒動あるのに…」
「そうだね、まさか次の町に着いたら銃士ギルドが潰れかかってて、それを立て直してくれって言われていろいろ優先させることが重なってここまで来ちゃったね、最初はこの街で装備一式整えようと考えてたんだけどね…どうしてこうなった…」
「それじゃこれが終わったら俺っちがいいの作ってやるよ!
「(防具貰えるのか!)期待してる」
この会話の10秒後、アンジェラから連絡が来た。
「ソウル!今どこだい?」
「銃士ギルドにいます」
「今あたしたちは、飛龍運送でそっちに向かってる最中さね、銃士ギルドで一旦集まって作戦を立ててから行こうと思うんだけど、大丈夫かい?」
「少しお待ちを…」
ゼフティに許可を聞いてみるとサムズアップで賛同した。
「大丈夫だそうです」
「じゃあそっちに向かうよ」
「お待ちしてます」
その5分後、多くの人を連れてアンジェラ達が銃士ギルドに入ってきた。
「待たせたね…じゃあちょっと自己紹介しようか。 あたしがアンジェラ、錬金術ギルドのマスターやってるものさ、こっちのでかいのがアイン、説明はいらないね? で、この銀髪エルフが魔導ギルドのマスター デュミナイ そっちの似合わない髭を生やした優男が王国騎士団長のセルゲイさね、それでこっちがソウル、今回の功労者さ、そっちの二人は~」
「銃士ギルドのマスター ゼフティ・ランヤード です!」
「副ギルドマスター ハリーベル・ベルモンド です」
銃士ギルドの二人は、背筋を伸ばし右手をサムズアップの形にした後、心臓のある位置に置いた敬礼をした。
「さっそく作戦会議をしようじゃないか」
それぞれ軽い挨拶を交わした後、テーブルの上にこの街の地図を広げた。
「作戦は我、セルゲイが説明する。まず最初に我々騎士団がこの街を一時閉鎖した後、街役場へ即移動し容疑者達を確保、それと同時にアンジェラ、デュミナイ、副団長のアンジェリア達が魔導ギルドに突入、今回に加担した容疑者達を捕縛する形となっている! 銃士ギルドの方は街役場、魔導ギルドどちらでも構わない」
「俺っちたちは、魔導ギルドの方へ行くぜ」
「了解した」
「いいかい?あんたたち、誰一人逃がすんじゃないよ?それにあの大馬鹿野郎の事さね、何か仕込んであると思いな!」
「「「了解」」」
アンジェラの言葉に同意し、作戦が決行された。
「街の閉鎖完了しました!皆さん!どうぞ!」
兵士の一人が伝えに来るとアンジェラが魔導ギルドの扉を蹴破って入っていった。
「全員動くな!今すぐ作業を停止し兵士の指示に従いな!」
突然入ってきたアンジェラ達に驚き、その場にいたプレイヤー達も挙動不審になった。
「ぎ!ギルドマスターこれはいったい何の騒ぎですか?!」
「あなたも落ち着いて兵士の指示に従ってください」
ソウルが初めて魔導ギルドに入った時、会話した受付の女性が魔導ギルドマスターに駆け寄り事情を聞こうとしたが、取り合ってもらえなかった。
「ガメルフは上だね…」
高齢とは思えない動きで二階へ駆けあがっていくアンジェラの後を追い、一つの部屋の前で一旦立ち止まった。
「いくよ…注意しな」
やはりアンジェラは扉を蹴破り部屋の中入っていくと、驚いて紅茶をこぼしたランドリン・ガメルフがソファーに座っていた。
「ゴフォ…姉様…いきなり入ってきて儂になんか用かの?」
「もうお前に姉呼ばわりされる謂れはないよ!もうお前は弟ではないのだから!」
「ひどい事をおっしゃる姉じゃな・・一体わしが何をしたっていうのじゃ?」
「この期に及んでしらばっくれるというのかい?」
