第3章 能力消失事件 その3
第3章 能力消失事件 その3
6月18日金曜日、未明。繁華街エリア。
「はぁ、はぁ、はぁ、くそっ!」
「探せ! 探せ! まだこの辺りにいるはずだ!」
繁華街エリアにて、一人の男が逃げていた。
その男は、先月の学校襲撃に利用されたロボットを横流しした主犯の一人だった。
そして、それを追うのは、犬山の捜査班、警察だった。
「くそ、まだ捕まるわけには。せめて、あの工場のロボットがあれば、こんな奴らなど……」
男は以前、都内の武器工場で働いていた。
そこでは、兵器用ドローンや兵器用ロボットなど様々な武器を生産していたのだが、反能力者主義が複数働いているという情報が漏れ、3年前に稼働を停止した。
しかし、生産途中のままのものはそのままにされていたため、男はそれを利用し、先月の事件へと利用した。
が、それも先程、警察に押収され、男はここまで逃げてきていた。
「なぜ、能力者が生きて、我々が、無能力者が淘汰されなければならないんだ? くそっ!」
と、男の前に一人の少年が突如姿を現す。
「だ、誰だ!?」
「おじさんにプレゼントを用意したんだ。良かったら役に立ててよ」
男の問いには答えず、少年は勝手に男にそう話すと、現れた時と同じように、一瞬にして姿を消した。
それと同時に、少年がいた場所にはいくつかのの兵器用ロボットと、兵器用ドローン、それから一つの記憶媒体が置かれていた。
「ハハハ! どこの誰かわからないが、これはいい! しかもどれも自律型じゃないか! これは、何かの記憶媒体か」
男が喜んでいると、そこに警察が数名やって来る。
「いたぞ! な、なんだ!? 気をつけろ! 犯人は兵器用ドローン、ロボットを所持している!」
男は警察の方へ顔を向けると、にやっと不気味な笑みを浮かべ、ドローンとロボットに命令を与える。
そして、繁華街エリアの一部で爆発が起こり、多くの悲鳴が上がった。
18日、朝。学生寮、自室。
俺は目の前の状況に、頭がついていかなかった。決して寝起きだからではない。
いや、寧ろ、寝起きから一気に目覚めるくらいハッキリとしている。つまりは、ハッキリしている原因が目の前にあるわけで。
俺の目の前には、子柄で金髪(いつもはツインテールで、今はある意味レアなストレート)の女性が同じ布団で寝ている。
(えっと、なんで? なんでここに?)
自分の部屋にいるのは知っている。
昨夜、訪ねて来てくれて、一緒にビーフシチューを食べた。それから、一緒に談笑していたのも覚えている。
その後、この金髪の人物が眠ってしまい、仕方がないので、自分の寝室のベッドまで運び、俺は来客用の布団をリビングの絨毯の上に敷いて寝た。
だから、同じ布団に寝てるはずがないのだが……。
「ん〜、むにゃむにゃ、えへへ〜」
楽々浦先輩はなぜか一緒の布団に寝ていた。
というか、寝言まで子どもっぽい。本人に言ったら間違いなく怒るだろうが。
このまま寝顔を見ててもいいが、今日は平日、6時前なので、まだ時間的には余裕があるが、いずれは起こさないといけない。
(やれやれ、たぶん夜中に寝惚けてここまで来たんだろうな。とりあえず朝ご飯までこのまま寝かせておくか)
そう考えていたが、突如、部屋の入り口がノックされた。
(誰か来た!? 起こしたらすみません、楽々浦先輩)
俺はそっと、楽々浦先輩の肩に手を置くと、俺のベッドへと“戻した”。
そのまま、急いでドアへと向かい、ドアの向こうへ尋ねる。
「はい、どなたですか?」
「朝早くすまない、宇佐見、良かった、起きてたか」
ドアの向こうから聴こえた声は、鈴原先輩だった。ドアを開け、玄関へと鈴原先輩を入れる。
「どうしたんですか、朝早くから?」
「あぁ、実は生徒会棟で緊急会議を行うんだ。では、伝えたからな? できるだけ急いで来てくれ」
それじゃと、去ろうとする鈴原先輩に、俺は気になり尋ねる。
「鈴原先輩、他のメンバーには?」
「ん? あぁ、それなら安心してくれ。中森は次に向かう。早瀬と楽々浦は、如月会長が向かってるはずだ」
「そ、そうですか。それじゃあ、また後で」
鈴原先輩が去っていくのを確認し、俺は急いでドアを締めて、寝室へと向かう。
寝室では、相変わらず、楽々浦先輩が寝ていた。
「先輩! 楽々浦先輩! 起きて下さい! 大変です!」
そう声をかけると、楽々浦先輩は、なに〜? と言いながら、目を擦りながら起きた。
そして、自分のいる場所と俺の顔を交互に見比べて、状況を理解して、ハッキリと目が覚め……、
「あれ? どうしてわたしの部屋に宇佐見くんが?」
覚めていなかった。
俺は急いで状況を話し、それから、今起きている自体を説明する。
楽々浦先輩は、すぐに理解してくれたようで、どうしたらいいか尋ねてくれた。
俺は一つ提案し、楽々浦先輩はそれに従ってくれた。
生徒会棟前、いつものメンバーが集まってくる。
そこには、いつもと同じように金髪ツインテールにした楽々浦先輩もいた。
「おはよう、宇佐見くん」
「おはようございます、楽々浦先輩」
違和感のないように、挨拶を交わす。
楽々浦先輩が、近づいてきて、小声で話しかけてきた。
(なんとか間に合ったよー。宇佐見くん、ありがとう)
(いえ、うまくいって良かったです)
(それにしても、“対象者が思い出した場所に戻せる”なんて、やっぱり宇佐見くんの能力はすごいね)
(楽々浦先輩がしっかり思い出したからですよ。曖昧な情報だったら戻せてません)
対象者が思い出した場所に戻す、博打だったが、うまくいって良かった。
二人で一緒に笑いあった。
「ふふ、朝から仲がいいわね、二人とも♪」
気づいたら如月会長にからかわれていた。
「さて、みんな揃ったことだし、さっそく中に入りましょう。緊急事態だから、早く会議を行うわよ」
「如月会長、一体何があったんですか?」
俺は誤魔化すように如月会長に尋ねる。
「それは、中にいるゲストから詳しく聞けるわ。さぁ、行きましょう」
ゲスト? と思いつつ、生徒会棟に入ると、中には、熊のように大きい、見知った顔があった。
「犬山さん!」
「おー、あの時の! なかなかの活躍だったと、鈴原くんから聞いてるよ!」
「ありがとうございます」
犬ではなく、熊のように大きな警察官、犬山さんがそこにはいた。
「犬山さん、おはようございます。緊急事態なんですよね? さっそく要件をお願いします」
如月会長が真面目な顔で尋ねると、犬山さんも真面目な顔で答える。
「わかった。情けない話だが、どうか聞いて欲しい。生徒会のみなさん、どうか私達を助けてくれないか?」
そう言うと、なんと、犬山さんは、俺たちに深々と頭を垂れた。
その光景により、相当の緊急事態が起きていることがはっきりと分かった。




