魔法使い
主人公だけじゃなくて、世界の人達からの視点も書きたいとな思って、衝動的に書きました。
人によっては蛇足かも。
ある日、1人の男の動画が、世界中に拡散された。
その動画は、街を歩きながら配信をしていた配信者の動画を、切り抜きされた物だ。
そこに映っていた、話題になっている男は、コーヒーを片手に、信号を待っていた。
甲高い声が響き、皆が何事か!と画面を注視した。
そこには、子供が飛び出し、トラックに轢かれそうになっていた!
配信を見ていた者たちは、コメントを打ち込む事を忘れ、その一瞬、画面に釘付けとなった。
誰しもが、その子供が死ぬことを予期しただろう。
誰でも分かることだ。
大きなトラックに轢かれれば、大人でも死んでしまう。
子供とトラックが接触し、子供はいとも簡単に死んでしまうだろう。
危ない!と思った時には、もう遅いだろう。
この配信は事故配信として切り抜かれるだろう。
この配信を見た者は、嫌な気持ちになるだろう。
誰も無邪気な子供の死を見たくは無かった。
皆がそう思った。
しかし、その瞬間は来なかった。
声が聞こえた。
風が舞い、トラックの進行方向がズレた。
大きな音と共に、トラックは歩道の植木突っ込み、止まった。
それは、一瞬の出来事だった。
誰しもが目を疑った。
助かるはずのない子供が、目の前で、奇跡のような出来事が起こり、助かったのだ。
そしてそれを助けたのは、先程映っていた、コーヒーを片手に持っていた男。
彼が何かを言って、右手を突き出していたのだ。
彼は安堵したような顔をしていたが、すぐにハッとした様な表情をした。
その表情には、隠すつもりだったものをつい使ってしまった。という気持ちが垣間見えた。
あまりに不可解な行動に、その表情。配信を見ていた者は直感で彼がこの謎の出来事の犯人だとすぐに分かった。
そして、周りでその出来事を実際に見ていた人達が、パシャパシャと彼を撮り始めた。
すると彼はもう一度何かを言い、突風が起きた。
周りにいた者達が目を瞑り、スマホがズレ、全員の視線が外れた。
目を開けた頃には、その男はもう居なくなっていた。
その配信は、コメントの嵐となった。
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あまりに不可思議な現象に、その動画は瞬く間に拡散され、世界中で話題となった。
彼を本物の魔法使いだと言う人。
自分も魔法を使いと言い始める人。
動画を疑う人。
嘘だと決めつける人。
新兵器だと警戒する人。
ただの奇跡だったと言う人。
そして、この真実を確かめ、利用しようと動き始める人。
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数ヶ月後、あの動画が触れられる事は少なっていた。
長い間彼の目撃情報がなく、あれはCGや編集だったと皆が思い始めていた。
その時、1つの動画が投稿された。
その動画は、日本政府が直々に出したものだった。
その動画はある施設の監視カメラが捉えた物もようで、あの男が映っていた。
政府関係者と思われる人達に対し、高圧的に話し、日本国民を人質にして、脅している様子だった。
政府関係者に対して、突風を放ち吹き飛ばし、大量の水で溺れさせ、火の魔法で燃やし尽くそうとする光景。
それを見た国民達は怒り狂った。
何故こんな事をしたのか!
こいつはテロリストだ!
危険な人物だからどうにかして欲しい!
こんな奴を持て囃してたのか!
子供を助けたのは民衆からの支持を得るための偽造だったのか!
