第2章 反能力者主義 その4
第2章 反能力者主義 その4
同じく日曜日。
警察署を出た俺たちは、その後、鈴原先輩の用意してくれた資料を基に、声かけ事案の被害にあった生徒を全員探し出し、話を聞いて周った。ちょうど今、学生寮にいた生徒で一通り終えたとこだった。
(気になったのは、“何の能力か聞かれた”という人が大半ということか。誰かを探していたのか? それと、犯人の特徴がバラバラのとこ。やはり構成員は今でも多いのか?)
「銀、大丈夫か?」
「ん? あぁ、悪い、少し考え事をしてた」
「それで、宇佐見くん、今日はどうするの?」
「どうするって、あ……」
休みの日ということで、探すだけで時間がかかり、気づけばもうすぐ日没だった。
「そうだな、これ以上目新しい情報はなさそうだから、今日は夜間任務を行うか」
「おっし! それじゃあ、繁華街と商店街どっちにするんだ?」
「晃、ほんと元気ね~。まぁわたしも体動かす方が好きだけど」
「まったく、仕方ないな二人とも。なにか起こってほしいみたいじゃないか。まぁ、気持ちは分かるけどさ。とりあえず商店街に行こう。不思議な鳴き声というのが気になる」
俺たちは夜間任務のため、商店街へと向かった。
18時。商店街に着いた俺たちは、さっそく不思議な鳴き声の調査を開始した。
そして、すぐに、鳴き声はどうやら西側の地下から聞こえるという、体験者の共通事項を見つけた。
「あった! あったよー!」
朋が元気な声で俺たちを呼ぶ。
昨日、本を取りに来た例のロボット製品店(どうやら日曜日が定休日らしい)の脇道に、地下へと降りられる梯子を見つけた。
俺たちはその梯子を降りてみることにした。
「へぇ、商店街の地下がこんな感じになってたなんてな」
晃が驚きの声を上げる。
地下へと降りた俺たちは、予想外の地下の広さに驚いていた。
上の商店街と同等か、もしくはそれ以上の広さがあるように見える。
だいぶ奥の方まで伸びているようだった。
「なぁ、銀、この先ってどこに向かってるんだ?」
「そうだな、方角的に繁華街方面、どこまで続くか分からないけど、繁華街の先は学校か」
なんて会話を晃としていると、
「ねーねー! 見てよこれ! なんかいっぱいあるよ!」
いつのまに移動したのか、朋が奥の方から声をかけてくる。
急いでそちらに向かうと、そこには信じられないものがあった。
「うお、なんだこれ! 全部ロボットじゃねぇか!」
晃が声を上げるのも無理ない。小型、中型のロボットの残骸が山になるほど大量にあったからだ。
先に見つけていた朋はというと、「すごいすごい!」と言いながらその山の上でぴょんぴょん跳ねている。
(これは一体? なんで地下にこんな大量のロボットの残骸が?)
いろいろと考えながらその山を見ていると、少しその一部が動いたように感じた。
いや、違う! 動いている!
「朋! 危ない!」
「え?」
朋の後ろで、小型のロボットが稼働し、今まさに襲おうとしていた。
俺の声ですぐに気づいた晃も自身の能力を発動、晃が一瞬の速さで朋を抱え、俺はそれを見届けつつ、すぐさま小型ロボットを斬りつける。
「ハァーッ!」
爆発音と共に、小型ロボットは破壊された。
「あ、ありがとう晃、宇佐見くん」
「まったく、気が緩みすぎだ、朋」
「まぁ怪我がなくてよかったよ」
(このロボット、人を襲おうとしていた? つまりは兵器ロボットということか。となると、他の残骸も……)
と、ここでスマホに連絡がかかってきた。
『宇佐見、今は一人か?』
「鈴原先輩? いえ、一人ではありませんが?」
『ならよかった! いいか、落ち着いて聞いてくれ! 今、学校と繁華街両方が、所有者不明のロボット兵器に襲撃にあっている!』
「なんですって!?」
『俺は今、繁華街で犬山さんと対応している! お前たち3人は学校を頼む!』
「はい! わかりました!」
ここで連絡が切れた。
「銀!」
「宇佐見くん!」
「あぁ! 二人とも悪い! 先に学校へ戻ってる!」
俺は二人に感謝し、能力を使い、一人で学校へと戻った。
数分前、学校。
「ふぅ、これで今日の仕事も終了ね」
如月会長は生徒会棟で一人、書類整理の仕事を行っていた。
席を立ち、生徒会棟を出て、鍵を閉めたその時だった。
ドドーン! ドドーン! と大きな爆発音が辺りに響く。
続いて、ガシャンガシャンと、大きな金属音が足音のように響いてきた。
そして“それは”現れた。
高さ10mほどの人型ロボット兵器だ。
それが3体も生徒会棟の周りへと現れたのだった。
「あらあら~、今日はもう閉めてしまったので、また明日にしてもらえませんか?」
如月会長の問いかけを無視し、そう命令されてるかのように、如月会長に襲い掛かる人型ロボット。
それを難なく躱し、如月会長はやれやれといった表情で、ロボットの足元へと歩き、そっとその足に触れた。
その瞬間、目の前のロボットは跡形もなく消えた。文字通り、その場から消え去っていた。
続けて残りの2体も同様に、如月会長は消し去った。
これが如月会長の能力『エタンドール』、あらゆるものを消滅させる能力だった。
如月会長は走りながらスマホを取り出し、鈴原へと連絡を入れた。
「わわっ! い、今の大きな音はなに? ば、爆発!?」
如月会長を残し、先に生徒会棟を出た楽々浦麗は、学生寮への道を歩いている時、近くで大きな爆発音が聞こえた。
なにが起きたのかわからず、辺りをキョロキョロしていると、近くの人工林がなぎ倒され、高さ10mほどの人型ロボットが1体、目の前へと現れた。
(ろ、ロボット!? なんで? あ、あれ? ど、どうしよう、足が動かない。だ、だれか!)
目の前のロボットが大きな剣を振り上げる。もうだめだ、そう思ったその時だった。
「やらせるか! ハッ!」
一閃!目の前のロボットは、一人の少年が斬り、見るも無残な姿へと変わった。
「ふー、間に合ったな。助けに来ましたよ、楽々浦先輩。怪我、ありませんか?」
「え!? 宇佐見くん!?」