幻想郷で大事件です【前編】2
「そうだね、今の話を聞いて君の縄を解くことは出来なさそうだ」
霖之助も俺と同じことを思ったのか、魔理沙の縄を解こうとはしなかった。
「なっ!?ふざけるな!おい!」
「岳君、魔理沙を一旦店の奥に運ぼう。手伝ってくれるかい?」
「わかりました」
「てめーら!後で覚えておきやが・・・」
霖之助は魔理沙を気絶させると、2人で魔理沙を店の奥へと運んだ。
「さて、とりあえずどうするか」
「そうですね・・・」
魔理沙を店の奥へと運んだ俺たちはこれからどうするか話し合うことにした。
「たぶん、ここもいつか彼女たちに見つかってしまうだろうね。見つかる前に移動した方が良いかもしれない」
「魔理沙はどうします?女たちに見つかったら間違いなく解放されそうですけど」
「とりあえず魔理沙は後で見つからないように工夫しよう。僕たちはこの後別の場所に向かおうと思う」
俺と霖之助は山小屋の中にいた。
場所は妖怪の山とは違った山の麓部分にあった。
おそらく里の人間たちが使っているであろう山小屋だった。
香霖堂から離れていたが、フードを被った俺に掴まって移動したので女たちに見つかることなく山小屋に着いたのである。
「さて、とりあえずどうするか・・・」
霖之助はこの後のことについて考えているようだ。
「あっ、そういえば・・・」
俺は人間の里にいた女たちが話していたことを話す。
「なるほど、1人逃げた人がいるんだね。ただ、彼女たちの言う通り、もう妖怪の餌食になっているかもしれない」
「・・・俺、ちょっと探してきます」
「わかった。僕も行きたいけど足手まといになりそうだからここで待っているよ。ただし、1時間だ。その時間を過ぎたら見つからなくても戻って来てくれ」
「わかりました」
俺は頷くと、フードを被り、山小屋を出た。
俺は飛びながら山の近くや人間の里周辺を探す。
しかし、見つかることなく、時間だけが過ぎていく。
「霖之助さんの言う通り、もう餌食になってしまったのか・・・?」
ただ、どこかにいるのなら助けなければならない。
俺は上空から確認できない所は降りて確認しながら時間の限り探した。
「くそ・・・もう時間になったか・・・?」
スマホがないので確信はないが、おそらく1時間近く経過したと感じる。
「仕方がない、一旦戻ろう」
俺は山小屋に戻ろうと来た道を戻りながら男の姿を探した。
「助けてくれっ!」
飛んでいる時、突然声が聞こえてきたかと思うと、1人の男が木々の間から出てきた。
後ろには8メートル程の大蛇が追っていた。
俺は上空から急降下すると、男が食べられる前に男を掴み、空へと飛んだ。
「うわっ!なんだ!?」
掴まれた男は突然のことに声を出す。
「安心しろ、味方だ。とりあえず逃げるぞ!」
俺は男に伝えると、上空を飛んだ。
蛇は獲物の体温を感知できる。
光学迷彩で身体を隠していても、蛇には効果がない。
しかし、空を飛んでいればいずれ撒ける筈だ。
俺の思った通り、蛇は途中で居なくなり、俺は男を連れて山小屋へと戻った。
「おかえり!心配したよ」
山小屋に戻ると、霖之助が出迎えてくれた。
「君は、人間の里から逃げた人だね?」
「・・・はい」
連れてきた男が頷いた。
「君は僕たちよりも今の異変について知っているだろう。起こったことを話してくれないか?」
男は話し始めた。
男は里の農業をしており、今日もその作業に勤しんでいたのだそうだ。
すると、いきなり里の女たちが武器を持って男たちを拘束しだし、男も拘束されそうになったらしいが、なんとか逃げ延びたらしい。
「なるほど、それにしても男たちが女たちになすすべもなかったとはね・・・やはり女は強いと言ったところだろうか」
「仕方ないですよ!里には慧音先生が居るのですから。私たちが束になっても勝てませんからね。私も逃げるしかありませんでした」
「無事で良かったです」
「あぁ、君のおかげで助かったよ。確か君は里で何でも屋として来ていた人だね?」
何でも屋か・・・
あの時はできる限りやってきたからそう思われても仕方ないか。