「まぁ落ち着いてくださいアンジェラさん、事実を突きつけないといつまでも惚けるでしょう?」
デュミナイが一歩踏み出しアンジェラを諫めると一つの瓶を取り出した。
「これに見覚えは?」
「あるわけがない」
「これは貴方が開発したトレントの吸命が入っていた容器です、この容器の中身が使われた形跡があるのですよ」
「それが儂と何の関係がある?確かに儂が作った物じゃが、それはすべて廃棄されたはずじゃ」
「そうですね、でも疫病にかかった町に薬を大量に持った老人が現れ、法外な値段で売り付けたらしいそうですよ、でもおかしいですよね…疫病に効く薬をなぜ大量に持っていたのか…薬に関する資料もすべて廃棄されたのに…」
「そんなことは知らん!儂には関係ない!」
「関係ない?ではこちらを見てください」
デュミナイが一枚の羽根を取り出した。
「関係ないというのなら、なぜ貴方の使い魔が町の水源にいたのですか? 危うく町人に危害が及ぶ所でしたよ!」
「そ…それは…あ!そうじゃ思い出した!前に立ち寄った所が疫病に苦しんでてな!よく知ってる疫病だったからたまたま持ってた薬を売ったんじゃ!そうじゃた、そうじゃた、あぶないから水源には近づかせないように使い魔を配置したのをすっかり忘れておった、いやーバルームの人達には迷惑をかけたのう、今度謝りにいこうかのう」
「…なぜ疫病が発生した場所がバルームだと知っているのです?私は一言も町の名を言ってないですよ?」
「だから、さっきも言ったじゃろう?たまたま立ち寄った所が疫病に苦しんでいたと、そこがバルームだと思いだしたんじゃ!儂は苦しんでる町に薬を売っただけじゃ!」
「そうですか、でも知ってますか?その薬売りの老人が高額な値段で特効薬を売りつけ、借金するという形になった時変な依頼を出したそうですよ、とある管理下に置かれている鉱山にモンスターをおびき寄せて留まらせれば借金はなくなるという依頼を…」
「グッ‥‥それは…」
「あなたは言いました、バルームで薬を売ったと、自ら薬を売った老人だと言った、薬を売った老人が水源に疫病を流し込んでいる姿を町の子供が目撃していた報告もある…では、なぜ鉱山にモンスターをおびき寄せる必要があったか教えてください」
「ええい! うるさい! うるさい!誰も死んでないから問題なかろうがぁ!ああ、そうじゃよ! すべて金の為にやったことじゃ!せっかくあそこまで這い上がったのに無能な王のせいですべて台無しになった!儂は悪くない! もう少しで鉱山が手に入り金の力で返り咲くことができたのに邪魔しやがってぇぇぇ!くそがぁぁぁぁ!」
もう言い逃れ出来ないと悟ったのか、ガメルフが暴れだし丸い水晶を掲げると巨大な鳥が現れ部屋を吹き飛ばした。
「儂はまだ諦めんぞ!まだ策は残っている!」
ガメルフが叫ぶように言った後、巨大な鳥の背に乗り北の方へ逃げていくが、ゼフティがライフルを構えていた。
「逃がすかよ!」
ライフルから発射された弾丸は、巨大な鳥の胴体を貫くとゴンドラ乗り場の方へ落ちていった。
「追うぞ!ソウル!」
ゼフティの言葉に頷きゴンドラ乗り場へ向かうと、巨大な鳥が絶命していたがガメルフの姿はなかった。
「おいあそこ!」
ゼフティが指を指し示した先に、必死にゴンドラを漕いでいるガメルフの姿があった。
「ハッハー!あいつは、どこに行こうとしてるんだ?」
「鉱山だろう…そこにナーガがまだいると信じているから」
ソウルはゴンドラに乗りゼフティが船を漕ぎだすと後ろから声が聞こえてきた。
