終章 それぞれのレゾンデートル その5
終章 それぞれのレゾンデートル その5
国防軍関東支部、ロボット兵器収納エリア最奥部。
「おぉ!」
「これはまた」
「ふふ、大きいわね♪」
俺たちは、師範と他隊員に幻獣を任せ、文輝隊長の案内により、ロボット兵器産業エリアの最奥部に来ていた。
こちらにも様々なロボット兵器が置かれていたが、今、俺たちの目の前には一際大きな人型ロボットが置かれていて、俺たちは感嘆の声を上げていた。
「はっはっは! いい反応をしてくれて、嬉しいよ」
文輝隊長は得意気に笑っていた。
「父さん、これは一体?」
鈴原先輩が尋ねると、文輝隊長はすぐに真剣な表情に戻っていた。
「今日から試験導入された、最新型のロボット兵器でな。高さ15メートル、幅4メートル、奥域3メートル、重さはなんと55トン! 超超大型自律型決戦兵器というものだ」
決戦兵器、か。確かに、その名に相応しく様々な兵器を積んでいそうだ。中でも目に付くのは、両肩の大きな砲身だ。
「文輝隊長、あれは?」
俺は、その目立つ大きな砲身を尋ねる。
「おー、いい所に目をつけたな! あれが今回の調査で君たちに使って貰う、EML、電磁砲だよ」
「え、電磁砲!? というか今、俺たちに使って貰うって?」
予想外の回答に、俺だけでなく、周りのみんなも動揺していた。
「あぁ、すまない。勝手ながら決めさせて貰った。周辺のロボットによる襲撃、また、当施設内の謎の獣たちによる襲撃、それらは全て、ブラックフォール、あの黒い球体が現れてから起きたことだ。早めに対処すべきとの判断だ」
文輝隊長は、真剣な表情で話を続ける。
「もちろん、勝手に決めたことだ。それに、かなり危険を伴うだろう。無理強いはしない。本来であれば、学生である君たちに任せる事ではないのだからな」
俺たちの表情をジッと見てくる文輝隊長。
俺たちは、誰から言うでもなく、お互いに顔を合わせ、それぞれ頷き合った。
「父さん、その任務、引き受けます!」
鈴原先輩が、代表して答えてくれる。
「そうか! やってくれるか!」
「はい! その代わり、父さんも警備の方を頼みます!」
「もちろんだ! それが隊長である私の役目だからな!」
鈴原先輩と文輝隊長は、お互いに拳を突き合わせた。
なんというか、親子の仲の良さが分かる。
「よし、それでは簡単に作戦内容と、このロボットの操作を説明しよう。時間がないから急ぐぞ」
『それじゃあ、さっき教えた通りやってくれるか? そうすれば出発できるはずだ!』
ロボットの外から文輝隊長が指示を出してくれる。
ちなみに、俺たちはというと、操作説明を受けた後、ロボットの中にいた。
ロボットの中は、六畳間よりは少し小さいくらいで、7人だと少し狭いが、まぁ座席が用意されているから問題はない。
「えっと、ここを、押すんだったか?」
「大丈夫ですか、鈴原先輩?」
先程教えてもらったばかりで、鈴原先輩は恐る恐るロボットの操作をしている。
(うーん、つまんないな〜。そうだ♪)
「にひひ♪ ここをエイッ!」
ポチッ!
