表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/64

幕間 その2

幕間 その2


周りを見ると、カップル、カップル、カップルと、店内は見事にカップルだらけ。

そんな店内に、俺と楽々浦先輩が一緒にいるわけで。

なぜこんなことになってるかと言うと、そう、それは今から40分程前。




学校、正門前。

訓練を終えて、シャワーを浴び、簡単に荷物を持って到着する。

そこまで待たずに、楽々浦先輩もやってきた。


「宇佐見くん、お待たせー。へぇー、そういう私服なんだね?」


グレーのパンツに、白のシャツ、それから水色のジャケットというシンプルな格好なのだが、普段が制服なので、確かに私服姿は珍しいかもしれない。


「楽々浦先輩も、可愛い私服ですね」


楽々浦先輩は、ツインテールを青のリボンで結び、白のタンクトップに半袖のグレーのパーカー、下は黒のホットパンツにニーソと、絶対領域がまぶしい。


「えへへ、そうかな?」


「そうですね、子どもっぽくて似合って、痛っ!」


調子に乗っていたら蹴られた。


「もうっ、また馬鹿にして! ほら、行くよ」


「行くってどこに?」


「ちょうどお昼時でしょ? わたし行きたいところあったんだ♪ 一人だと入りづらくて、ダメかな?」


そんな、上目遣いに聞いてくるのは流石にずるい。断りづらい。まぁ、もともと断るつもりはなかったから、ここまで来たわけだけど。


「大丈夫ですよ。では、行きましょう」


「やった! それじゃ、こっちだから付いてきてね」


楽々浦先輩は、明るい足取りで、先に進んで行った。俺は、そんな光景を微笑ましく思いながら、付いていった。


5分程歩き、繁華街の中にある、レストラン前に到着。今思えば、この時に異変に気づけば良かったのだが、お腹が空いていたからか、全く気づかなかった。


「ほら、宇佐見くん、ここだよここ! 最近できたばっかで、ずっと来たかったんだけど、一人だと来づらくて」


「へぇ、確かにメニューも美味しそうですね。それじゃあ入りますか」


「うんうん」


そして、二人で店に入ると、すぐに店員が一人やってきて、声をかけてくれた。


「いらっしゃませ! 何名様ですか?」


「二人です」


そう答えると、なにやら店員さんは俺たち二人を交互に見比べ、何かに納得したような感じになり、


「二名様、いらっしゃませー。お似合いですね。では、奥にどうぞ♪」


そう言って、俺たちを店の奥の方へ案内したのだつた。




そして、今に至る。

よく見ると、“本日カップルデー”というポップが店内のいたるところに貼ってある。

メニューもカップル用と書いてあった。なぜ、外でメニューを見た時気づかなかったのか。

空腹というのは、こうも判断力に作用するのか。


ふと、ここに案内されてから一言も発しない、向かいの席に座った楽々浦先輩を見ると、顔を真っ赤にして俯いている。

それもそうか、確かに恥ずかしいだろう、カップルデーと知らずに入ってきたのだから。


「楽々浦先輩、大丈夫ですか?」


「え? う、うん! もちろん大丈びゅ、だ、大丈夫」


思いっきり舌を噛んだ気がしたが、気づかなかったことにした。


「ほ、ほら、せっかく来たんですから、何か食べましょうよ。美味しそうですよ。これなんてどうですか?」


ただ座ってるだけだと埒が明かないので、とりあえずメニューを見せながら、テキトーにメニューに指を差す。


「そ、そうだよね! お腹空いたし、何か食べないとだよね! じゃあとりあえずそれを……」


ぼふっと楽々浦先輩の頭が鳴った気がした。

慌てて、自分が差したメニューを見てみると、“カップル限定♪ラブラブフレッシュジュース”と書かれていた。


「す、すみません! よく見てなくて……」


そう言って、メニューをしっかり見ようとすると、ガシッと、楽々浦先輩にメニューを掴まれた。


「ううん、大丈夫! 宇佐見くん、それ頼もう!」


「え?」


「あと、お腹も空いてるからね! これと、これ、これも頼もう。うん、そうしよう」


何やら吹っ切れたのか、暴走したのか、楽々浦先輩は次々に注文を決め、気づいたら店員さんを呼んでいた。


“二人であーんバーグ”に“愛する人の名前を書こうオムライス”などなど、どれもがカップル用のメニューだったが、気づくとテーブルいっぱいに並べられ、二人で食べきった。

最後に例のジュース(ハート型のストローで二人で飲む)も飲み、お店を出た。




「宇佐見くん、ごめんね! カップルデーなんて知らなくて!」


「いえ、謝らないで下さい、楽々浦先輩。恥ずかしかったですが、結構楽しかったですし♪」


そう言うと、楽々浦先輩は嬉しそうにしてくれた。


「そ、そう? なら良かったー。ありがとう、宇佐見くん」


「まぁ、ほとんど味を覚えていないんですけど」


「あはは、わたしも」


「今度、また普通の日に来ましょうか、味を覚えれるように」


「うん!また、来ようね!」


二人にとって、人生で一番味を覚えていないレストランになったが、人生で一番思い出深いレストランになったことだろう。


俺たちは、再度このレストランに来ることを約束して、学生寮へと戻るのだった。


3連休初日はとても濃い一日になった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