等など、様々なコメントが飛び交った。
そして各国がこの動画を取り上げ、報じられた。
SNSは荒れに荒れた。
世界中の殆どの人間が、この動画を見て、彼を危険人物、又は犯罪者だと認識、そして嫌悪された。
「良い人だと思ってたのに・・・酷い。」
「こんな奴が子供を助けた?嘘つくな。」
「だから言っただろ。あれは嘘だって。」
「でも、本当は良い人かも・・・」
「お前もしかして本人か?そんなわけねぇだろ?あれは悪魔だよ。」
「俺達を人質にした奴に見方するならお前も敵だよ。」
「政府はとっととあいつをどうにかしてくれ!」
「我が国にも来たよ。他の色んな国にも行ってるようだ。」
「まじか・・・世界中を狙ってんのか?」
「いや日本にビビってんだろ。まぬけ。」
こうして彼は、【国際最重要危険人物】に認定された。
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次に彼が現れたのは、数週間後だった。
未だあの男の話題で盛り上がっている中、彼の目撃情報が入った。
誰かが配信を開始したのだ。
それは、日本の街の中だった。
大勢の人間が周りを囲んでいた。
その内側に警察も居て、警察以外にも、ピストルを持った男達が居る。
そして彼らがピストルを向けている先に、話題の男がいた。
そのさらに奥にはボロボロなっている1人の男の子。
この状況を見た、その場に居なかった者達には、この状況がおかしく見えた。
犯罪者である男が、1人の男の子の為に、悪い奴と戦っている。
しかし、何故?
これもまた誰かの創作か?
それとも、あの男の子を人質にとっているのか?
そんな事を考えていた矢先、大きな音が響くと同時に、その場にいた人達が悲鳴をあげた。
警察ではない、あの男にピストルを向けていた奴らが、撃ったのだ。
何度も何度も。
警察が慌てて何か叫んでいるのを見る限り、彼らにとっても想定外だったんだろう。
誰もが思った。
幾ら魔法が使えた所で、銃を撃たれれば死ぬと。
しかし、いつまで経っても彼は倒れない。
何故か。
その答えは、すぐに出た。
彼の体を貫いているはずの弾が、宙に浮いていたのだ。
配信を見ていた者も、銃を撃った本人達も、警察も、学生も、社会人も、その光景を見ていた誰しもが、驚愕した。
直後、彼は言った。
「ここに宣言しよう!俺は新たな国を創る!今苦しんでいる人間、今の状況から抜け出したい人間、魔法に興味のある人間!お前らの為に魔法を、力を授けてやる!俺の所にこい!そして各国の上層部の人間よ、お前達に忠告しよう!俺に構うなら、潰される覚悟をしろよ?もう、手加減はしない。」
誰しもが耳を疑った。
それもそのはずだ。
なんせ彼は、世界に喧嘩を売ったのだ。
その事実を、すぐには受け止めきれなかった。
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「おい!あの動画みたか!」
「見たよ!マジで何か凄いことになってる!」
「何かあったの?」
「例の男いるだろ?国際最重要危険人物の奴、あいつが世界に喧嘩を売ったよ。」
「え?マジで!?」
「今見てきたけど、あの男は後ろにいた少年を守ってるだけじゃないの?」
「んなわけねえだろ!どうせ人質にしてるだけ。警察が銃撃った側に居るのがその証拠。」
「あれ見た時はマジでビビった。普通に人殺しの場面を見てしまったかと思った。」
「あの、実はあの場所に居たんだけど、実はあの子。この動画に映ってる高校生の集団に虐められてたんだよね。それをあの男が守ったんだよ。」
「え?それ本当か?」
「嘘つけ。おもんない。」
「いや俺も居たけどマジだぞ。」
「って事は、あの男は本当に子供を助けただけ?」
この動画が拡散されてから、少しずつだが、彼を味方する声が増えると同時に、日本政府が出した動画を疑う声が増加した。
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「おい!あの男がついに動き出したぞ!!」
「何何?次は何をするの?」
「太平洋のど真ん中に、島創ったんだよ!!!!」
「「「「は??????」」」」
世界中が混乱した。
太平洋のど真ん中に、新たな島が突如現れたからだ。
また何を仕出かすのかと思うと同時に、期待した。日本では既に、彼の事を危険人物だと捉える人は少なかった。
他国では未だに扱いが変わらないが。
島を創った動画の最後に、彼は言った。
「俺は学園を創る事にしたよ。この世界の理不尽に巻き込まれ、何も出来ずに死んでしまう人達の力になれるように、魔法を教える事にした。彼らが、もう二度と苦しまない様に!!」
それを聞いた誰かが言った。
「世界の理不尽に抗った、現代最初の勇気ある魔法使い。」と。




