第22話
「今日は、こんなに明るいのですね。」
「普段はこうなんですよ。昨日は、ちょっと事故があったようで。」
「事故ですか。」
「ええ、何か南の方からの工作員が発電所を襲撃して、発電が止まってしまったということらしいです。」
「そうなんですか。でも、私の方には、そんなニュースは入ってきていませんでしたよ。とにかく、今日は、これで残ってしまった仕事がはかどります。」
「そうですか。しかし、ネットワークを利用するときは、十分に注意してください。中国側が、我々の動きを監視していますから。」
「中国がですか?」
「はい、今、将軍様を中心に、我々独自の技術のネットワークを構築中ではありますが、まだネットワーク技術は、中国のものを利用しています。なので、サイトの閲覧制限や、閲覧できたとしても、ログの採取は行われてしまっています。」
「それでは、北朝鮮の情報が漏れてしまうのでは。」
「その危険があります。ただ、現時点では既存の技術に依存するしかありません。だから、あなた方を研究目的ということで呼んだのです。」
「我々に生きた技術情報を提供してほしいということですか。」
「その通りです。今日は、あなた方の研究のために、我々の持っている技術を紹介しました。明日は、技術情報の交換として、あなた方が持っているネットワークの技術情報を教えてください。」
「いやだ、といったら?」
「ここは、北朝鮮国内です。将軍様の主権が直接及ぶところです。これがどういう意味かは分かりますよね。」
「・・・そうでしょうね。わかりました。元々、実験を行う交換条件として聞いてはいましたし。」
「話が分かる方でよかったです。」
「では、いつにしましょうか。」
「今はどうですか。」
「今ですか?私は構いませんが。」
「これだけ安定して電力が供給されているのは珍しいことなので、今のうちにと思ったのです。」
「では、そうしましょう。ただ、ここでは単にホテルの機材しかないので、できれば専門的な機器があったほうがようです。」
「それでは、北朝鮮最大のネットワーク基地へご案内します。」
「移動時間は、どれぐらいですか。」
「平壌市内にありますし、そもそも、このホテルの隣が、そうなのです。」
「隣ですか。それは気づきませんでした。」
「あまりデータセンターの場所は公開しないのが一般的ですからね。では、早速移動しましょう。準備はよろしいですか。」
「ええ、パソコンがあれば、特に後は何も。」
「では、私についてきてください。」