「おい、明凛朱、今何を……」
急に明凛朱が動いたので、何をしたのか尋ねようとしたが、それも無駄に終わった。
「わぁーーー!」
「きゃああああ!」
「にひひっ♪ たっのしい!」
ロボットが急に動き始めたと思ったのも束の間、急加速で上空へと飛び立ったのだ。
『まさかいきなり最高速度で飛び立つとは思わなかったな。ってもう聞こえていないか。頼んだぞ、みんな』
「さてと、息子に頼まれたことくらいは、しっかりと果たさないとな」
文輝隊長は、幻獣が出た現場へと急いで戻っていった。
上空。
一定高度まで上昇したロボットは、自律飛行モードへと移行。予め設定された、黒い球体に向かって移動していた。
「にひひ♪ 楽しかったわね♪」
「明凛朱、お前な、勝手な行動をとったら駄目だろ? 見ろ、鈴原先輩は青ざめてるぞ」
俺は右隣りの明凛朱に注意しながら、左隣りの鈴原先輩を指差す。
鈴原先輩は、呆然とし、今にも意識を無くしそうだ。
「大丈夫ですか、鈴原先輩?」
「あ、あぁ、なんとかな」
俺は他のメンバーを確認する。
鈴原先輩の隣りに座る如月会長は流石というか、涼しい顔をして紅茶を飲んでいる。
こちらの視線に気づいたのか、顔を向け、
「ふふ、楽しかったわね♪ 紅茶、宇佐見くんも飲むかしら?」
「いえ、結構です」
紅茶を飲むか聞いてきた。如月会長は大丈夫のようだ。
「だ、大丈夫、晃?」
「あぁ、大丈夫だけど、いやぁ死ぬかと思ったぜ」
後方の席にいた朋と晃は平気そうだ。
最後の一人、同じく後方の席に座る麗先輩を見る。
(良かった、無事のようだ。ん?)
麗先輩は、見た感じ無事のようだったが、違った。目を開けたまま気絶している。
「麗先輩! しっかりして下さい!」
俺は慌てて能力を使って、麗先輩の意識を戻した。
「あ、あれ? わたし、どうしたんだっけ?」
「良かった、意識戻りましたね」
「え、どういうこと?」
麗先輩は何があったか分からないという感じだった。
と、自動飛行で黒い球体に向かっていたロボットが急に飛行をやめ、その場で漂い始めた。
『目標接近、射程圏内に入りました。これよりEMLモードに移行します。照準内に目標を捉え、レバーを引いて下さい』
機械的な音声がロボット内に響き渡る。
俺たちは、前方にある大きなモニターに映し出された黒い球体を確認した。
「いよいよか」
鈴原先輩が固唾を飲む。
「大丈夫ですか?」
「あぁ。緊張しないと言ったら嘘になるが、父さんが任せてくれたんだ、しっかりと務めを果たすさ」
鈴原先輩は力強く頷く。そして、レバーへと手を置く。その手は少し震えている気がした。
「ふふふ♪ 大丈夫、鈴原くんならできるわ♪」
と、如月会長が応援する。
「鈴原先輩なら大丈夫ですよ!」
「頑張って下さい、鈴原先輩!」
晃と朋も二人なりに応援している。
「ほんとは明凛朱が撃ちたかったけど、今回は譲るわ♪」
明凛朱も珍しく大人な? 対応だ。
「鈴原先輩、頑張って下さい!」
麗先輩はグッと拳を握って応援している。
「鈴原先輩、お願いします!」
「ありがとう、みんな! それじゃあ、撃つぞ! ダブルEML、発射!」
「「いっけぇーーー!!」」
黒い球体に照準を合わせ、鈴原先輩はレバーを引いた。
ロボットの両肩に備え付けられた砲身から二つの電磁砲が同時に発射される。
マッハ6のスピードで撃ち出された電磁砲は、あっという間に黒い球体に激突!
したはずだったが……。
「なんだ? 飲まれた!?」
二つの電磁砲は確かに黒い球体を捉えたはずだったが、衝撃らしいものはなく、それだけでなく、電磁砲そのものを球体内に飲み込んだ感じだった。
「まさか、失敗か?」
誰もがそう思ったその時だった。
黒い球体の周りが急に揺らいだと思うと、一気に膨張し始めたのだ。
「なんで急に大きく!?」
「このままじゃ、俺たちまで飲み込まれるぞ!」
「みんな、何かに捕まりなさい!」
こうして俺たちは、急に膨張した黒い球体に飲み込まれ、その内部へと入ってしまったのだった。