「いきなり変わったように女たちが襲ってきたか・・・よく君は無事だったね」
「はい、先程も言いましたが私も女の1人、たしか八百屋の娘に一度捕まって縄で縛り付けられそうになったのですが、何故かその娘の動きが止まったのです。私はその隙に逃げたのですが、途中で悲鳴が聞こえて振り返ると、八百屋の娘が他の女たちに捕らえられていて・・・」
「ん?ちょっと待ってくれ。女たちが八百屋の娘を捕らえたのか?仲間じゃないのか?」
「わからないです。でも、他の女に捕まった八百屋の娘は何が起こっているかわからないようでした」
「もしかして、女たちは何かに操られている?」
「もし、そうだとしたら、操っているのは何者か。それに、どうやって八百屋の娘が元に戻ったのか・・・。わからないことだらけだね・・・」
「おそらくですが、私以外の男や八百屋の娘は牢屋にいると思います。あそこはそれほど広くはありませんが、脱出は難しいでしょうから」
「ふむ、助けたいのはわかるのだが、どうやって助けようか・・・。岳君のようなマントがあれば良いんだけどね」
「霖之助さん、このままでは進展なしです。もしかしたらですけど、その八百屋の娘を救うことができたら何故元に戻ったのかわかるかもしれません」
「あぁ、確かに。だが、どうする?さっきも言ったけど岳君のようなマントは僕たちにはない。岳君に掴まることで牢屋の前までに行けたとして、もし見つかってしまったら、僕たち全員が捕まってしまう」
「そのことなのですが、俺に考えがあります」
俺は霖之助と男に話しだした。
「さて、人間の里に侵入は出来たね?」
「ええ、そうですね」
「牢屋の鍵の場所はわかると思います。おそらく牢屋の所に一緒にあるはずです」
夕暮れの時間、俺たちは人間の里にいた。
光学迷彩のマントのおかげで侵入できた俺たちは途中ですれ違う女に当たらないようにしながら里の中を進む。
男の案内で、牢屋の入り口まで案内された俺たちは入り口を見る。
見張りは5人と思ったよりは少なかったが、その中に慧音の姿があった。
「ここを突破するのは難しいね」
「ですね」
俺たちは慧音に気づかれないように、その場を後にした。
「やはり、牢屋の見張りを別の場所に引きつける必要がありますね」
「そうだね、しかし、本当にやるのかい?岳君」
「ええ、この中だったら一番動けるのが俺ですからね。霖之助さんたちは牢屋の中にいる男たちや八百屋の娘を助けてあげてください」
「わかった。可能な限り早く済ませるよ」
「お願いします」
俺は頷くと、霖之助から手を離す。
それにより、俺の姿が他の者から見えるようになった。
俺には普段他の者から見えないようにするためのマントがあるが、今はそれを霖之助が着ているのだ。
よって、その霖之助から離れた俺は見えるようになったわけなのである。
「それじゃあお願いします」
俺は姿が見えないがそこにいるであろう霖之助たちに言うと、走りだした。
俺が霖之助たちに伝えたことはこうだ。
牢屋にいる男や八百屋の娘を助けるために、女たちの目を別の場所に向ける必要がある。
いわば囮役だ。
囮役が引きつけている間に捕まっている者を解放する。
その囮役を俺が引きうけたのだ。
ただ、囮役がすぐに捕らえられてしまうと意味がない。
霖之助たちが男たちを解放するまでは囮役である俺は何がなんでも女たちに捕まるわけにはいかない。
とりあえず、俺は建物の陰から陰に移動して可能な限り見つからないようにしながら移動する。
建物の陰から大通りを覗くと、武器を持った女が3人歩いてきた。
俺は女たちが過ぎるのを待つと、後ろを駆け抜ける。
しかし、駆け抜けた道で別の女に見つかってしまった。
叫ばれる前に俺は女の鳩尾に拳を入れて気絶させた。
「男がいたぞ!」
しかし、別の女が叫び、足音がいたるところから聞こえてきた。
「チッ・・・!」
本当はもう少し見つからないようにしようと思っていたのだが仕方がない。
俺は牢屋の方向とは逆の方へと走った。




