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【完結】才色兼備な伯爵令嬢は仕事に夢中です  作者: あい・すくりーむ
婚約者の伯爵令嬢は煩わされます
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お嬢様の悩み【ライラ視点】

昨日はあの後、心配だからと譲らないヴィレット公爵に押し切られる形で、私達は屋敷まで送っていただいた。送るとはいっても、公爵は馬に乗り、ジュリアお嬢様と私の乗る馬車に並走する形だったのだが。


王宮に泊まり込みだった旦那様へは昨夜のうちに連絡したが、誰一人ケガもなく賊も全員捕えたということで、詳しい話は翌日――つまり今日――ということになったのだ。


今現在、私は朝食を終えたジュリアお嬢様の身支度をお手伝いしている。お嬢様、なんだかお顔の色が優れないようだが、やはり昨日の一件でお疲れなのだろうか。


「どうしましょう、ライラ。私きっとレイモンド様に呆れられてしまったわ。」


「まあお嬢様、なぜそのようなことを?」


呆れる?こんなに美しくて可愛らしくて優しくて聡明でお強いジュリアお嬢様の、どこに呆れるというのだろう?


「考えてもみて?私ったらよりによってレイモンド様が見ている前であんなはしたない真似を…それも足技まで使ってしまったのよ。」


はしたな…かっただろうか?私はお嬢様の昨日の様子を見ていないので何とも言えないが、普段の鍛錬を見ている限り、お嬢様の戦い方は基本的に無駄がなく、ダンスのように優雅で美しいと思うのだが。


「これまでレイモンド様はなぜか私のことを過大評価していらっしゃったけれど、今回はどうにもならないわ。むしろこれまでの高評価との落差で、はしたなくて粗暴な令嬢もどきだと幻滅されたに違いないわ。」


ジュリア様ったら、どれだけ自己評価が低いのだろう。もはや卑屈といってもいいレベルだ。ジュリア様ほど完璧なご令嬢なら、もっと自分に自信を持っていいと思うのだが。


「そのようなことはございませんよ。お嬢様は立派な淑女ではありませんか。」


「気休めはよして。だって、今日のお迎えを一度断ったとき、どことなくご機嫌が悪かったように感じたもの。粗暴な姿を見せてしまった上に、せっかくの気遣いを断ってしまって、可愛げのない女だと思われたんだわ。」


そういえば昨日送ってもらったあと、公爵は別れ際に「明日の朝は迎えに来ます」と仰っていた。それに対してお嬢様は「ベンもいるので問題ない」と伝えていたが、「賊に襲われたばかりの婚約者を気遣うことも許されないのですか」という切り返しにたじろぎ、結局は押し切られてしまっていた。


「それは恐らく“婚約者が自分よりも他の男(ベン)を頼っている”と感じたからでしょう。」


たとえベンが使用人の身分で、旦那様よりも年齢が上だとしても、公爵にとってはベンも等しく男性なのだ。確かにベンは物腰が柔らかで顔も整っていて、ロベール伯爵家に長年仕えて身に着けた優雅な所作は使用人というよりも貴族っぽい…おっと、脱線してしまった。


…とにかく、いわゆる嫉妬というやつだろう。


「そうなの?私としては、あれ以上レイモンド様のお手を煩わせたくなかっただけなのだけれど。」


「男性というものは、大抵は女性に頼ってほしいものなのですよ。さ、座ってくださいな。」


今度は椅子に座ったお嬢様の髪を結いながら、話の続きを聞く。


「…ということは、やっぱり私は可愛げのない女ということでしょう?どうしましょう。やっぱり婚約はなかったことになってしまうのかしら。」


「どうしてそうなるのですか。この程度のことで薄れるような愛情なら、そもそも求婚などなさらないでしょう?」


「愛情も何も…そもそもこの婚約は、完全な政略結婚なのよ?」


「まあ、そうだったのですか?政略結婚ということは、旦那様が?」


公爵様はあまり感情を表に出さないものの、お嬢様を気遣う様子は明らかに愛情によるものだと思ったのだけれど…


「ええと、そういうわけではないの。レイモンド様と私の利害が一致した…契約結婚といった方がいいかしら。だからこそ、愛はなくとも互いに信頼し尊敬し合える夫婦を目指したかったのだけれど…呆れられて婚約が立ち消えになってしまうのではないかと、不安になってしまって。」


「そういうことでしたら、それこそ杞憂ですよ。利害による婚約でしたら、感情で婚約が揺らぐようなことはないはずです。」


「そう…そう、よね。私ったら、何を勘違いしていたのかしら。ありがとう、ライラ。」


「お礼を言われるようなことは何も……さあ、できましたよ!」



あえて正論をぶつけてみると、お嬢様は少し沈んだ表情をした。これは、恋の予感がする。


お嬢様は、契約結婚の妻として信頼を得たい気持ちと、恋する乙女として愛を得たい気持ちとがない交ぜになっているのではないだろうか。むしろ後者の自覚はないくらいだろう。


ここで私が「嫌われたくないと感じるその気持ちは、恋ですよ」と伝えるのは簡単だが、それはお嬢様がご自分で気づかないと意味がないだろう。もうしばらく、この鈍感で可愛らしいお嬢様を見守ろう。


丁度いいタイミングで、ドアをノックする音が響いた。


「お嬢様、ヴィレット公爵がご到着されました。」


「ありがとう。すぐに行きます。」

読んで下さってありがとうございます。


誤字脱字、読みづらい等ありましたらご指摘くださいm(__)m

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よろしくお願いします!

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