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Fランク能力者の存在理由‐レゾンデートル‐  作者: トウミ
第4章 幻獣の棲む島

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第4章 幻獣の棲む島 その6

第4章 幻獣の棲む島 その6


「ふっ! はっ! せいっ! 一の型、虎月!」


霧の中を、楽々浦先輩の手を握りながら移動し続け、時折襲ってくる大型の猿や、大型の犬といった、見たことのない生き物を斬り倒していく。

左手が使えないので、使える技は限られるが、まぁなんとかなってはいる。しかし、


「他のみんな、見つからないですね、楽々浦先輩?」


「うん、そうだね。どこにいるのかな?」


あれからまだそこまで時間は経ってはいないものの、一緒に島に来ていた他のメンバーが全く見つからない。


(というか、霧が段々と濃くなってきてるような? 今、自分たちがどこまで来て、どこまで行けばいいのかも分からないな)


ふと、後ろを歩いていた楽々浦先輩が足を止める。


「どうしましたか、楽々浦先輩? 疲れましたか?」


「ううん、そうじゃないんだけど、今更になるんだけど、一つ提案があって。あのね、宇佐見くん……」





「あっ! いたよ!」


朋のグローブを盗んだ、角の生えた猿を追いかけ続け、ようやくその後ろ姿を捉えた晃と朋。

朋は後ろにいる晃に声をかけた。


「よっし! 姿が見えたらこっちのもんだぜ! 行くぜ、朋?」


「うん! よろしく!」


晃は、自分の足にグッと力を込める。

そして、自身の加速する能力、『アクセレラシオン』を発動し、一気に猿までの距離を移動する。


猿は、後ろから迫る気配を察知し、慌てて逃走しようとするも、残念ながらそこで御用となった。


「よっしゃあ! 猿を捕まえたぜ! 朋、ほらっ!」


能力を発動させ、猿を素手で捕まえた晃は、猿の盗んだグローブを取り返し、朋に渡した。


「あらがとう、晃! よっし、これでわたしも本調子よ!」


晃は、猿を開放すると、猿は霧の奥へと走り去って行った。


「もう人の物、盗むんじゃねぇぞ!」


キキーッと、鳴き声だけが辺りに響いた。


「さてと。なぁ、朋?」


「ん、なぁに?」


「ここ、どこだ?」


「さぁ?」


猿を追いかけるのに夢中で、晃と朋は、自分たちがどこにいるのか分からなくなっていた。




「ふふふ♪ キリがないわね」


「なんなんだ! この獣たちと、霧は!」


如月会長と鈴原先輩のいる場所には、霧の中から途切れることなく小型の犬や猿のような獣が現れ、二人を襲い続けていた。

それを二人は、移動しながら対処していた。


「く、斯くなる上は! 如月会長、少しの間、止まっていて貰えますか?」


「あら、何か提案かしら?」


走りながら、器用に能力を使いながら襲ってくる獣たちを倒していた如月会長は、その足を止める。


「ありがとうございます」


鈴原先輩は、お礼を述べ、懐から所持しているナイフを全て取り出す。

と、同時に、ナイフに自身の能力、『コードナー』を発動。

動きを止めた二人に、一斉に襲いかかる獣たち。


「今だ! ナイフスポット!」


ナイフを、襲ってくる獣たちの移動先に座標移動させる。獣たちは、勢いそのまま、目の前に現れたナイフに次々に刺さっていった。


「あら、やるじゃない、鈴原くん♪」


「ふ、こんなものだ」


鈴原先輩は得意げな顔で、かけているメガネをクイッと中指で上げる。


「さてと、あとはこの霧ね」


「如月会長の能力で消せないのですか?」


鈴原先輩が尋ねると、如月会長は首を横に振る。


「無理ね。霧が“一つのもの”なら消せるけど、残念ながら水分の集合体みたいなものだもの。触れた水分のみしか消せないわ」


「そうですか。くそ、霧が発生しなければ良かったのだが」


「待って、鈴原くん。それだわ!」


如月会長の言葉に、鈴原先輩はハッとした。


「そうか! 宇佐見なら!」




相楽宗有は、霧の中を黙々と歩き続けていた。


(ふむ、そろそろかの?)


向かう先が、徐々に明るくなっていく。

霧が薄くなり、この先が霧の向こう側だった。


霧を抜けると、そこは広い野原だった。


「ほほ、どうやら正解だったようじゃの?」


相楽宗有は辺りを見回す。すると、そこは、朝に自分が来た時と同じ、島の光景が広がっていた。


「やはり、おじいさんが一番早く抜けてきましたね」


突然、どこからか、若い女性の声が聴こえた。


「誰じゃ?」


相楽宗有が問うと、どこからともなく黒い蝶が大量に飛んできて、一箇所に集まり、そして、蝶が再びどこかへ飛び立つと、そこには着物姿の妖艶な女性が立っていた。


「わたしは、黒キ原点の一人、“エンチャント”よ、相楽宗有さん。まさか、あなたのような大物がここに来るなんて想定外だったわ」


「黒キ原点、か。綺麗なお嬢さんじゃが、こりゃ得体が知れないわい」


「うふふ、ありがとう。嬉しいわ」


相楽宗有は、ジリッと右足を一歩、前に出す。


「さて、お嬢さん。そろそろ“あれ”を解いてくれんかの?」


そっと後ろに指をさす。そこには、先程までいた霧があった。


「あら、怖いわね。解かないと、そのまま居合いで斬られてしまいそうね。ただ、残念だけど、あの霧は一度発動したら、解けないのよ。だから、あなたのように自力で出てこないといけないのだけど……あはは♪」


「何が可笑しいのじゃ?」


「残念ながら、時間切れね。霧があの濃さになったら、もう出てこれないわ。壊さない限りは、ね」


すると、今度は相楽宗有が笑い始める。


「ぶわっはっはっは! こりゃいいわい」


女は、少しムッとした表情で尋ねる。


「一体、何が可笑しいのかしら?」


「いや、なに、お嬢さんは壊さない限りはと言ったじゃろ? それをできる者がおると言いたいのじゃよ」


「わたしが、あなたを自由にさせると思う?」


「いや、わしじゃない。ほれ、そろそろじゃ」


相楽宗有がそう言うと、後ろの霧が突如として、一気に霧散した。そして、そこに男女6名が姿を現した。


「やりましたね、楽々浦先輩!」


「宇佐見くん、ありがとう!」


「お、見ろよ! 霧が晴れたぞ、朋。って銀! 楽々浦先輩!」


「あ、ほんとだ! というかみんないる!」


「如月会長、これは」


「ふふふ、宇佐見くんがやってくれたわね♪」


その光景に、相楽宗有は微笑む。

そして、女は驚愕の表情を浮かべるのだった。




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