第3章 能力消失事件 その1
第3章 能力消失事件 その1
「これで9人目ですね、会長」
「えぇ、そうね」
(正確には、わたしを入れると10人、か。やはりあの時の少年が? それとも別の何かが?)
「しかし、なぜ急に能力が使えなくなったのでしょう?」
「それは、現段階ではわからないわね。とりあえず、ちょうど明日で期末テストも終わるから、一度みんなに集まって貰いましょう」
6月16日水曜日。
月曜日から三日間に渡って行われていた期末テストも、ちょうど今終わった所だった。
テストが終わったことからの解放感から喜びを爆発させる人、安堵する人、絶望する人などなど、様々な反応が教室中から伺える。
喜びを爆発させる奴が、ここにも一人。
「やっと、終わったー! なぁ銀、どうだったよ?」
「まぁ、いつも通りだったよ」
「いやいや、それめっちゃできたやつじゃねぇか」
テストが終わり、後ろの席の晃が話しかけてきた。テンションを見るに、思った以上にできたのだろう。
「それは、そうでしょ。宇佐見くんは晃と違って、いつも勉強できるんだから」
「それもそうか。で、朋、お前はどうだったんだよ?」
窓側の席の朋が、こちらの話に加わってきた。
朋も気持ち少し明るい感じがする。
「わたし? わたしもいつも通りよ♪ てか、晃は今回は良かったみたいね?」
「そりゃあそうよ! なんたって、今回は銀先生に勉強を見てもらったからな!」
こんな感じで、晃と朋と話をしていると、ふと、教室前の廊下に見覚えのある金髪ツインテールが見えた。
「先輩! 楽々浦先輩!」
呼びかけると、こちらの声に気づき、教室の外から笑顔で手を振ってくる。
「宇佐見くん! テストお疲れ様! 良かったぁ、この教室で合ってたんだね♪」
「楽々浦先輩もお疲れ様です。何かあったんですか?」
「うん、宇佐見くん、テストが終わったばかりでごめんね、生徒会棟に来て欲しいんだ。中森くんと早瀬さんもいいかな?」
「はい!」
生徒会棟内。緊急会議。
「能力がなくなった!? それは本当なんですか?」
如月会長からの発表に、耳を疑った。
6月に入ってから昨日までに、9名の学生たちが能力をなくしたのだと言う。
「あぁ、事実だ、宇佐見。俺と会長で全て確認している」
俺の疑問に対し、鈴原先輩が深刻な表情で答えてくれる。
「原因は分かってるんですか、会長?」
朋の問に対して、如月会長は首を横に振る。
「残念ながら、分からないわね。未だに調査中よ」
如月会長は悔しそうに語る。
「この件に関しては引き続き調査。今は各自、不用意に出掛けないように。問題が問題だから何か分かったらすぐに知らせます。」
能力の消失。今までそんなことは聞いたことがない。さすがの如月会長もお手上げという感じだろうか。
「もう一件、こちらは近いうちにみんなに動いてもらうわ。鈴原くんお願いします」
鈴原先輩は、頷き、話し始める。
「先月のテロ事件に使われたロボットだが、出処が判明した。商店街の地下で見つけた残骸も含め、どうやら都内の廃工場から持ってきたものだったみたいだ」
「廃工場? ロボットのですか?」
「半分正解だ、宇佐見。ロボットだけでなく、ドローン、それから武器なんかを生産していたようだ。今は稼働していないがな」
なるほど、それならあれだけの量を調達できたのも納得できる。
「鈴原先輩、その廃工場、場所はどこなんですか?」
「ん? この学校から北に3キロの地点だが?」
「なるほど、なら一度行ったことがありますね、小学校の時ですが、稼働中の工場を見学したことがあります」
「宇佐見、何を言って……そうか!」
そう言うと、鈴原先輩は慌てて如月会長の方を向く。如月会長は既に察知してくれていた。
「それでは、廃工場の調査は宇佐見くんに任せるわね。ロボットを横流ししたテロ事件の主犯の一人がまだ残ってるから、それだけ気をつけて。まぁ、宇佐見くんなら大丈夫でしょうけど♪」
「はい!」
「大丈夫、宇佐見くん?」
心配そうに尋ねてくる楽々浦先輩。
そんな先輩の頭に、ポンポンと手をそっと置いてみる。
「大丈夫ですよ、任せて下さい」
「う、うん、気をつけてね」
そう言う先輩の顔は、ほんのり赤く染まってるように見えた。
作戦決行日は、追って連絡するということで、本日の緊急会議は終了、如月会長を残し、最後に生徒会棟を出ようとした時、如月会長に呼び止められた。
「ごめんね、宇佐見くん。ちょっとあなだけ残って貰えるかしら?」
「どうしたんですか?」
「宇佐見くん、わたしに能力を使って欲しいのよ」
「え?」
如月会長の急な申し出に、俺は一人、困惑したのだった。




