おやすみ世界、おはよう異世界
山田を家から追い出した後、すっかりと暗くなっていて睡眠の準備を進める主人公。しかし彼の話していた「望んだ世界へいける方法」が気になり実行する事にする。
しかし主人公は信じきっている訳ではなく、「自分だけがお金楽に稼げる世界」というとんでもない世界へ行くことを決意した。
世界に取り残されてしまった僕は、遅れを取り戻すかのように足早で寝る準備を進めた。
しかしふいに山田の言葉が引っかかった。
『異世界転生?的なのしてきたんだよ』
彼はこの短期間であそこまで太った。
元々食事を多く摂るタイプではないし、太るという事は今までもこれからも無かったはずだ。
だとしたら本当にあるのか...?異世界転生が。
彼の話していた内容を必死に思い出す。
トイレで1時間座り続け、脚がしびれている状態で床で寝る。
頭には自分の服をたたんだ物を枕として置く。
あとは自分が行きたいと思う世界を望みながら寝るだけ。
とてつもなく簡単だ。
僕にはやはり信じられなかった。
しかし彼のあの説明のつかない巨体が、僕にとって信じる理由となり、実行してしまった。
そして僕はトイレで脚の痺れと激闘を繰り広げながら1時間座り続けた後、倒れるジェンガの如く床に倒れ込んだ。
あとは行きたい世界を想像しながら寝るだけ。
ハーレム、英雄物、パラレルワールド...うーん、どれも捨て難い。
しかし僕はここまで彼の話を信じ切っている自分へせめてもの反抗をする事にした。
流石に無理であろう「僕だけがお金を楽に稼げる世界」へ行こうと決めたのである。
もし成功するならば、その世界はきっと僕1人で国を傾ける事もできる。
ぶっ壊れだ。
何より現実世界と繋がっているのであれば、お金をたっぷり稼いで家賃を払おう、なんなら豪邸に引っ越してしまおうかなどと考えを巡らせていた。
そんなありもしない妄想をしている間に、僕は自宅の床で睡眠の海へと沈んでいくのであった。
...
ピーチクパーチク...パーチクピーチク
鳥の鳴き声で、僕は目を覚ました。
昨日久しぶりに人と話して疲れたのかまだ頭が重い。
必死閉じようとするまぶたを指というバールを使って無理矢理こじ開け、ゆっくりと部屋を見回す。
時刻は7時27分。
部屋の中は何か変わった様子もなく、もちろん異世界に来た感覚もない。
異世界転生は彼の嘘だったのだ、と意識がはっきりしない頭でも即座に理解できた。
『ピンポーン』
呼び鈴が鳴った。
こんな朝早くから一体誰だろうか?
僕は寝起きでまだ動かしづらい手を使って、ゆっくりとドアを開けた。
そしてその手を止めた。
まだ数センチしか開けていないドアから見えたのは、いかにも美味しい食事を取っていますと言わんばかりの体型をした見知らぬ女であった。
「お、おはy...」
「5ヶ月分の家賃、良い加減払ってくださる?」
僕はさっとドアを閉じ、チェーンをかけた。
外からは女の怒り狂った声が聞こえる。
目は十分覚めた。
とりあえず今の状況を整理してみる。
たった今、僕は朝の挨拶を遮るかのように家賃を求められた。
そこから考えるに、彼女はおそらくここの大家か何かだろう。
しかし、僕の知っている大家とはなんかこう色々違うし僕は彼女を見た事すらない。
そして何より彼女の後ろに広がる景色が、僕の知っている世界では無かった。
ここまで整理して僕は興奮していた。
彼の話は嘘じゃなかった、彼は本当に異世界へ行っていたのだ。
そして僕も異世界に来たのだ!
僕は異世界へ来た喜びと、こちらでも家賃を滞納している事実で複雑な心境になった。
この時は興奮で忘れていた、「僕だけがお金を楽に稼げる世界」である事を。
ふくよかな体型多いですね。




