意図して
遂に婚約披露パーティーが始まった。
レイモンド様にエスコートされながら、二人で招待客の皆様に挨拶をしていく。
人が途切れたところで、ふと隣に立つレイモンド様に目をやると、相変わらず端正で無表情な横顔が目に入る。先ほど改めてドレスのお礼を伝えたときは、何やら難しい顔をしていたが…今はいつも通り(?)の無表情である。
視線に気づいたのか、不意にレイモンド様がこちらを向いた。アイスブルーの瞳と視線がパチリと合ってしまい、逸らすこともできずに見つめ返す。前にもこんなことがあったような…
「私の顔に何かついていますか?」
「い、いえ、そうではなくて…その…改めて見てみると、このドレスの色がレイモンド様の瞳の色と似ているな、と思いまして。」
慌てて口走ってしまったが、何を言っているのだ私は。ただの偶然だろうに、こんなことを言われてもレイモンド様も困ってしまうだろう。
「ああ、気づいていたのですか。婚約披露のドレスならばと、クチュリエのマダムの勧めで色を合わせたのです。お気に召しませんでしたか?」
なんと、この色が意図したものだったとは。婚約披露パーティー用の、仲睦まじい婚約者アピール…的なものだろうか。なるほど、レイモンド様に想いを寄せている多くのご令嬢方を諦めさせるには、こういうことも必要なのだろう。
「とんでもない!ますますこのドレスが気に入りましたわ。」
この返事でいいのだろうか。仲睦まじい恋人や婚約者の振る舞いというものがよくわからない。こんなことなら、恋愛のスペシャリストにその辺りのこともよく聞いておくんだった。
「そうですか。それなら安心しました。」
レイモンド様はそう言って別の方向を向いてしまった。やはり何か間違えてしまったのだろうか。仲睦まじい姿を演じるというのもなかなか難しいものだ。
「ああ、ダントン侯爵夫妻、ようこそおいでくださいました。」
レイモンド様の声に反応して目線をそちらへ向けると、お揃いでいらっしゃったダントン侯爵夫妻。と、その後ろには図書館司書ご一同様――オリヴィエ様、ジェラルド様、テオドール様、フレデリック様――がいらっしゃった。
ちょうどオリヴィエ様のことを考えていたので面食らってしまったのだが、なんとか態度には出さないように努めた。
「お招きに預かり光栄です、ヴィレット公爵、ロベール伯爵令嬢。この度はご婚約おめでとうございます。」
「「ありがとうございます。」」
それからダントン侯爵夫妻と少し話したのち、テオドール様とフレデリック様をレイモンド様に紹介し、皆様からも口々にお祝いの言葉をいただいた。
その少し後、レイモンド様はオーギュスト様に呼ばれて少し席を外すことになったので、戻って来られるまでここで話しながら待つことにした。
「やっぱりお二人はお似合いのカップルですわね。それにジュリア様、そのドレスとっても素敵ですわ!(ヴィレット公爵の瞳の色…ということは、公爵からの贈り物かしら?)」
「ありがとうございます、オリヴィエ様。実は、このドレスはレイモンド様からの贈り物ですの。」
「まぁ素敵!とってもお似合いですわ。」
その後もしばらくオリヴィエ様達と談笑していると、とある来客が場の空気を一変させた。
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