「ソウル!もう終わらせてやってくれさね!これ以上あいつを生かしておいたらまた悲劇が生まれるから…」
悲鳴にも似たアンジェラの言葉にソウルはただ、黙って前を向いた。
「ハァ…ハァ…手漕ぎってこんなにきつかったのか…で…どうするんだ?…捕縛しなきゃいけないけどアンジェラさんは殺してくれって頼んでる」
「まだ悩んでいる…でも撃つならちゃんと自分の意志で撃つよ、誰かに頼まれたから、誰かの想いだからじゃなく自分の意志と覚悟を持って引き金を引く」
「‥‥‥そうか…フッ…ハッハー!俺っちちょっと疲れたから後から行く!先に行ってくれ!」
「わかった」
そして、ソウルは鉱山へと向かって行った。
「出てこいナーガぁぁぁぁ! なぜいない! これではあいつらに復讐できないではないか! なぜだ! なぜ儂だけこんな思いをする! 儂は悪くないのに! ふざけるなぁぁぁ! 他のやつらだって汚いことして金を稼いでいるのに何で儂だけがぁぁぁ! くそがぁぁぁぁ! 許さないからなぁぁ! 殺してやるぅぅ! 儂を見比べる奴らも! 儂を否定した奴も! 儂をあざ笑う奴らも! 子供の臓物を引き裂き親に食わして絶望の内に殺してやるぅ! 必ずだぁ! いい加減出てこいナァァァガァァァァァ!」
「…愚かだな」
坑道内が魔法で明るく照らされ、あちらこちらに怒りと雷魔法をぶつけているガメルフの後ろに立ったソウルは、つぶやくように言った。
「誰だ?!…貴様…そうか貴様か!貴様がすべての元凶かぁ!」
雷魔法を撃とうとしたガメルフは発動と同時にソウルに杖を向けたが、それよりも早く発砲し杖を破壊した。
「糞がぁ!儂が愚か者だと!ふざけるなぁ!」
「もう一度言う、あんたは愚かだよ…他人の功績で身を飾り、他人の命を糧にする、そんなお前でも協力してくれた人達がいたはずなのにそれらを忘れ、諦め、捨てた…全部お前が招いた事なのに俺は悪くないと他人のせいにする」
「うるさいうるさい! 貴様にわかるはずがない!儂の苦しみを心の痛みを!」
「黙れ! 貴様のようなものが心を語るな! そういう貴様は理解してたのか?! お前がバカやってもまっとうな道へ戻そうとしたアンジェラさんの心は! お前の境遇に同情し魔法を教えてくれた人の心は! 町の人たちの為に依頼を受け死んでしまった男の心は! その男の帰りを待つ女の子の心は! お前は一つでも理解できたのか!」
「そんなもの知るかぁ!ゴミ共の心なんぞ儂のに比べたら糞じゃぁ!」
「そんな…物…だと…ゴミだと…糞だと‥」
ソウルの何かがぷつんと切れた。
「よくわかった…」
「ふん!その糞が詰まった頭で何を理解したというのだ!」
「この弾丸が貴様を裁く!」
銃にゼフティからもらった弾丸を装填した。
「裁くだと?!ほざくな!」
ガメルフが懐から短杖を取り出し二人は対峙した。それからしばらくの静寂の後一滴の雫が地面に落ちた。
「死ねぇ!」
ガメルフが雷魔法を発動し、ソウルはガメルフに向かってパイルバンカーを投擲した。
「ちぃ!」
ガメルフは投擲されたパイルバンカーを躱し視線を戻した。
「!?」
そして最後にガメルフの目に映ったのは、ウエスタンハットを深くかぶり顔を隠したソウルが、ガメルフの眉間に銃を突き付けていた姿だった。
ポリマーからプラスチックに変更しました。ちなみにポリマーは単一で結晶化した物、プラスチックはポリマーにいろいろ混ぜて成形した物らしいそうです!
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